01.15
黒川文雄のEyes Wide Open VOL.29 「2018年、VTuberライブの明暗を分けたものは何だったのか…」
VRに明けて暮れた2018年、
2018年はVRで始まり、そして終わり、新しい2019年もVRで始まるものと思っていました。
私の2018年の個人活動と社業におけるテーマはVRとeスポーツでした。特にVRに関しては数社とアドバイザー契約を結んで、コンテンツ面のアドバイスはもちろん、営業的なサポートもさせていただきました。2019年は単なるVRというカテゴリーのみではなく、ARやMRまで、その展開領域は拡がって行くのではないかと感じています。
それらの事前学習という意味で、自身の興味、関心の向くままに多くのVR系コンテンツの展示と体験、イベントなどへ参加を積極的に進めてきたのが2018年でした。おそらく2019年も同様に現場で何が起こっているのかというフィールドワークを忘れずにいたいと思います。
年初1回目の拡現人の「アイズワイドオープン」コラムで触れておきたいのは師走のVR界で際立ったトピックが2つありました。そのトピックについて触れてみたいと思います。
VTuber(バーチャルYouTuber)ライブとしてのメルクマール(指標)
クリスマスを控えた12月17日、そのライブはタワーレコード渋谷店の地下1階CUTUP STUDIO
で開催されました。そのライブはとはにリアルタイムARライブイベント「TUBEOUT!(チューバウト!)
vol.1」で、バルス株式会社(以下:バルス)が展開する「銀河アリス」と、カバー株式会社が展開する
「ときのそら」という2人VTuberの共演ライブです。
「銀河アリス」も「ときのそら」もそれぞれ個別に活躍するVTuberで、所属事務所(という考え方で
良いと思うのですが…)も異なります。しかし、今回、二人のVTuberの共演が実現しました。
ちなみに「TUBEOUT!」はバルスが実施展開するXRライブイベントのタイトルで今回が初開催でし
た。
過去にも同様のXRライブを 「MonsterZ MATE(モンスターズメイト)」という男性VTuberユニットで展開していますが、今回のような対バン(事務所などが違うタレントとのコラボライブ)は初めてのことです。
開演までの時間にはモニターには、富士葵、東雲めぐ、かしこまりなど、大勢の著名なVTuberからの応援メッセージが上映されており、その盛り上がりの一端を感じました。また、ライブが始まると会場限定でQRコードを読み込み、スマートフォンを通じてコミュニケーションをとりライブに参加するなど、アーティストと来場者が一体となって楽しめる、新しいXRライブエンターテインメントになっていたことがとても印象的です。
QRコードを使用したコミュニケーション手法は、生身のアーチスト・ライブにも応用できる手法であり、今回のVTuberライブ「TUBEOUT!(チューバウト!)」は学ぶべき点が多かったと思います。おそらく今後のVTuberライブの指標(メルクマール)になるものと思います。
ちなみに個人的には「銀河ありす」の風変わりなボイスとネコのしっぽのようにふわりふわりと動くツインテールには魅力を感じています。今回の「TUBEOUT!(チューバウト!)」はVOL.1とのことで、次回以降の成長が楽しみなVTuberです。
ときのそらチャンネル https://goo.gl/Mrf5iD
銀河アリスの地球侵略ch. https://www.youtube.com/c/GingaAlice
【TUBEOUT! Vol.1】~ときのそら・銀河アリス~
https://www.youtube.com/channel/UC7Mtf4Fs6sUFZ3dtNpbwjEQ
かたや残念なお知らせとなった「Count0」
もうひとつ年末に注目をしていたVTuberイベントとして、前評判の高かった年越しVR歌合戦イベント「Count0」のVR空間上での配信が中止になってしまいました。
開催予定は、2018年12月31日(月)20時となっており、NHKの紅白歌合戦の向こうを張るナウな企画としてはとても良かったのですが、残念ながらVR空間での300人限定ライブ視聴が中止になってしまいました。個人的にはこのニュースを見てすべての開催が中止になったと思い込んでいましたが、YouTubeでの視聴開催は実施されたようです。
(※ただしURLを確認したところ、現在は視聴できないようです
https://www.youtube.com/watch?v=qCTTP1ojuz4 )
開催直前での中止の告知だったため様々な憶測を巡らせてしまいましたが、結果的には機材などの要因による演出面での不備によるものとのことです。
その主な理由は(カヤック発表に依る)VTuberの表現および演出に関する不具合とのことです。
1・感情、目線の表現
2・音声と口のリップシンクのズレ
3・手首が表示されないタイミングがあった
不具合の詳細はこちらから
とのことで、VR機器などを使って視聴する、つまり1:1のライブ視聴において目立つアラのようなものがあったということがその要因と思われます。確かにこれらの不具合は放置できないものだったと思います。
技術的な検証に関してはこれ以上のことが公式に発表されていないため確認が取れませんが、共通の再現システムの上に、各社(各キャラクター)が独自に設計し開発したVTuberのキャラクターをフォーマット化してライブアクションを行うという点に少々無理があったのかもしれません。
その共通の再現システムに関してはカヤック社が開発下「VR SPARC」というシステムが用いられたとのことで、こちらもカヤック社の正式な発表に依れば
1・VTuberの皆様をリアルタイムでレンダリング(描画)し、インタラクティブに変化させるという技術
2・VTuber表情をデバイスに付属されているコントローラーから認識し変化させるほか、マイクから集音した母音の音声データをリアルタイムで口の形を変化させるリップシンク機能によって実現する技術
詳細はこちらから
https://sparc.tokyo/count0/announcement/
の精度が十分ではなかったために不具合が生じる可能性あり、VR空間上での開催を中止にしたとのことで、最終的に、事前にチケットを購入した顧客、VIVE本体とともに購入した顧客には返金対応が行われるという事態に発展しました。
今回の2つのVTuberをテーマしたイベントですが、今後のさらなる発展のための大きなメルクマールになることでしょう。2019年が皆様とVTuberにとってもよい一年になりますことを祈念して止みません。本年も引き続きご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。
■バルス株式会社
HP:http://balus.co
■Count0公式サイト
筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。