2019
07.31

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.42「合言葉は「マーザレー」、バンダイナムコだからこそ実現したゲームとアニメの出会う場所」

EyesWideOpen

マザリアエントランス概観向かって右 小山 順一朗氏・左 田宮幸春氏

バンダイナムコアミューズメントによって企画展開、運営がなされた先進的かつ挑戦的なプロジェク「VRZONE(SHINJUKU)」が3月末日のクローズから3ヵ月を経て、不死鳥の如く池袋に蘇った。

ただし今回の施設はVRZONEという設定のテーマパークとは異なり、秋葉原、中野とともに、東京のオタク三聖地とも称される池袋。通称「乙女ロード」にほど近い、池袋サンシャイン60・サンシャインシティ3階ワールドインポートマート・フロアに、アニメとゲームの世界観が混ざり合った新たなVRエンターテイメント・アクティビティ施設「MAZARIA(以下:マザリア)」として7月12日に開業した。

今回のコラムは、マザリアのアクティビティの紹介とその開業コンセプトについて個人的に掘り下げてみたい。

写真・向かって左は小山 順一朗氏・右は田宮幸春氏

エントランスのムービーはスルーすることなかれ・・・

 まずきちんと紹介しなければならないのは、マザリア入口(エントラス)から、その世界観が始まっているということだ。一見しただけではその価値はよくわからないかもしれないが、3Fフロアに到着すると大きな壁面を飾る、ドット絵で構成された約7分のムービーを堪能して欲しい。

コヤ所長こと小山 順一朗様が黒川塾72でもこのエントランス・ムービーに関しては語っていたが、「今どきの豪華絢爛なフルCGムービーを開発して持ってくることもできたが、それをやると派手なパチコン系店舗の野外看板を変わらなくなってしまい・・・夢がないのでやりたくなかった」。

そのために、彼ら開発者が選択したのがドット絵の自社IPオールスターズと外部IPをフルに活用した、シンプルでありながらも想像力を掻き立てるような映像演出だったのだ。

それが「はじまりの部屋」だ。ようこそマザリアへ・・・。

新規アクティビティは心地よい疲労感をもたらす

 「はじまりの部屋」での洗礼受け、脱「現実」を果たすと、そこはもうすでにバーチャルリアリティ(VR)

の世界だ。

ハードコール アクティビティ概観

「マザリア」は大きく分けて「SF ZONE」「ADVENTURE ZONE」「PANIC ZONE」「FESTIVAL ZONE」の4つのゾーンに分類される。

今回のマザリア開業で新しく導入されたものは、40回目のコラムで紹介した新作VRアクティビティ「ゾンビサバイバルゲーム ハード・コール」、そして新作「パックマンゴーランド」「アスレチックVR PACMAN CHALLENGE」「太鼓の達人 VRだドン!」の4コンテンツになっている。

「パックマンゴーランド」はパックマンをモチーフにした回転木馬だ。こちらは筆者の勝手な思い込みかも知れないが、旧ナムコの創業ルーツがデパートの屋上などに設置した木馬の遊具だったことにルーツとリスペクト、オマージュを込めて開発し導入されているのではないかと感じている。

同じパックマンをテーマにしたVRアクティビティが「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE」、これはパックマンのリアルキャラクターとしてゴーストから逃げつつ、クッキーを集めてゲームラウンドをクリアするというものだ。

言われてみれば自社キャラの「パックマン」を使うことは簡単な発想と思われそうだが、実際にVR化するには、それなりのナレッジや技術が必要だったことだろう。ちなみに、VRゲーム内の壁は「壁ヌケ」することもできるのだが、そうなるとチートになってしまうが、何度も体験したうえでやってみるのも面白いかもしれない。ただし、プレイヤー同士の衝突や事故に繋がる可能性もあるので、積極的にはお勧めはできない。あくまでも目の前にある壁はVR壁だということを前提に楽しんでほしい。

また、「アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE」はワイヤーの無い、フリロームタイプのヘッドセットのオキュラス・クエストを装着して体験するため軽快感が伴う、しかし、中腰でゴーストから非難しつつクッキーをゲットするというアクションは塑像以上に体力を消耗することなので他のアクティビティへの余力も残しておくことだ。

そして、もうひとつ、新しくVR化されたコンテンツが「太鼓の達人 VRだドン!」、こちらもシンプルなVRアクティビティなのだが、盆踊りの太鼓の櫓(やぐら)に登って太鼓をプレイするという感覚が新しくて面白い、おそらく家族みんなが楽しめるVRアクティビティになっている。

こちらのVRアクティビティは体力を使うものなので、スコアの高低はあれども、達成感のあるコンテンツでありアクティビティと言っていいだろう。

重要なことは無関心だった層にアプローチできる環境が整ったこと

筆者がVRアクティビティよりも先に気になったのは、フロアの中央部分にあるスペースだった。

壁面には巨大なパックマン(ゲーム)が投影されたスペースで、階下におりるビル内階段があったことだ。これに関してはコヤ所長(小山 順一朗氏)に確認したところ、階下にあるのはナムコ・ナンジャタウンで、ナンジャタウンとのフロア相互の送客ができる階段になっていた。

VR原体験 極限度胸試し 高所恐怖SHOW.を改めて体験する筆者

7月11日に開催された、黒川塾72でもテーマとして小山 順一朗氏が語っていたことだが、「マザリアに関しては、VR体験を前面には出さずに、『アニメとゲームに入る場所』と位置付けて、幅広い顧客層を迎えよう」というものだ。

そしてそれが実現できるのは多くのIPを保有してコントロールしてきたバンダイ的な営業力と、ナムコの技術開発力の両者が合致したものだと考えている。

さらに小山氏はVRのイメージの市場調査の結果としてVRは「ゲームセンターの進化版」と受け止められている顧客が多いこと、さらには「最新のゲームは自分と縁がない」という顧客が多く存在していると分析しており、関与層へのリーチの可能性も含めてVRというキーワードではなく、アニメとゲームが混ざる(融合する)場所だという。

なお、マザリアの料金設定は4500円で遊び放題となっている。「VR ZONE SHINJUKU」が4つのアクティビティ体験で4400円だったことを考えると非常にお得であり、アクティビティを何度も体験してみたいという顧客にとっては魅力的なものになるだろう。そして、それ以上にナンジャタウンに来訪する顧客を含めて広くアプローチができる環境こそが新しいVR時代の幕開けに相応しい施設だと思う。

しかし、店内の挨拶?、合言葉?が「マザレー」なのか「マーザーレー」なのか、そのイントネーションの違いは最後までよくわからなかった。・・・是非とも、新しく開業した「マザリア」を体験してみてほしい!

■施設概要

アニメとゲームに入る場所 MAZARIA

住所:東京都豊島区東池袋3丁目-1 サンシャインシティ ワールドインポートマートビル3階

公式サイト:https://bandainamco-am.co.jp/others/mazaria/

©BANDAI NAMCO Amusement Inc.

ドラクエVRのイメージ壁画の前でポーズ ポーズを取るとそれぞれの武器が手元に現れる

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。