黒川文雄のEyes Wide Open VOL.45「バーチャルリアリティの神髄は気持ちよく騙されることにあり  ~京都「C.A.T.s」で体験したアナログとデジタルの融合」

EyesWideOpen

前回コラム「グランツーリスモSPORTはリアルスポーツなのか?」は、おかげさまで皆様から好評をいただきました。バーチャルリアリティの神髄はいかに気持ちよく騙してもらうか、騙されるかがポイントだと思います。

その意味では、プレイステーションのソフト「グランツーリスモSPORT」は自身のテクニックを疑似的に研鑽すること、そしてそれを現実感溢れる3DCG空間でその研鑽した実力を発揮するという意味では至極のバーチャルリアリティ体験をもたらしてくれると思います。
2019年の京都でVR(バーチャルリアリティ)小旅行

今回のコラムで紹介するテーマも実は、気持ちよく騙されることに主眼を置いたものだ。2018年7月に「京都でVR小旅行」と称したコラムを上梓ししたが、その際に取り上げたVRカフェ「THE VR ROOM KYOTO」の運営会社である株式会社クラウドクリエイティブスタジオ(以下:CCS社)が新しいアクティビティを開発したと言うことで京都まで足を延ばしてみた。

CCS社は京都に本社を構える中規模ゲーム開発会社で、さきのVRカフェとスチームパンクをテーマにしたカフェの「Punk a vapore」(パンク ア ヴァポーレ)を経営している。そして今回オープンしたのがエアソフトガン総合施設「C.A.T.s」である。そう決してVRではないが、そこにはVR体験に匹敵するようななにものかに成りきれる体験が待っている。

エアソフトガン総合施設「C.A.T.s」とは?

いわゆる京都の観光名所などのある中心部からはすこし離れたところにあるのだが、周囲が工場や倉庫などが立ち並ぶ京都市南区上鳥羽の古びた倉庫一棟にそれはある。

そこは4層構造に改装がなされており、一階が受付とエアガン関係の商品の売り場、4階がシティ型のサバゲーなどに対応したインドアフィールドエリア(CQB)、ここは衝立型の壁を自由に配置することで様々な形の攻守陣地築いて対戦が可能なエリアになっている。ちなみに改装した際にエレベーターも配備したこともあり、たくさんの装備品を持ち込むヘビー・サバゲー・プレイヤーにも好評とのことだ。

さて、今回私が体験したのは2~3階にあるエアガンシューティングレンジ『Airsoft Shooter®』(エアソフトシューター)である。ここには2種類のガン・シューティング・レンジがある。一つ目は皆さんがアメリカ映画などで良く観たことのあるガン・シューティング・レンジがそれだ。ポール・ヴァーホベン監督の「ロボコップ」を観たことのあるかたならばわかるだろうが、数十メートル先にターゲット(標的)があり、そこを狙って腕を磨くと言うものだ。もちろん、エアガン自体がアナログなものだが、そこにデジタル的なものを融合させたことが特色だ。

数メートル先にあるターゲット、現在はまだ数種類だが、恐竜を倒すタイプとゾンビを倒すタイプの従来型のビデオゲーム風の映像、一方がストイックにダーツの的のようなターゲットをひたすら撃ち抜くものが準備されている。

アナ・デジなシューティングレンジ

 この『Airsoft Shooter®』の特徴がアナログな機材(デバイス)であるエアガンとデジタル画像の的とデータ共有を行うことをマッチングされたところにある。

ターゲットは普通のゲームセンターのゲームのように数種類のなかからセレクトするところまで同じだが、使用するツールはエアガン、そして弾がターゲットに当ったかどうか、どこに当たたったかを判定するのがデジタル処理になっている。そしてこのデジタル処理化されたものがスコアデータ、そのデータの共有化も同時に行えることになっている。現在はこのアクティビティ・サービスは京都のこの「C.A.T.s」のみに限られているが、全国に施設が増えればネットワーク化され、全国のユーザーと自身のリザルトが共有、比較できるものなっている。

なかでも、出色のアクティビティはカービン銃で楽しめるシューティングレンジだろう。

こちらはクリント・イースウッド監督の「アメリカン・スナイパー」やトム・ベレンジャー主演の「山猫は眠らない」シリーズのようなスナイパー・シューティングが体験できる。ちなみに、こちらもデジタル的なターゲット設定と着弾のコリジョン設定を行っているが、実際に室内に20メートルのターゲットまでの距離を取っており、射撃のフィーリング自体は非常にリアルなものになっている。私が体験したライフルは弾丸を装填するコックを引いて装填するタイプだが、(モデル)ガンマニアの私でもとまどうアクションを強いられる。これを体験すると、1963年11月23日にアメリカ合衆国テキサス州ダラス市内の公道をパレード中に、リー・ハーベイ・オズワルドにテキサス教科書倉庫の窓から、イタリア製の安物ライフル・マンリカ・カルカノで、わすか6秒間に3発狙撃したことがどれだけ嘘に満ちているかがよくわかるような気がする。オズワルドの軍役時代の銃の腕前は普通以下だったという証言からしてもたったひとりのスナイパーが暗殺を実行したとは考えにくい。

話が横道にそれたが、アナログとデジタルがほどよく融合した狙撃体験は今までになかったアクティビティだ。リアルとアンリアル、バーチャルとリアル、このふたつを融合させた新しいかたちのアクティビティであることは間違いない。

左から CCS社 窪川氏 筆者、右CCS社 奏泉寺代表取締役

エアソフトガン総合施設「C.A.T.s」 京都市南区上鳥羽馬廻49−3

公式サイト
http://airsoft-shooter.net

http://cat-s.net/

運営会社:株式会社クラウドクリエイティブスタジオ

http://cloud-creative-studios.com

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。