2019
10.01

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.46「そこにある未来、フェイスブックが提示したVRワールド『Facebook Horizon』」

EyesWideOpen

Facebook Horisonイメージ画面1

すでにこのコラム連載も46回を迎えることになった。1年24回更新につき、約2年隔週で書き綴ってきた。主にVRのことを書いてきたが、果たしてVRのエンタテインメントはどのように変わったのだろうか?。

未来は未来ではなく現在、手を伸ばせばそこにある

 読者の皆様の記憶にも新しいことだろうが、今から3年前、2016年は「VR元年」と言われた年だった。

2016年10月に家庭用VRデバイスとして期待を一手に背負ったプレイステーションVRが導入、コンテンツは「サマーレッスン」がベストマッチし、導入時の話題性、革新性でゲーム関係のエンタテインメントとして着実に VRエンタテインメントが衝撃的な一歩を踏み出した。

しかし、その後、「サマーレッスン」に続くようなエポックメイキングかつワンアンドオンリーな企画モノのコンテンツやVRならではの特色を生かしたコンテンツはあまり聞かれなくなった。むしろアミューズメントスペースを中心にしたアトラクションとしてのVRエンタテインメントが話題を維持してきた。

話題性のあるVRコンテンツが聞かなくなったというは良い意味であって、それはデバイスやコンテンツがある程度一般化し、VRをやったことはないけど、どんなものか知っているという人が増えたものという捉え方をしている。

東京ゲームショウ2019のVRコンテンツ

9月12-15日の期間に幕張メッセで開催された東京ゲームショウでも同じような感覚を持った。

VR系コンテンツの出展自体は昨年と同レベルか、もしくは若干下回る出展数かもしれないが、着実に認知度を増した。つまりVRへの新鮮味はかなり薄れたと言っていいだろう。

私もコンサルティング案件に携っている関係上、「VR市場は現在どのような規模でしょうか」、「今後、可能性のあるVRコンテンツはどんなものだと思いますか」などを訊かれる。2018年から現在に至ってはeスポーツの書籍を執筆したこともあり、それらVR案件に加えて「eスポーツの市場規模や日本での成功の要因」など「eスポーツ元年」ならではの質問を良くいただく。

「VR元年」も「eスポーツ元年」もその年に記念すべきデバイスやコンテンツやルールが決まっただけで、関わっている当事者からしたら「こちとら、10年以上前からやっているよ」とおしかりを受けてしまいそうだ。やり続けることにこそ意味があり、その先に収穫すべきものがある。

気が付いたときには未来はそこにある

時代の変化とは・・・はたと、気が付いて、それを振り返ったときにはっきりと認識することがある。

例えば、みなさんの日常生活を振り返って欲しい。読者の貴方が男性で会社員として勤務していたとしよう、以前はスーツにネクタイというスタイルが一般的だったはずだ、省エネ・ルックが提唱されたのは1979年のオイルショックのあとで大平内閣が奨励した施策だった。半袖、半ズボン、ループタイという羽田元大臣のルックスに違和感を持った国民は多かったと思う。

そして時は流れて2005年、クールビズが提唱されたのは小泉内閣の小池百合子元環境大臣のよるものだった。約15年を経て、今はネクタイをきちっと締めている人は少ない。服飾関係の友人に聞いた話だが、ネクタイ製造業は今や斜陽となり、業態変換や廃業が相次いでいると言う。

むしろネクタイなしのほうがオシャレに映えるという世のトレンドもあり、イケてるベンチャー企業の若手経営陣は上質なワイドカラーシャツ、ノータイにジャケットが定番だ。

メディアにも絶え間なく変化が続いている。私がかつて勤務したデジキューブは販売するゲーム宣伝のために活用したのは、2010年に開局したばかりのスカイパーフェクTV(現在はスカパー!)だ。

当時のスカイパーフェクTVは地上波からは敵対するメディアとして(地上波に)テレビ広告を訴求することができなかった。同じように歴史を遡ると1991年に開局した「WOWOW(ワウワウ)」も同じだった。地上波にとって、それらは敵対するメディアであって、それらを認知促進させることに、自分たちが加担してはならないという不文律があった。

しかし、それらも今はもう昔、地上波ではスカパー!やWOWOWのコマーシャルは当たり前のように放送されている。そして、その地上波自身も新しいサブスクリプション系のデマンドチャンネルと提携したり、自社でBSやCSチャンネルを持つまでに至った。そしてアマゾン、ネットフリック、Huluなどの外圧的な新しいメディアでは従来の地上波メディアを凌ぐパワーを持つものもある。

おわかりのように、時代は気が付いた頃にはもう未来に変わっているのだ。そしてこれからのその歩みは止まることはないだろう。いつ日には、「あの夏の日にはネクタイしていたよね」「ガラケーって何?」というような思い出のなかの一品や思い出のなかのメディアに変わってしまうことだろう。

VR―MRの未来は明るい

Facebook Horisonイメージ画面1

VR、AR、MR、XRの未来も同様だ。それらを創り続け、啓蒙し続けることがこれからも続けばそれらは過去のものではなく、現在と未来を彩るテクノロジーとして支持されることだろう。

9月開催のオキュラス・コネクト6のなかで「フェイスブック・ホライゾン(FaceBook Horizon)」という新しいサービスが発表された。導入は2020年、まだその世界観自体がプロトタイプのため、これからどんどんブラッシュアップされていくことだろう。「フェイスブック・ホライゾン」は、アーネスト・クライン原作で、スティーヴン・スピルバーグ監督が映画化を試みた「レディ・プレイヤー1」をデフォルメ化した世界観の告知動画が観ることができる。

ちなみに「フェイスブック・ホライゾン」の登場する自身のキャラクター・アバターには足がない(正式導入版で、それがどうなるかはわからないが)、日本人の視点から見れば足がないのは古来より「お化け」である。「フェイスブック・ホライゾン」ではなく「「フェイスブック・アザーワールド」(あの世、来世)のほうが個人的にはしっくりと馴染む。

「フェイスブック・ホライゾン」がVR的コミュニティの覇権を握れるのはどうかはわからない。

なぜならば、フェイスブックが一般に公開されたのが2006年、日本語版での正式なサービスが導入されたのが2008年、それまではSNSだった・・・ミクシィやGREEを使っていたのではないだろうか。それらは今思えば一瞬でSNSの行方はすべて変わった。フェイスブックだって永遠に人々の関心と支持を得られるかはわからないのからだ。

VRはすでに皆さんの周りにある未来ではなく日常にあり、気が付いたときにはそこにあるのだ。未来ってそんなものだ。

Welcome to Facebook Horizon 紹介動画

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。