2019
01.10

【World MR News】セガサミー新オフィスのコンセプトを伝える『GRAND HARBORレセプションアプリ』はどのようにして生まれたのか?――「Tokyo HoloLens ミートアップ vol.12~セガサミーさんに行ってみようスペシャル~」レポート①

World MR News

HoloMagicians/TMCN主催のイベント「Tokyo HoloLens ミートアップ vol.12~セガサミーさんに行ってみようスペシャル~」が、12月19日に東京・大崎のセガサミー本社内にあるコワーキングスペース「TUNNEL TOKYO」で開催された。本稿ではその中から、『HoloLens』を使用した『GRAND HARBORレセプションアプリ』に関する部分を中心にご紹介していく。

この日はいくつかのセッションが行われていたが、中でもユニークだったのはこのオフィスのコンセプトとそれをイメージして作られた『HoloLens』用のアプリ『GRAND HARBORレセプションアプリ』だ。

「GRAND HARBORレセプションアプリ開発について」と題されたセッションでは、セガサミーホールディングス小田英仁氏、ハニカムラボ田中浩一氏、ミラクルマイル中原修一氏の3名が登壇。その開発裏話などが語られた。

セガサミーホールディングスの小田英仁氏。

旅をコンセプトにオフィスをデザイン

2004年にサミーとセガが経営統合し、セガサミーホールディングスが設立された。これまでは、グループ会社が離れた場所にあり、その距離感からシナジーが生まれにくいということから、2018年8月から順次、都内に分散していたグループ会社を大崎の新オフィスに集約した。最終的には6500名もの社員がこの大崎に集結。人材交流の活性化による事業間の連携を強化し、グループの成長及び企業価値の向上を図るとともに、グループミッションである「感動体験を創造し続ける」を追及していくという。

新オフィスから新たなセガサミーの旅が始まるということで、オフィスのコンセプトを「Journey(セガサミーの飽くなき旅)」にしている。「グループ総合受付」はその新しい旅のスタート地点となり、内装のデザインやインテリアも船や地球儀など、旅の始まりを思い浮かべるようなものが選ばれている。

打ち合わせスペースの部屋も、各国の港町のイメージになっている。例えばAはアムステルダムでBはバルセロナといった感じだ。Cだけ少し変わっており、サンクトペテルブルクとロシア語になっている。

船の骨組みのようなデザインも採用。世界地図や地球儀なども置かれており、さながらテーマパークに来たような気分になる。

レセプションは多くの来客が訪れる場所だ。そこで、このエリアでは赤レンガ風のデザインで旅の高揚感を演出し、桟橋をイメージしたエントランスを移動しながら、受付で乗船チケットを受け取るといったことをイメージさせている。そして、このコンセプトを伝えるために作られたのが、『GRAND HARBORレセプションアプリ』である。

同社はこのコンセプトをよりリアルに体感いただけることから、最先端デバイスの『HoloLens』を採用している。

ハニカムラボ 田中浩一氏が付けているのが、受付でもらえる乗船チケットだ。

■GRAND HARBORレセプションアプリ

3度の作り直しからコンセプトを決定

『GRAND HARBORレセプションアプリ』のプロジェクトが開始されたのは、2018年5月だ。田中氏によると、この頃はまだまだ余裕があると思っていたものの小田氏とスケジュールが合わず、大筋が決定したのが6月だったという。

それから企画の練り直しを3回行い、8月にお披露目する予定だったが、移転真っ最中という事もあり、お披露目を9月に延ばすこととなった。

はじめは港町というコンセプトから、空気感を演出するために港町で起こるストーリーを考えていた。当初は、年配夫婦やひとりでたたずむ女性を想定していたが、赤レンガがあることが分かり、再度練り直すこととなった。

そこで第2弾として、港町の楽しさを演出するアイデアを出している。3頭身のキャラクターを作り演出面もそれに合うようにしている。このときに、ミラクルマイルの中原修一氏がプロジェクトに参加している。

ミラクルマイルの中原修一氏。

ちょうどこの話が中原氏の時に来たときは、まったく何も決まっておらずとりあえずキャラクターを出して欲しいといわれて制作している。「セガサミーさんのキャラクターが出てくればいいのかなと思いながら、突貫工事で弊社のデザイナーが提出しました」(中原氏)

おなじみの人気IPキャラクターは出せなかったが、デザインを提出してモデルを作りトップに見せたところ、「なんだ、これは?」という意見が出て「初めて場が凍る音がした」(小田氏)という。

時間の制約もあり作ってすぐ見せたところ、ボツを食らってしまった。このときのムービーも残っているそうだが、いつか日の目が当たる日がくるかも!?

そこで、第3弾のアイデアではオフィスのコンセプトをしっかり伝えようというところに落ち着いた。最終的にはこれらのコンセプトを『HoloLens』で体験するために、海と桟橋、帆船、空、レンガの建物、街頭、チケットカウンターといったポイントごとにしっかりと作り込むことが決定している。海にはイルカやカモメなどちょっとした生き物も登場し、港町を表現している。

様々なCG制作の実績があるミラクルマイルだが、今回のプロジェクトで重要だったのは船だという。受付に帆船のモデルが飾られているが、それを忠実に再現している。この船のモデリングは、ハリウッドでモデラーをしている中原氏の友人に依頼し、しっかりデータを作ってリダクションをしたあと、『HoloLens』に落とし込んでいる。

時間に制約があり、イルカも最初はバナナのようなモデルだったモノをしっかりと作り込み、ランダムでアニメーションのパターンが表示されるようにしている。

帆船も受付のサイズにあわせており、出航していく様子が見られるようになっている。

視線や音で演出を誘導

演出面では、常に何かが動いている状態にしている。『HoloLens』をかけてもらってまで見てもらうものであるため、スタート後は何かしらが常に動いているという状態を作っているそうだ。また、オフィスという広めのスペースということもあるが、全部を『HoloLens』で見るというのはなかなか難しい。そこで、視線誘導からの演出や全体の流れをしっかりと見てもらうということを意識してコンテンツが作られている。

画面が賑やかであるため気が付かれにくいが、サウンド面もかなりこだわって作られている。6つある演出を見る度に、新たな音が重なっていくようになっている。最初はフルートだけだったのが、ドラムなどの音が増え、最終的にはオーケストラのようなサウンドになっていくという感じだ。

このセッションのあと、実際に『GRAND HARBORレセプションアプリ』の体験会も行われていた。多くの列ができ、ここでしか見られないアプリを各自が楽しんでいた。筆者も事前に体験させてもらったのだが、帆船の大きさも十分に体験することができ、なかなか感動的な仕上がりであった。 

おまけ:セガサミーさんの食堂はスゴすぎた!?

イベント開催前にオフィス内部を見学させてもらったのだが、中でも印象的だったのが食堂だ。6500人が集まるオフィスと言うことで、食堂にもかなりのスペースが取られており、2000名の喫食に対応することが可能だという。

お昼時には量り売りや日替わりのメニュー、定番メニューなど好みの食事を選ぶことができる。11時30分から14時までは昼食タイムだが、それ以外の時間帯はカフェタイムというように切り替わるようになっている。18時以降はアルコールも飲むことができ、食事だけではなく打ち合わせや宴会なども行われるという。

こちらの食堂は電子決済のみのキャッシュレス化を実現している。電子マネーかクレジットカードで精算できる。

なんと食堂内にベーカリーショップがあるだけではなく、なんと専用オーブンでパンを焼くことができる。

バーコーナーの貸し切りも可能。スクリーンにゲームを繋いで遊ぶことができるほか、フリープレイでダーツ、ビリヤードも遊べる。バカラのテーブルでは、ディーラーから教えてもらえる体験会も実施されているという。

さらにライブラリーコーナーもあり、漫画からビジネス書などが取りそろえられている。こちらでは、役員がオススメする本がコメント付きで紹介されていた。

長野県の南相木村と「森林の里親契約」を締結し、CO2吸収源となる森林整備などを行い、環境保全活動に取り組んでいる。その南相木村から持ってきたカラマツ材が、壁面や様々な場所に使われているのも特徴である。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。