09.29
黒川文雄のEyes Wide Open VOL.22「東京ゲームショウ2018に見るVRのゆくえ」
過去最多入場者記録を更新した東京ゲームショウ2018
去る9月20日から23日まで、千葉県幕橋メッセにて東京ゲームショウ2018が開催されました。
20.日と21日はゲームメーカーや流通などが対象のビジネス・デーに設定され、後半の2日間は一般のゲームファンや家族連れなどで賑わったようです。
今年はゲーム業界のみならず、世間からあらゆる意味で注目を集めているeスポーツ関係の展示、大会イベントなどのプログラムが後半に二日間に集約されたため、来場者総数が過去最多の29万8690人と報道されました。
ちなみに、昨年は25万4311人で、その前年の2016年が27万1224人が昨年までの過去最多来場者記録でしたが、それを2万人超の上積みし、塗り換えました。
eスポーツのパワー恐るべし・・・と言っても差し支えないかもしれません。
「拡現人」をご覧の皆様であれば、お分かりのことと思いますが、2016年の東京ゲームショウは「VR元年」と呼ばれ過去最多来場記録を塗り替えました。しかし、2017年はやや沈静化し、これと言った大きな注目作品や注目のデバイスに欠ける展示会でした。
さて、それでは東京ゲームショウ2018の出展関係から、今後のVR/AR/MRの可能性を検証してみたいと思います。
加速するアーケードVR 「コントローラを投げちゃえww」
バンダイナムコアミューズメント社が強力に推進するVRZONEプロジェクト、VRZONEポータルは常に新しいコンテンツを導入し活性化を図っています。そして、学生や若年社会人層や来日する観光客らをうまく取り込んである種の観光地化に成功しています。
コンテンツもある程度の広さや、機械仕掛けの大きな体感ギミックシステムも兼ね備えており、家庭で体験するVRコンテンツと異なる点も成功のポイントでしょう。いわば、日常のなかの非日常体験ができること、そして体験後は被験した仲間たちとその経験を共有し合えることも成功の大きな要因だと思います。
今回の東京ゲームショウ2018で、まず目に付く展示を行っていたのは「ハシラス」社のブースです。「ハシラス」社はサドル型の乗馬健康マシンを改良した乗馬VRゲーム「Hashilus(ハシラス)」を開発した会社ですが、豊かな発想力で今回も新しい展示を見せてくれました。
そのひとつがVRゲーム内に異なるVRアトラクションゲームを設定し体験してもらう「オルタランド」です。いうなればVR内VR遊園地のようなものです。プレイヤーごとに個別に専任のサポートスタッフを付けない状態であっても、プレイヤーが単独で遊ぶことができることを前提にアイディアが練られたVRゲームです。
そして、もうひとつ注目すべきVRゲームは、「トーヤラケット」ですが、こちらは本来はしっかりと握っていないといけないコントローラを斧に見立ててモンスターに投げて倒すと言う従来の既成概念を覆したVRゲームも注目すべきものでした。プレイヤーが投げたコントローラは画面下にドレープ状になった布製のスロープを経て手元に戻ってくるという原始的な仕組みですがアイディアが秀逸です。
未来の地平を走る21世紀の「ハングオン」VR
ハシラスブースの横に大きくスペースを取り注目を集めていたのはJPPVR社のブースでした。
今年のJPPVR社のメイン展示は、かつて鈴木裕氏がプロデュースした大型体感バイクゲーム「ハングオン」のVR版とも思えるような「フォトンバイク」でした。こちらは、昨年も出展していましたが、今年は出展台数を5台に増やしての体験コーナーでした。筐体の振動、風圧など体感要素も多く、現代に蘇るセガの「ハングオン」になる?かもしれません。
ただ、個人的には昨年出展していた、飾りのないシンプルなバイクデザインのほうがいいのではないかと思いますが、目立つという点では今年のマシンのほうがベターなのかもしれません。このJPPVR社のブースではバイク型以外に、一輪車型、ガンシューティング型など多様なVR展示マシンが並んでいました。
なお、JPPVR社と元セガAM2研の鈴木裕(現在はワイエスネット代表取締役)氏による新作のVRドッジボールタイプの対戦ゲーム「VRSUS(仮)」(バーサス)の発表がありました。この「VRSUS(仮)」の導入は来年の夏を予定しているとのことです。マジで本物の「ハングオン」期待してもいいかも!って感じですね。
次は遥かなる大空へ!
JPPVR社の展示が地上をイメージしたVRコンテンツでしたが、今回の東京ゲームショウ発表のなかで個人的に注目しているのは「空」です。
以前にインディーズクリエイターの作品で航空戦闘機のミッションをテーマにしたVRコンテンツを御紹介したことがありますが、私が注目する「空」をテーマにしたVRコンテンツは読者の皆さんもよくご存じの「エースコンバット」シリーズの新作「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」のVR対応モードです。
「エースコンバット」シリーズは累計で1400万本以上の出荷しており、戦闘機アクションとしての高い完成度を誇るコンテンツです。360度自由な視界はまさにVRの世界観を再現するものに相応しいものでしょう。ただ全編を通じてのVRモードではなく、一部パートとしてVRでの視界、体感モードが搭載される予定です。発売は2019年1月17日の予定ですが、もしかするとスピンアウト企画で冒頭に紹介したバンダイナムコアミューズメント社によるVRZONEでの大型筐体を活用した「エースコンバット」のVRアトラクション化もあるかもしれません。
エースコンバット7の公式サイト:https://ace7.acecombat.jp/
最後は遥か宇宙のVR
今回の東京ゲームショウで気になったVRコンテンツの最後を飾るのは「宇宙」がテーマのVRコンテンツです。こちらはインディーズブースに出展していたVRコンテンツです。
このVRコンテンツは「STARWAY VR」というもので、宇宙で遭難したプレイヤーが、自分で作ったミニ探査船を操縦して、未知の宇宙空間を探検し、さまざまな障害をクリアしていくVRアクションゲームです。ミニ探査船はVR空間内で、自分自身でカスタマイズが可能で、カスタマイズによってそれぞれの機能が異なります。この探査船を操作して宇宙の鉱物や資源を集めて「スターゲート」を作り脱出することがゲームのミッションです。
この「STARWAY VR」はマカオのKAZEGAMESと台湾のHAYATO WORKSに加え、フランスアートディレクターのSébastien Labrunieさんとの共同開発したVRコンテンツです。
今回の出展に際しては台湾のHAYATO WORKSのクリエイターHayato(ハヤト)Yangさんが台湾から単独で来日してブースに立って中国語、英語、日本語を駆使して説明と体験を積極的に薦めていました。
初日はパソコンの調子が悪くセッティングに苦しんだようですが、2日目以降は多くの方に体験してもらったようです。まずは、Steam版をリリースし、その後PSVR版もリリースしたいとのことです。
単独で他国の展示会に出展するアクティブさとポジティブさ、そしてVRという新しいジャンルに挑戦するマインドは様々な人との出会いやコンテンツへの知見などの多くのブラックホールのように飲み込みまた新しいクリエイティブを生み出すことでしょう。
今回は東京ゲームショウ2018で私が個人的に気になったVRコンテンツを御紹介しました。読者の皆様はいかがでしたでしょうか。
「STARWAY VR」プレイ動画イメージ:https://www.youtube.com/watch?v=7OrBTr1JG2E
公式サイト:https://www.starwayvr.com/
(C)JPPVR
(C)ハシラス
(C)バンダイナムコエンタテインメント
(C)HayatoWorks
筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。