2017
04.04

【MRのある世界】情報が可視化された世界

MRのある世界

 前を歩く男女。女の子を見ると自分より年上で、隣にいる人は彼氏のようだ。となりの彼氏の年収は400万円。楽しく話しているが、仕事の電話がくるのではとビクビクしている。お店に入った女性は今からアルバイトのようだ。時給950円の仕事らしい。前の男のズボンは980円という破格のジーパン。どこで買ったのか聞きたい。お店の上にある賃貸月35万円と高い。そんなことを考えながら会社から帰宅しようとする自分の情報も相手に筒抜け。

 今から10年前に出てきたメガネ型MR。デバイスの進化とともにビックデータやAIの発達により、人や物の価値や状況をリアルタイムで可視化することができるようになった。19,800円というリーズナブルな価格が起爆剤となり一大ブームが起きる。しかし、すぐにプライバシーの問題が、ニュースで大きく取り上げられていた。自分の見せたく無い情報はモザイクみたいな処理をかけることができるが、逆にそれだけ見せないとなると変に勘ぐってしまうのは人間のさがなのか。人間慣れれば怖いもので、今となってはみんな気にせずオープンにしている。

 コミュニケーションの取り方も大きく変わった。相手の気持ちが可視化されるので、駆け引きをする必要がなく必要な時に、必要な人と、必要なだけ取るようになった。答えがわかる今の時代は心を推し量ることがないので楽な反面、融通がきかない。相手に好意を持ってもらうためには、相手の趣味の知識をつけるのが一番。取引先の部長の好物が日本酒ということで、レアな日本酒が飲める店を、飲みながら探しまわっている。