2017
04.04

【ワタシの拡現(格言)】拡現人(かくげんびと)~Beyond the Reality~創刊者 佐々木宣彦氏

ワタシの拡現

ほんの1~2年の間に、私達の生活の中でも良く知られるようになったVR(Virtual Reality)という言葉。このVRの世界と似た形で、現在注目を集めつつあるのがMR(Mixed Reality)という、現実と創作物とが融合した世界を可能にする技術がある。この技術にいち早く可能性を見出し、取組を進めている、本メディア創刊者の佐々木宣彦氏(株式会社ポケット・クエリーズ 代表取締役)に、MRの持つ未来の可能性について語ってもらった。

――まずは、MR(Mixed Reality)とは、どういったものなのでしょうか。

シンプルにいうと、「スター・ウォーズ」に出てくる、ホログラムのようなものがイメージしやすいと思います。こういったものは、SF映画の世界ではもう何十年も前から表現されてきましたが、実際のところ、なかなか現実の世界では表現されてこなかった。みんな何となく知っていて、身近なようだけれど、真剣にそれを現実社会で具現化することを、あまりやってこなかったのだろうと思います。
「これがもし本当にあったら、どんなに便利になるだろう――?」ということへの追求ですよね。それがここ数年で、本当に実用化されつつあります。まずは、百聞は一見に如かずですから、多くの方にMR技術を実体験してもらうのが良いと思っています。

――VR(Virtual Reality)とのつながりや、今後の見通しなどをお聞かせ頂けますか?

最近の時代の流れでいうと、昨年大手メーカーが家庭用VRゲーム機を発売したこともあり、VRという言葉が広く認知され、盛り上がりましたよね。そして今そこから、MR、AR(Augmented Reality)へと派生してきていると言われています。
はじめにお話しておくと、私は、最終的には本当の意味でのVRの世界になると思っています。今あるこの環境が瞬間的にスキャンされて、それが完璧なVRデータになる。そして全く同じタイミングで瞬間的にきれいな3Dモデルをいろんな人と共有することができるようになるんです。それが真のVRだと思うんですよ。そうなると、まさに、本当は自分の身体は寝ていたとしても、自由に世界を歩いて動き回っているかのような、現実と変わらない世界が目の間に開けるわけです。現実と見分けがつかないようなことが、本当に起こりえるようになるんです。

 

――ハリウッド映画でも、そういったことを表現した作品が多くあるような気がします。

これまでは「マトリックス」や「インセプション」に代表されるように、“潜在意識や脳の中で再現する”という話が多いと思うんです。でもVRはそうではなく、今実在しているこのままの自分の視覚・聴覚の状態で、体感できるんです。そういう時代が来る。でもそれは当然、現実物ではないので、嘘の情報が混じってもわからないという…。それでまた良い事も悪いことも生まれてくると思います。もちろんそういった時代へ行くまでは、まだ何段階かあると思いますが。今は、そこに行きつく前の段階にいて、現実物とヴァーチャルなものの融合された、まさにMRの時代にきている、ということになると思います。

 

――MRを実用化することで、具体的にどんな世界を目指しているのですか?

リモート・コミュニケ―ションや、リモート・ワークを、もっとやりやすい世界にしたいと考えています。例えば、今自社で、日本とベトナムを拠点にして開発の仕事をしていますが、やはり物理的にオフィスが離れていることで、どうしても仕事を進めて行くにあたり、溝ができてしまうことがあるんです。その溝を放っておくと、知らないうちにお互い疑心暗鬼になってしまって、関係が悪くなってしまう状況になることもあります。もちろん、メールやチャットだけでなく、毎日Skypeで話をしたり、コミュニケーションはとっていますが、まだ足りない。まるで横の席にいるかのように、気軽に同じ絵を共有しながら、同じものを見て話し合うという状態を日常的に作りたいんです。MRは、まさにそれを解決するソリューションになるんじゃないかと、ここ1~2年ずっと考えていました。そして、日本でも発売されたMicrosoft社の「HoloLens」が出たことにより、より実現可能に近づいたと思っています。


さらに、自動翻訳・通訳等の技術と組み合わせると、場所や時間や、国境、人種を超えてのコミュニケーションが誰でもできるようになってくるんですね。日本人同士だけで働く必要はなくなってくるわけです。これまでとものの見方が変わりますよね。

 

――佐々木さんがこの世界に入ったきっかけは何だったのでしょう?

そうですね…。さかのぼると、子どもの頃から機械が好きで、親から与えられたカメラを分解したり、プログロムをつくっていたりしました。高校生になると、バイクや車など、乗り物に興味が出てきましたね。大学は機械工学を専攻し、「大きなものをつくりたいな」と思って、就職してからはトラックの設計をやっていました。そして、途中でシステム系に転身して、製造系の業務システムを開発したり、CADで3Dデータを検証、実証するということもやっていました。いつか自分で独立したいと思っていたのですが、時代とともにスマホのアプリ開発の需要が大きくなって、それで立ち上げたのが今の会社です。当時はゲーム開発をやろうとは思っていなかったんですが、ゲームの需要が思いのほか、たくさんあって。特にここ2~3年でVRの話が多くなっています。そんなわけで、一周まわって来たな、という感じです(笑)。これはもう、「MRをやれ」と、啓示されているような感じなんですよね。

――本メディアの目的についてもお聞かせください?

MRが実用化されていく世界について、それぞれの業界のTOPランカーの方々といろいろ意見交換をしながら考えていきたいと思っています。そしてMRの可能性は非常に大きく、まさにこれからの技術ですので、とにかく、たくさんの方に興味を持ってもらいたいと思っています。より多くの方に「使ってみよう!」と思ってもらい、仲間が増えて、広がっていくことが目的です。本当にMRはこれからだと思います。超えないといけない壁もありますが、チャレンジする価値も大いにあると思っています。
映像作品だと、「攻殻機動隊」「マイノリティ・リポート」「電脳コイル」のような描写があると思うのですが、あの世界が具現化されていくんだな、と思ってもらえるとわかりやすいと思います。子供の頃にみた、あの世界が実現されていくんだ、っていう、シンプルな考え方でいいと思うので、みなさんと共に、MRの世界を広げて行きたいと思っています!