2019
03.29

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.34「アーケードVRが牽引する、2019年の日本のVR市場」

EyesWideOpen

2018年のVR市場をデータから俯瞰する

エンタテインメント系バーチャルリアリティ(以下:VR)市場は、未だ大きな市場規模になっていないという論説と、一方で、2018年5月、OculusGoの市場導入によって、これから先もっと大きな市場規模になると言う観測がある。

以下のデータは、アメリカのゲームソフトやVRなどエンタテインメント市場の調査活動を行っているSUPERDATA社のもので、2018年における、VRハードウェアセールスと販売シェアを表したものだ。

家庭用を牽引するPSVR(130万台)は、コンテンツが充実していないため活気を感じることが少ないが、このデータを見る限り、家庭用市場でのVRを牽引していることがよくわかる。また健闘が著しいのは、先に挙げたOculusGoの伸び率が110万台とPSVRに肉薄している。

OculusGo自体の導入からあまり日数が経っていなかったことから考えても、圧倒的にOculusGoの利便性とダウンロードできるコンテンツの多様性が一般に評価されたものではないだろうか。

資料:SUPERDATAより

家庭用VR市場が沸点を迎えてないと感じる理由は、身の回りでそれらのデバイスを活用しているシーンに出くわさないことあるだろう。つまり、スマートフォンゲームアプリや持ち出し可能な家庭用ゲームと異なり、家庭用VRは持ち出すことができない…イコール、その市場の温度感が見えない背景にあるのかもしれない。

ビデイデッキ、黎明期を彷彿(ほうふつ)させるVRデバイスの普及進度(深度)

 VRデバイスとVRコンテンツが普及促進をしていないと思われる側面には、それらのユース目的が「極めてパーソナルだから」ということだ。

つまり使用する環境や状態はあくまでも一人、そして楽しむべきコンテンツも、今のところはひとりにフォ-カスしたもので、そして、最近、良く聞くのはアダルト系VRコンテンツを観るのに最適なデバイスはVRデバイスであるという。

この状況は、ビデオデッキ導入期を体験した世代ならばお分かりいただけると思うが、ビデオデッキの導入初期は、いわゆる「裏ビデオ」「アダルトビデオ」が自宅に居ながらにして観れる機材…という環境が導入促進に大きく作用したと言われている。

今、VRデバイスと、そのコンテンツの周りで起こっているのはそれと同じものかもしれない。なぜならば歴史は繰り返す。そして故(ふる)き訪ねて新しきを知るというではないか…。

アーケードVRが牽引する日本のVRコンテンツ市場はこれからどこへ向かうのか?

とは言え、日本と世界のVRコンテンツをリードする、いや、リードせざるを得ないのがアーケード用VRコンテンツである。

日本におけるアーケードVRシーンを確立したバンダイナムコアミューズメント社が展開するVRZONE SHINJYUKUは3月31日で、その使命を全うすることになったが、おそらくまた違うかたちで我々の前の新しい展開を見せてくれることになるだろう。

一方、CAセガジョイポリスがまた新しいVRコンテンツを導入する、後半では、そのコンテンツを御紹介する。

今度はゾンビの起源を辿るVRアトラクション「ZERO LATENCY VR」最新作の導入

 今回導入されたVRアトラクション(コンテンツ)は、既に導入済みのZERO LATENCY VRシリーズで展開された「ゾンビサバイバル」の原点を辿るという内容、その最新作である「アウトブレイク オリジンズ -ゾンビサバイバル・エピソード0-」(以下:アウトブレイク)である。

前作同様にVR空間内を、最大6人のチームになって自由に動きまわるフリーロームタイプのアトラクション。VR体験用に用意された空間は15×15メートル、ショットガンとライフル機能を備えたコントローラを手に戦闘を繰り広げるものだ。

少々わかりづらいが足元の青いポジションマークからスタートする、終了時ははるか遠くにいる

アトラクションはミッション前のブリーフィングからで、ここからすべてのストーリーが始まっている。このブリーフィングが約15分、実際のVRアトラクションが15分、トータル30分の長丁場の体験だ。

とにかく撃って倒して、移動するアトラクション

 事前の上官からのブリーフィングが終わると早速ミッションだ。バックパック型のVR・PCマシンを背負ってVRワールドへ、内容は体験していただきたいので、あまりネタバレになるようなことはここでは控えるが、ウジャウジャと現れるゾンビ、そして、VRワールド内をどのように移動するかが、この「アウトブレイク」の面白みだろう。

ミッション途中に現れる「ワープポイント」は、うまくVRアトラクションを進行させるためにとてもよい演出になっている。さらにVRワールド内を移動させる演出も「これぞVR感!」と思わせる手に汗を握る感覚を堪能できるはずだ。

当然ながら無線通信で6人の仲間と連携しながらミッション遂行にあたること、この連携によってチーム全体のランキングも変わってくる。

最終的には自身のチームの結果は、ブリーフィング時に登録したメールアドレスに送信されてくる。

以下の結果は私が体験したものだ。残念ながら私自身はあまりチームに貢献は出来なかったが、達成感の高いVRアトラクションだったことは間違いない。

アトラクションは基本的にはネットからの事前予約制で、ジョイポリスの入場料に加えて、1回2000円(税込)、ただし当日でもユニットに空があれば体験可能とのことだ。

アーケードVRがこのように発展、進化することは家庭用でのVR導入へのハードルの軽減にも作用することは間違いないだろう。

アトラクション終了後に掲示される戦歴

登録したメールアドレス宛に送られてくる戦歴の抜粋

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筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。