2019
02.15

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.31「台北ゲームショウ2019に参加して思ったこと 後編」

EyesWideOpen

前編

いまさらながら”BtoC”の概念とは

ご存じの方がほとんどと思いますが、”BtoC”とは「ビジネスToコンシューマ」のことで、ゲーム会社に限らず生産者が消費者に対して体験、展示、供給などを行うことを意味しています。

身近なコンテンツ展示会の例で言えば、日本のゲームファンになじみの深い東京ゲームショウも初日はビジネスデーですが、残りは一般開放日、つまり”BtoC”という設定を行っています。

そこは年末年始に向けての一大コンテンツ(時にハードウェアありの…)発表会であり、一般のゲームファンがそれらに実際に触れてプレイして、「良いな」とか「イマイチ」とかを感じてもらうものとなっています。

台北ゲームショウは日本ゲームシーンの縮図的展示会

かつて日本の統治下にあったことと、その後の中国との政治的な軋轢と実効支配によって、未だ台湾市民の中には反中国(メインランド)とも取れる感情があるように思うのは私だけではないようです。

それは台湾総統の選挙などを見れば明らかで、親大陸、反大陸のどちらが政治的な主導権を持つのかというは常に市民の関心度は高いと言います。

そのなかで、親日という空気を感じるのは日本統治時代が比較的よい時代だったという印象が根付いているからだ・・・と台湾に住む年長者から聞いたことがあります。

台北101タワー 展示会場はこのタワーの隣にあります。

その親日的な感情はコンテンツ面やカルチャー面でも現れており、日本のアニメ、映画、漫画、それらのキャラクター、家庭用ゲーム、スマートフォン系ゲームでもその傾向は強いと思います。それゆえに、会場をぐるりと見回すと日本のコンテンツ、パブリッシャー(または代理出版社)などでの日本コンテンツの展示が多いのも台北ゲームショウの特徴なのです。

人気を集める日本のコンテンツ 

写真をご覧いただきたいが、展示館の周りは入場を待つ多くの人で溢れています。開催初日は平日にも関わらず学生さんと思われる若者が多く殺到しました。

台北ゲームショウを大きく彩るのは、会期中の1月25日に発売されたばかりの『キングダムハーツⅢ』、(※ただしスクウェア・エニックスの出展ではなくソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)にブースに展示展開が行われている)、また同じSIEのブースではカプコンの『バイオハザード RE2』も大きく展開されていました。

このようなポテンシャルのあるIPを持つ会社が直接ブースを出していない背景は、ゲームファンの関心は高いが、ビジネスとして大きなパイが台湾で取れるかが微妙なバランスになっているという天秤が働いているからに違いありません。それは言い換えると、台湾自体には、ある程度は販売するポテンシャルはあるが、かと言って、パブリッシャーが自社で大きな単独ブースを構えるに至らないという判断があるのかもしれません。

それらのなかでもバンダイナムコエンターテインメントは1社で自社ブースを展開して、『SDガンダム ジージェネレーション クロスレイ』、『ゴッドイーター3』、『エースコンバット7 スカイズアンノウン』、『太鼓の達人』など、数多くのラインナップが並び盛況の様子でした。またセガゲームスは『キャサリン・フルボディ』や『龍が如く』が注目を集めていました。

また、スマートフォンのコンテンツでも、やはり自社ではなくライセンス先の台湾の会社が大きく出展しているケースがあり、『ドラガリアロスト』や『Fate/Grand Order』は現地のパブリッシャーからの出展、『モンスターストライク』を展示していたミクシィはおそらく現地法人と思われますが1社での展開でした。『モンスターストライク』はゲーム大会の開催、グッズ販売など積極的な展開を行っていました。

なお、日本から見て海外コンテンツという部分ではUBIソフトが新作「DIVISION2」などを中心に展示展開を行っていました。いずれも早々と体験予約が終わってしまいました。

こちらは中国本土からの出展のGIANT ENTERTAINMENT社とも交流をしましたが、一方変わったテイストのゲームが多く注目しています。ここには写真がありませんが、ゲイ同士をテーマにした出会いと育成をテーマにした“TENDER ISLAND”というスマートフォンゲームも注目です。

台湾も eスポーツ元年…?

最後にeスポーツに関しても触れておかなければならないでしょう。

今回の台北ゲームショウも昨年の東京ゲームショウと同様に、eスポーツにフォーカスした展示や展開がありました。会場内にeスポーツスタジアムが併設され時間帯に応じて様々なeスポーツタイトルの対抗戦が開催されていました。

ちょうど、私が見学したときには「コールオブデューティ ブラックオプス」の、eスポーツ対抗戦が開催されていました。しかし、一方でタイトルのラインナップ的なものとして、日本でブームアップしている『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』や『FORTNITE』の展示はありませんでした(※筆者の確認ミスかもしれません)。展開しているとすればかなり大きな規模でのものと思われますが、残念ながらそれらは見つけることができませんでした。

eスポーツに関しては世界的にそのジャンルにフォーカスした展開が今年も行われていくことは間違いありません。それはプレイヤーとしてパブリッシャーとしても、たとえば実況者などとしてもみんながそのトレンドに何らかの形でジョインすることを考えているからです。

近くて遠い台北ゲームショウ、もしこのコラムを読んで面白そうだと思ったら、来年は開発者として参加、または見学してみてはいかがでしょうか。

航空券は格安チケットならば新幹線の大阪往復よりも安くて、宿泊施設もあまりピンキリで選べます。「行ってみたい」と思っているだけでは何も始まりません。あとは行動あるのみです。

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。