11.12
黒川文雄のEyes Wide Open VOL.25「「ゴジラVR」はなぜ生まれたのか? 映画「ゴジラ」が生まれた時代背景」
日本を代表する映画をと言われた時、真っ先に浮かぶのは「ゴジラ」シリーズであってほしい。
もちろん寅さんシリーズ「男はつらいよ」とか、「釣りバカ日誌」など連綿と続くシリーズタイトルもあるだろう。しかし、日本男子ならば、自身にとって、メモリアルな「ゴジラ」タイトルがあってしかるべきではないだろうか。
ゴジラの歴史を紐解くと、ルーツは大きな社会問題にたどり着く。
端的に言えば戦争兵器開発という人類のエゴ、そして、それを如実に世界に示した事件が1946年7月、アメリカ信託統治領のビキニ環礁を行われた核実験である。
これはクロスロード作戦と呼ばれ、アメリカ軍艦数十隻、戦後接収された日本海軍の「長門」など71隻の艦船を標的とした核実験であった。
その後1954年1月には、同じビキニ環礁でキャッスル作戦と称して水爆実験が敢行され、付近で操業中だった日本のマグロ漁船「第五福竜丸」などが死の灰を浴びることになった。(※「第五福竜丸」は今も江東区夢の島の「東京都立第五福竜丸展示館に展示してある。機会があれば見学して欲しい。」
この作戦の結果、罪もない一般人や何も知らされていなかった作戦実施地帯の住民が避難することになった。
「ゴジラ」は常に社会問題とともにあった・・・?!
映画「ゴジラ」は、1954年に東宝が製作した作品である。
当時の製作スタッフに依れば、前章で紹介したクロスロード作戦、キャッスル作戦で巻き起こった社会問題に着想を得て製作した作品だという。特に1作目の「ゴジラ」は水爆実験の結果、安住の地の海底からジュラ紀の怪獣ゴジラが暴れ出すと言う設定なのだ。
つまり、ゴジラは人類が自らのエゴや驕りよって生み出した「破壊」と「恐怖」の象徴なのである。このように、「ゴジラ」は常に社会問題と背中合わせのコンセプトがあった。
ちなみに筆者の「初ゴジラ」体験は1971年(当時11歳)の時に観た「ゴジラ対ヘドラ」。
この作品は、当時、日本で社会問題になっていた「公害」をモチーフにしたもので、ゴジラは人類の生み出した公害の落し子ならぬ、落し怪獣「ヘドラ」と対峙し、人類の代わりにヘドラと戦うという内容で、ゴジラを通して社会問題にメスを入れると言う手法がとられた作品だ。すでにゴジラ生誕から60年も経過したため、そのエピソードのなかには悪ふざけのようなもの、今考えてもおかしなものもある、しかし、基本はその世相ごとに何かしらの問題意識をテーマにしている製作されていると思うのである。
「ゴジラVR」の製作秘話
さて、肝心の「ゴジラVR」だが、取材対応したバンダイナムコアミューズメントの田宮氏に依れば、話は昨年7月に、VRZONE SHINJUKUがオープンしたときに遡るという。
このオープンの際に、同じ新宿歌舞伎町地区を盛り上げようと言うことで、バンダイナムコエンターテインメント(当時:以下:現バンダイナムコアミューズメント)東宝シネマズの上層部関係者との交流が図られたという。そこで、同じ新宿で展開していること、同じエンタテインメントを提供しているという観点からVR版「ゴジラ」コンテンツの開発の話しが進んだという。
何と言っても、広場を挟んで向かい新宿東宝ビルからゴジラがこちら側(VRZONE側)を睨みつけているからね。
「ゴジラVR」の基本コンセプトは、2016年に公開された映画「シン・ゴジラ」をベースに製作されたもので、体験するプレイヤーは、攻撃ヘリの銃座に搭乗してゴジラを攻撃し、最後のトドめはゴジラの口の中に「血液凝固剤」を打ちこむことにある。
すべてアイトラッキングで照準が定まるのでプレイヤーは、シーンに応じてトリガーを引くだけのシンプルな操作性である。プレイは最大4人の同時体験が可能で,ヘッドセットを経由してマイクによって通話しながら体験が可能だ。
「ゴジラVR」の見どころとVRどころ・・・
「ゴジラVR」は行ってしまえば「ゴジラ」のスキンを被ったシューティングVRゲームであるが、ポイントは映画的な視点で体験することを前提に考えられているところである。
シーンは歌舞伎町広場と思われる場所からスタートする。
そこでホバリングするブラックホーク・タイプの戦闘ヘリに乗り込み、高層ビル街をすり抜けゴジラを迎え撃つのだが、ホバリングする広場の背後にはVRZONE SHINJUKUがあるので、ヘリが上昇する前に目視で確認するのが一興だ。
プレイヤーの乗るヘリは高層ビルの間をすり抜けていき,その前方に存在するゴジラを尻尾のほうから捉え,その後,顔の横や脚のすぐ前などを通り過ぎる。映画さながらのゴジラの巨大さ、畏敬と恐怖感を演出するシーンが続いていく。
ゴジラの放射線流による攻撃も迫力がある。プレイヤーの攻撃準備が整う前の間、ゴジラは破壊の限りを尽くす。いわば、体験の3分の2は映像によるゴジラを観るということに集中するのがこのVRコンテンツの特徴だろう。
今回の「ゴジラVR」の開発には「絶体絶命都市」などのディザスター(大惨事)コンテンツの開発で知られるグランゼーラが取組んでいる。良く出来ていると感じさせるゴジラのモデリングデータは、映画製作もとの東宝から提供されていると言う。そのあたりの効果と演出も功を奏しリアリティのあるVRアクティビティに仕上がっている。
すでに全国のVR ZONE他 7か所で稼働が始まっている。「ゴジラVR」は映像的演出とシューティング要素をうまくマッチさせてキャラクターVRアクティビティと言っていいだろう。個人的には操縦している感のあるような「ジャイアントロボ」のVRアクティビティとかもあったらいいなと思うのだが、また次の展開を期待している。
※「ゴジラVR」全国可動店舗
VR ZONE SHINJUKU(東京都)
VR ZONE OSAKA(大阪府)
namco 札幌エスタ店(北海道)
namcoイオンモール各務原店(岐阜県)
namcoイオンモールKYOTO店(京都府)
namcoイオンモール大日店(大阪府)
namco 博多バスターミナル店(福岡県)
VRZONE 公式情報はこちらから
https://bandainamco-am.co.jp/others/vrzone-portal/
「ゴジラVR」紹介ページ
https://vrzone-pic.com/shinjuku/activity/godzilla.html
TM&(C)TOHO CO., LTD.
(C)BANDAI NAMCO Amusement Inc.
筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。