2018
11.12

【World MR News】ダヴィンチの時代から500年以上経った今の技術を「モナ・リザ」という媒体を使って再構築!――KDDI「自由視点×音楽VR」による『Block Universe #001』が初公開

World MR News

KDDIは、一般社団法人MUTEK Japanと共同で、日本科学未来館を中心に音楽とテクノロジーを駆使した世界規模の祭典「MUTEK.JP 2018」を11月1日から11月4日の期間開催した。その中で、KDDIとKDDI総合研究所による世界初の技術を活用した作品『Block Universe #001』が初公開された。

その2日目にあたる11月2日に、メディア向けの内覧&体験会を実施。こちらではその模様をレポートする。

『Block Universe #001』

誰もが知っている有名絵画の『モナ・リザ』。イタリアを代表する美術家のレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた、500年以上も前の作品である。この『Block Universe #001』では、スマートグラスとヘッドフォンを付けて、圧倒的な既視感のモナ・リザを自由視点のVRとサウンドのVRを融合したインスタレーション作品である。本作の制作には、クリエイティブ集団「da Vinci ers(ダビンチャーズ)」が携わっている。

体験者はスマートグラスとヘッドフォンを付けた状態で、モナ・リザの絵を眺める。手すりが黄金比のように渦を巻いており、それに沿っていく形でモナ・リザの絵に近づいていくのである。目の前にモナ・リザが現れた瞬間、思わぬアクションを楽しむことができ、そのまま元のモナ・リザの絵をVRで眺めていきながら終了といった流れの作品であった。

スマートグラスを付けていない状態のときは、壁一面にプロジェクションマッピングが映し出され、アンビエントな音楽が流れている。実際に体験時にはその音楽も距離によって徐々に変化していくのである。

この音楽はステレオで音が変わっていくだけではなく、サラウンドになっている。そのため、同じ音楽ではあるものの別のであるかのような体験も同時にできるのだ。ここで目指したのは、参加者がこれまでの解釈とは違ったモナ・リザを体験することである。

体験後、本作の制作にも携わっている、KDDI株式会社商品企画本部 プロダクト開発1部 プロダクト2グループ マネージャーの水田修氏に、詳しいお話を聞くことができた。

今回の『Block Universe #001』のモナ・リザは、実際の絵画よりもほっそり目のイメージだった。その理由はCGで作ったものではなく、特殊メイクでモナ・リザを再現しているからだ。これはモデルの人物がふっくら目ではなかったということだが、エッジを切っていく方向になるためふくよかにすることは出来ないのだという。

MUTEKが提唱しているコンセプトは「Block Universe」だが、これは時間や空間といった隔たりがないという概念を指している。それと同じタイトルが付けられているのだが、それを決めたのは最後だったと水田氏はいう。

ダヴィンチに対する考察は様々なものがあるが、今回のクリエイター陣は、ダヴィンチは自分のテクノロジーを凝縮して絵を描いており、それが黄金比などに現れている。そうしたことの理由に、技術を何かの形で理解させるために絵を描いたのではないかと解釈したそうだ。

それを、当時から500年以上経った今の技術をわかってもらうために、モナ・リザという「媒介」を1度作ってみようというところから始まっている。そうした経緯もあり、「Block Universe」というタイトルがそのまま採用されることとなったのである。

また、タイトルに「#001」とナンバリングがされているが、特に次が決定しているというわけではない。アーティストと話をしているうちに、コンセプトがほかにも効いてくるという意味合いから付けられたモノなのだそうだ。

ちなみにこの企画は9月末に考えられ、制作は10月とかなり短い期間で完成させられている。今回は新たなテクノロジーを使っているわけではなく、既存の技術を応用して新しいものを生み出しているからだ。

そのため出来ることは決まっていたため、表現手段をどうするかという議論が中心となったようだが、その部分に関してもすぐに決まりこの作品が生まれている。

今回は舞台の裏側も見せていただいたが、モナ・リザを見るだけではなくモナ・リザに慣れるという試みも行われていた。

『NINE feat FAMMIN』

本来は『Block Universe #001』の体験のみというお話だったが、待ち時間の間『NINE feat FAMMIN』という作品も体験させてもらえることができた。会場内に設置されていたのは、3×3マスが描かれたブロックとふたつの車椅子。参加者はふたりひと組で、VRゴーグルとヘッドフォンを装着し車椅子に乗り込んでいく。

入り口は美術展のようなシックなデザインとなっていた。

写真では残念ながらわからないのだが、VRの内部は同じく3×3マスに区切られた空間となっており、それぞれが白いカーテンで覆われている。体験者はその中を見渡しながら、映像に従い実際に車椅子を押されたり回されたりしながら移動していくのである。

どの方向を見ているかもわからず進んでいく不思議な世界。それぞれの部屋にはマスクを被った人や、女性が近づいてくるなどVRと狭い空間という相性のいいものを組み合わせたような作品となっていた。

何よりも感心したのが、これらの映像がシームレスに流れていたことだ。ワンカットムービーとしてこの夏『カメラを止めるな!』という作品が大ヒットしたが、こちらは一部修正が入っているものの、360度の映像を長回しで取ったような体験をすることができた。

今回体験したモノとは少し異なるが、イメージが近いTeaser MoviがYouTubeにアップされていたので、そちらを参考してもらうとわかりやすいだろう。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。