03.26
黒川文雄のEyes Wide Open VOL.11「世界初!子供向けVRをやってみた。聞いてみた。」
家庭用バーチャルリアリティ(以下:VR)エンタテインメントが盛り上がりを欠ける今、業界大手ゲームパブリッシャー主導でアーケードでのVRエンタテインメント展開が積極的になっている。
しかし、それらはあくまでも「そう、見える」という演出をしているような状態で、実態は「顧客が飽きないように常に新しいVRエンタテインメント・VRアクティビティを提供している」という状態かもしれない。
しかし、それはそれで、あるべき企業努力とコンテンツ開発への真摯向き合いであり、高く評価したいと思う。
あのグリー?がアーケードゲーム開発・・・
なかでも、ゲーム業界の大手パブリッシャーであるバンダイナムコエンターテインメントは、「VR ZONE SHINJUKU」でのVRアクティビティの対象年齢を開業時から現在まで13歳以上と定めていたものを、3月度から7歳以上へ改定した。(ただし従来通り身長制限を設けたものがある)
また、「世界初の子供向けVRゲーム」と銘打ったアーケード用VRゲーム2機種が、イオンファンタジーとグリーの共同開発により3月中旬から導入された。読者のなかには「あのグリーが業務用ゲーム?」と思う方もいるだろう。かつてソシャゲ界をリードしたグリーが、家庭用ゲームへの参入はもとより、徐々に業態を変換しようとしている様子が窺える。
今回の開発と導入に際しては基礎的な構想から2年ほど要したものだという。導入店舗はイオンファンタジーが国内に擁するアーケード「モーリーファンタジー」の200店舗に順次導入され、海外は中国の100店舗に導入されるという。今回の導入は「VRぶっとび!バズーカ」「VRどっかん!ブロック」というVRゲームとなる。
私も「世界初の子供向けVRゲーム」を体験してみた
私も今回導入予定のVRゲーム2機種を体験したので簡単にレポートしよう。ただし筐体自体は完全に「子供サイズ」のため、大人が楽しむには若干ムリがあることはあらかじめ記しておく。
「VRぶっとび!バズーカ」の対象年齢は3歳以上。ゲーム内容は写真で見ていただくとわかると思うが黄色のカラーリングのバズーカ砲と一体化したVRモニターのなかに迫りくる「恐竜」をバズーカ砲で狙って撃破するという簡単なものである。
ゲームは「かんたん」モードから難度が上がり「むずかしい」モードまでの3ステージ、恐竜もラスボスまでに3種類が登場して、それらを撃退するというもの。
子供向けということもあって、バズーカ砲のコリジョン(アタり)判定は緩く、一般的な家庭用ゲームのようなシビアさとは無縁で、方向がある程度正しければ恐竜に命中する。とにかく、狙いを(ある程度)定めて撃つべしというもので楽しいコンテンツに仕上がっている。ゲームクリアーすると撃破した「恐竜」が目の前に積みあがる演出もなかなか面白い。
もうひとつのVRゲーム「VRどっかん!ブロック」は、筐体イメージはLEGO?風のもので、こちらはブロック(LEGOではない)を組み上げて、VR画面内で色々な造形物を作るというものだ。操作は目の前にある大きなブロックを叩く、ひたすら叩くというものだ。2人プレイも可能。
こちらも難度は3段階が選択できる。ただし、タメて打つと一気に組みあがるという要素もあるようなので、リピート性も望める仕様になっている。
こちらもコリジョン(アタリ)判定は緩くなっており、誰でも楽しめることだろう。
ちなみにこちらはヘルメット状のVRヘッドセットを装着するだが、オトナでは目深に被れないというが、小柄なお母さんならば一緒に体験することも可能だろう。
ちなみにどちらのVRゲームも1プレイ200円となっている。
体験した子供に訊いてみた
取材したこの日(3月20日)は、メディア向けの体験会とともに、近隣の幼稚園児を招待しての体験会もあり、筆者は体験した子供に感想を訊いてみた。
「面白かった」「またやってみたい」というありきたりの感想だが、子供は正直だから実際にまたリピートしてくれることだろう。また、VRのヘッドセットの装着も違和感が無かったようだ。
さて、これらの子供向けVRゲームだが、一般にVR用デバイスで使用されている複眼式レンズとは異なる単眼式VRレンズとなっている。
つまり、複眼は左右の視差が生じることでの立体感を生み出す効果が生まれるが、単眼の場合はそれらはなく、見易さや眼精疲労感の軽減や健康への影響を抑えたものなっている。
よって今回の、世界初の子供向けVRゲームが実現したと言ってもいいだろう。
VRエンタテインメントの未来のために
今回導入された2機種に続き、この2社の共同開発VRゲームとして「VRびっくり!スライダー」が3機種も7月の稼働を目標に開発が行われている。
「VRびっくり!スライダー」はスライダー、滑り台状のVR筐体になっており、子供や家族層の誘因となり、アーケードの活性化につながるVRゲームだと思う。いつの時代も、常に新しいエンタテインメント醸成と、新しいユーザーへの訴求が必須だろう。エンタテインメント自体は世の中になくても良いものと定義されることが多いが、実態としては目の前に無いもの、つまりVRが新しいエンタテインメントとして迎えられることは時代の必然と言えるだろう。このような子供向けVRゲーム機がきっかけとなり、新しい顧客、新しい市場が掲載されることはエンタテインメント市場にとって歓迎すべきことだ。
イオンファンタジー公式HP
http://www.fantasy.co.jp/kodomovr/
© AEON Fantasy Co.,LTD
筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。