2018
03.29

【World MR News】HoloLensで花鳥風月を再現。自然の情景を楽しむ「菊MR」

World MR News

美しく、そしてしなやかに咲く菊の花。
その菊と、現実と仮想空間を融合した複合現実(Mixed Reality、以下MR)によるプロトタイプコンテンツ「菊MR」が完成した。
今回はその菊MRについて、担当の美馬さん、内山さんにお話を伺った。

写真)美馬さん

■NOMLABとは
菊MRを開発したのは、株式会社乃村工藝社のデジタルコミュニケーション領域を開発する専門組織「Nomura Open Innovation LAB」、通称「NOMLAB(ノムラボ)」だ。
空間創造活性化のリーディングカンパニーとして業界を牽引する乃村工藝社は、常に新しい分野を開拓していくという目標を掲げている。その中で、進歩するデジタル技術を取り入れた空間を創造していきたいという目標のもと活動している。

その活動の一環として作成されたのがプロトタイプコンテンツ「菊MR」だ。

■菊の花に込められた想い
MR技術を用いたプロトタイプコンテンツの題材として菊の花を選んだ理由は、創業者である乃村泰資氏の時代まで遡る。乃村泰資氏は舞台「菊人形の段返し」といった舞台を演出したことでも知られ、それ以降、120年以上にわたって菊の花は乃村工藝社の歴史の象徴として扱われてきた。
「菊人形の段返し」は、当時の舞台としては最先端の技術と言われ、創業当時から時代を先取る空間表現を演出してきた。
そういった創業者の信念を踏襲し、現代における最先端の斬新な演出を行う上で菊の花は外せなかったのだと内山さんは語る。

その斬新な表現を行うにあたり、利用したのが「Microsoft HoloLens」だ。
NOMLABでは、VR、ARの技術を利用したコンテンツは既に作成していたが、MR技術についてはまだ研究着手していなかった。今回はそのプロトタイプとしての作成を予定していたが、Microsoft HoloLensに出会った際に内山さんは「やっと会えた」という思いを抱いたのだと言う。
Microsoft HoloLensを装着することにより、空間上に情報の表示を行ったり、映像と組み合わせた演出を行ったりすることが出来る。それが実現したいイメージと合致したのだそうだ。

しかし、菊の花とMicrosoft HoloLensを利用して、どのような表現を行うのがいいのか。その演出について協力を仰いだのがparkERsだった。parkERsは植物を用いた空間デザインのプロ。その技術と知識によって、どのような表現を行うか――例えば、風を感じさせる表現や、鳥、虫、満月などの雅な情景を感じることの出来る表現のアイデアを出してもらった。

それらのアイデアを3Dグラフィックスで表現する際に、技術面でのサポートを行ったのが株式会社ポケット・クエリーズだ。「バーチャルとリアルの融合に挑みたい」というNOMLABの思いを受け取って、よりリアルに、より存在を感じられるように、ポケット・クリエーズの持つ技術を最大限に活用し製作を進めていった。

内山さんの思いとして「バーチャルとリアルの境目に挑みたい」というものがあった。そのきっかけは社内で鳥がどうしても苦手という人だった。菊MRで実装された鳥をその人に試しに体験してもらったところ、「ぞっとする」という感想が返ってきたそうだ。それはつまり、その人の世界で、身体的な実感を伴う”鳥”の表現が実現出来たという大きな手ごたえだった。

このような反応からも、今後MRデバイスの画像表示の質と処理できる情報の量が増えるほどに、身体的な実感を伴うバーチャルとリアルが融合した体験の実現する未来の到来が予感される。

こうして、parKRs、ポケット・クリエーズの二社の技術が最大限に発揮され完成した菊MRだが、これにはもう1つ最先端の技術が使用されている。それが「日本語音声認識」だ。
今回のアプリにはあらかじめワードがプログラムされており、その単語を口にすることで様々な機能を起動することが出来る。
例えば紅葉を舞わせたり、満月を空に浮かべたり、産地や花言葉などの情報を表示する際にも音声による操作が可能となる。

写真)HoloLensによる菊MR
https://youtu.be/5sKofsHM2eE

 

■プロトタイプから未来へ
乃村工藝社では、プロトタイプを大切にしている。
空間創造活性化のリーディングカンパニーである乃村工藝社では、これまでに誰も行って来なかった第一歩を踏み出すことを大切にしている。それは創業者である乃村泰資氏の頃から共通する大切な思想だ。
今回の菊MRでもその思想はしっかりと受け継がれていて、これまでにない技術を様々に取り入れている。
しかし、完成して初めてわかる課題があったことも事実だ。たとえば視野の狭さや重量、また周囲の光量に影響を受けることもあるというのも実験を繰り返すうちにわかった事実だった。
それも全て、このプロトタイプを完成させたことにより発見された課題。この第一歩が、今後の発展に繋がっていくという手応えを、美馬さん、内山さん共に感じたようだ。
「乃村工藝社だからこそ出来るコンテンツ」としてこの作品を展開し、その経験を更に他のデバイスにも広げていけるだろう。
また、乃村工藝社で手がける店舗や博物館などの施設での空間設計においても、この技術を応用した提案を、これまで以上に積極的にお客様に対し提供出来ると考えている。

写真)内山さん

■時代の最先端をゆく技術を
時代は変化し続けていく。その変化の一歩先をゆき、その時代の歓びと感動をつくりだしていく。それが乃村工藝社、そしてNOMLABの目標だ。
今回完成した菊MRも、ここからさらなる発展のために改良をくり返していくのだろう。
「乃村工藝社だから出来ること」を目指し、新たなる空間技術の創造への第一歩を踏み出したのだ。

■参考
[株式会社ポケット・クエリーズ]
3Dゲーム開発を通じて培った技術をMixed Reality実用ソリューションに適用する研究開発を推進しています。
http://www.pocket-queries.co.jp/

[parkERs(パーカーズ)]
青山フラワーマーケットを運営する株式会社パーク・コーポレーションの室内緑化を中心にグリーンを活かした空間デザインを行うブランド。「日常に公園のような心地よさを。」をコンセプトに、商業施設、オフィスや住宅などの空間デザインを通して花と緑のあるライフスタイルをご提供しています。
https://www.park-ers.com/

[NOMLAB(ノムラボ)]
「デジタルイノベーション×場づくり」をテーマに新しい集客創造を目指しています。様々なアーティストやテクノロジストと協働しながら、場づくりにおけるデジタルイノベーションとクリエーションの実践を進めています。今後もNOMLABは、その時々の社会動向に寄り添う先進的な空間を創出するため、外部と協業しながら新しい技術を研究し、時代の先を行く未来の空間開発を進めていきます。
http://www.nomlab.jp/

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