2018
02.26

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.10「AR版「逆転オセロニア」に見るARゲーム空白の10年」

EyesWideOpen

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)主催で、2月3日、「逆転オセロニア」のユーザー対象の2周年記念公式リアルイベント「オセロニアンの祭典」に取材する機会を得た。以前からスマホアプリゲームのユーザー対象イベントには関心があった。実際にはスマホアプリゲームとは言っても、一般的なゲームファンと大差なくコミュニティとしては私が過去に経験してきたアーケード向けゲーム、オンラインゲームなどと同じテイストを感じさせるものだった。

「逆転オセロニア」公式サイト https://www.othellonia.com/

それともうひとつこのイベントに興味をもった理由は、会場限定のMR(MixedRealty:複合現実)体験版「逆転オセロニア」があると聞いたからだ。使用するデバイスはマイクロソフト「ホロレンズ」、向かい合ったプレイヤー同士が、黒と白の石を置いてMR版を体験するものだ。それは現実世界と仮想世界をミックスしたゲームワールドが目の前に拡がるというものだ。

(写真:このシステムソフトを開発したのは株式会社ティーアンドエスhttps://www.t8s.jp/

会場でのデモンストレーションのプレイ体験は「逆転オセロニア」と全く同じ、目の前に指を差出し、親指と人差し指で石を指定の場所に置くと、そのマスに特定のモンスターが召喚されてくるというものだ。今回はデモ体験のため、プレイヤー双方がそれぞれ1手のみを打てるもので、キャラクターとグリッド(マス)とコマのずれなど気になるポイントもいくつかあったが、今後の改良と完成版に期待したいと思う。

(写真:プレイ中の筆者)

実は、このMR体験版「逆転オセロニア」を体験して思い出したソフトがある。

それは遡ること10年前の2007年リリースされたプレイステーション3(以下:PS3)専用ソフト「アイ・オブ・ザ・ジャッジメント(THE EYE OF JUDGMENT BIOLITH REBELLION)〜機神の叛乱〜SET.1」(以下:「アイ」)である。

http://www.jp.playstation.com/software/title/bcjs30007.html

この「アイ」はビデオゲームと対戦型のトレーディングカードゲームを融合させたゲームもので、当時最先端だった「拡張現実」を実現したものだった。トレーディングカードには「サイバーコード」と呼ばれる2次元バーコードが印刷されており、バトルフィールドとなるプレイマットの上にプレイステーション3と接続したカメラ「PLAYSTATION Eye」を接続することで、テレビ画面に映ったカードの実写映像上に3Dの立体キャラクターが登場するという先進的なカードバトルゲームだった。

ゲームシステム自体も「マジック:ザ・ギャザリング」や「デュエル・マスターズ」などの世界的なカードゲームをクリエイトしたウィザーズ・オブ・ザ・コーストが行った本格的なものだったが、時代を先取りしすぎたせいか、3年後にはオンラインのサービスを含めて更新されることなく、事実上ゲーム自体がクローズしたものだ。

「アイ」とは異なるゲームシステムとは言え、新しいゲームの遊び方を提示したものが今回のAR体験版「逆転オセロニア」だろう。

今後の展開次第では、遠隔での対人ARプレイやダイナミックな大会演出などの可能性もあると思うので、できる限り実現にむけて尽力してほしい。

「逆転オセロニア」自体がローンチ時は話題になったものの、その後やや活性化に苦しんだゲームアプリだった。しかし、それでもサービスを止めることなく、ゲームシステムの見直しや運営を最適化を促進し、終わりかけたものを、再生に持ち込んだある種珍しいコンテンツでもある。そのナレッジや経験を活かしてAR版「逆転オセロニア」も完成させて欲しいと思った。

ARのみならずVRコンテンツもなかなか大きなブレイクスルーを迎えられないでいるが、個人的にはVRゴーグルという設定にこだわるよりも、没入型360度ビュアーとして割り切ってしまったほうが「個」の映像デバイスとして使い勝手が良いのではないだろうか。特にこのところ、アマゾン・プライム、Hulu、NETFLIXなどで優良なコンテンツが独占で配信されるケースが増えている。ともすれば家人とチャンネルやモニターを奪い合うことも多くなってきており、そんなときに個のデバイスとしてVRゴーグルを利用するのが現実的なVRゴーグルの普及になるのではないだろうか。

新しい技術と表現のARにはまだ少し超えるべきものはあるかもしれないが、かつて「アイ」で見たものは現実に具現化しようとしている。失われた10年は決して無駄ではなかった・・・そう思えるときはそんなに遠く無いような気がする。

写真撮影 黒川文雄  (イベント公式写真提供DeNA)

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筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。