2018
01.29

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.9「“TAG”をつけろ! 究極のサバゲーオタクのVRコンテンツ」

EyesWideOpen

“TAG(タグ)”と聞いて思い浮かぶのはアメリカ軍の認識票“DOG TAG(ドッグタグ)”だ。

ベトナム戦争時、アメリカ軍兵士が首から下げていたのを映画やニュース映像で観た記憶がある。有名なところではウィレム・デフォー、チャーリー・シーンが出演した“PLATOON(プラトーン 1986年公開)”だ。

兵士は2枚の“DOG TAG”を常時身に着け、戦死した兵士から、その“DOG TAG”を遺品代わりに持ち帰るというシーンがあった気がする。調べると、2枚のうち1枚は遺体につけて、そのまま身元確認用、もう一枚は生き残ったものが持ち帰るもの用らしい。ちなみに、2枚を重ねるとカチャカチャと音をたてるため、サイレンサーというゴム製のカバーを作けることがある。

この“DOG TAG”だが、確か90年代の後半くらいには若者のファッションアイテムとして日本で流行ったことを覚えている。アメ横の「中田商店」には土日になると“DOG TAG”に刻印を求める人たちで店頭に行列が出来たほどだった。

そんな“DOG TAG”ブームも去り、今はほとんど“DOG TAG”自体は見なくなった。しかし、その後、“DOG TAG”ブームに変わり、新たに好事家たちを喜ばせたのは「サバゲー」と称されるエアガン、エアマシンガンを用いたマニアックな「サバイバルゲーム」だ。

私も実際に「サバゲー」参加したことがあるのが、敵側に見つからないように移動し、捕捉し、被弾させるというスリルあふれる展開が楽しい…とは言え、エアガンから高圧ガスで発射されるBB弾は被弾すると痛い。当りどころが悪ければアザになることもある。

とは言え、緊張感と、爽快感、それに非日常性を味わう趣味、エンタテインメントとしては一度味わうとなかなか抜け出せないものだと思う。

今回、体験したVRコンテンツは、黒川塾57のゲストとして登壇してもらったCAセガジョイポリス株式会社の小川氏が当日のトークセッションのなかで、紹介していたもので…

小川氏曰く

「海外のVRコンテンツを探していたら、すごくいいものがあった。それでセガとしてメールを送ってみたが、全く返信がなかった。どうやら相手側は『まさか、日本のセガからメールが来るはずは無い』と思い込んでいたらしく、結局半年くらいスパムメールとして放置されたままだった」

…というコンテンツだ。

「2017年 / VR元年はVR週間で締めくくり」

そのVRコンテンツのタイトルが今回導入予定の「TOWER TAG(タワータグ)」。

東京・台場の屋内型テーマパーク「東京ジョイポリス」の新アトラクションとして、「ヒト」VS「ヒト」の対戦型VRシューティングゲーム、2018年2月9日(金)に導入される。

この「TOWER TAG(タワータグ)」の開発は、ドイツのVR Nerds(ヴイアールナード)社のもので、ライセンス許諾契約の基本合意書を締結したCAセガジョイポリスが、国内ではダーツライブと協業して展開していく予定。

「TOWER TAG(タワータグ)」は、東京ジョイポリスでのオープンが国内第一号展開となる。

ちなみにNerdsとは英語で「オタク」という意味で、ストレートに言えば「VRオタク」が開発したマニアックなVRコンテンツ&アトラクションと言っていいだろう。

すでに先行して私もこの、「TOWER TAG(タワータグ)」を体験したが、2対2のチーム戦でのプレイ(体験時は3対3のチーム戦)、省スペース(3メートル×3メートル)での展開が可能なもので、VRゲーム内容は、VR空間の上空までそびえたつタワーを舞台に、チームを組んで相手と撃ち合うVRガンシューティングゲーム。

リアルな感触のガン・コントロールを用いて、迫力のある対戦シューティングを行うほか、壁を利用して相手の弾を避け、電子ワイヤーのような演出でタワーからタワーへとVR移動する。タワーに自分のチームのTAGを付けるというタイトル命名の意味が込められているのだろう。

プレイは、予め限られたラウンド(回数)内でTAGでの陣地獲りと敵への攻撃でスコアを競うものだ。私の体験したインプレッッションは自分でタワーにTAGを付けて飛び移る飛翔感のようなVR感覚が素晴らしい。従来のゾンビシューティングやエイリアンとの対戦とは異なるセメント感(真剣勝負)、ハードかつストイックな印象の強いVRゲームに仕上がっている。まさにドイツならでは?の完成度だ。

しかし、セメント的、ハードかつストイックな感じがやや強すぎて、ゲーム的エンタテインメントの要素はまだ十分では無いように感じる部分もある。

TOWERからTOWERへ飛び移る際のVR感の演出やスコアの表示、エネミーの判別など、やや改善を望むポイントもあった。そのあたりはこれからのブラッシュアップに期待をしたい。

なお、今回、ダーツライブと協業することが既に発表されているが、スコアリング、ネットワーク対戦、従来のアーケード以外のカラオケボックス、小規模スペースなどでの展開も、このビジョンと座組みのなかにあることだろう。また、デジタル要素の強いサバゲーという切り口からも、eスポーツの流れを汲んだ、VRのもっとも新しい形のひとつ“VR eスポーツ”のアトラクションとしても期待のできるVRコンテンツだと言える。

オマエのTAGを付けろ!

…VR空間内で繰り広げるデジタルサバゲー。2018年もアーケードVRがVR市場を牽引することは間違いだろう。

~TOWER TAG(タワータグ)」~(セガCAジョイポリス社案内による)

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。