07.09
【World MR News】VRコミュニケーション『バーチャルキャスト』&ドローン、VRの世界――「ベースキャンプ・フェスタ2019」レポート②
6月28日に開催された、交流企画イベント「ベースキャンプ・フェスタ2019」。他の企業や異業種の人たちとも交流できる場として開催されているイベントだが、こちらではその中からバーチャルキャストの岩城進之介氏と水見将人氏によるVR関連のトークセッションの模様をレポートする。
■「バーチャルキャストがつくる新しいVRコミュニケーション」
メイン会場のHall Aで20時から開催されたのが、バーチャルキャスト 取締役CTO 岩城進之介氏によるトークセッション「バーチャルキャストがつくる新しいVRコミュニケーション」だ。
『バーチャルキャスト』は、2018年4月13日にサービスが開始されたVRライブ・コミュニケーションサービスだ。VR空間でキャラクターに成り代わり、スタジオでコミュニケーションや生放送ができるといものである。また、VR空間の外ともコミュニケーションが行えるところも特徴のひとつだ。
この「VR空間の外とのコミュニケーション」とは、たとえばツイッターに付けられたハッシュタグの投稿を、『バーチャルキャスト』の中で見ることができる。そのため、双方向のコミュニケーションが行えるのだ。ちなみに、『バーチャルキャスト』内からもツイートをすることができる。
VRの中であれば、誰でも美少女になることができるなど、なんでもできる。しかし、このVRの世界は分断されており、VRアプリごとに世界があり自分の分身となるアバターがあるといった感じになっている。
そこで岩城氏は、このようなアイデンティクライシスが起きていると考え、プラットフォームを横断して体験を連続させるための技術が必要だと考えた。そこでプラットフォームを横断できるVR向け共通アバターフォーマットの「VRM」などの技術基盤をいろいろと作っている。
ここで、実際に『バーチャルキャスト』を使ったデモを披露。風景が電車の中に切り替わり、シューティングゲームができるモードに。こちらは共通フォーマットの「VCI」で動いているもので、自由に作ることができるのだという。
続いてライブステージに画面が切り替わり、『バーチャルキャスト』内で自撮りした画像をツイッターに投稿するデモを行いセッションが終了した。
ベースキャンプ・フェスタで発表中!https://t.co/T231wx5ZiG#バーチャルキャスト #virtualcast pic.twitter.com/Sm0fwrweV0
— MIRO (@MobileHackerz) June 28, 2019
■ドローン、VRの世界 ―リベンジ―
続いて、水見昌人氏が登壇。「ドローン、VRの世界 ―リベンジ―」と名付けられたセッションが行われた。タイトルにリベンジと付けられているが、どうやら前回は時間切れで終わってしまったため、その意味が込められているようだ。
現在はプリズムーンエンタテイメントというレコード会社の代表取締役を務めている水見だが、以前はソニー・ミュージックエンタテインメントで映像音楽の制作などを行っていた。SME発のインターネットライブや世界初の4Kマルチ収録、世界初のVRミュージックビデオ制作など、ソニーとは数多くのプロジェクトを手がけてきている。
VR作品では、2001年にPS2専用ソフトの『モーニング娘。スペースヴィーナス』を制作している。こちらは、コントローラーを使い、インタラクティブに楽しめるという作品である。その中で360度動画が収録されており、VR動画として最近話題になっているという。
このモーニング娘。の作品を見て、エイベックスから連絡があり作られたのが、同じくPS2専用ソフトの『浜崎あゆみ A VISUAL MIX』である。こちらは、ステージの上に360度カメラを2台設置し、インタラクティブに様々な映像が操作できるようになっていた。
同様に『プレイステーションミュージック』としてPS2専用ソフトとして、浜田省吾の『OVER THE MONOCHROME RAINBOW featuring SHOGO HAMADA』やZONEの『WONDER ZONE』という作品もリリースされている。また、アーティスト以外でも、同じくPS2専用ソフトでイエローキャブの作品も制作している。
『プレイステーションミュージック』自体は、SONY/SME/SCEと、ソニーグループ全体のビジネスとして展開されたもので、セールス的にも大成功だったという。しかし技術が先駆しすぎたため、他社の追随がなくプロジェクトは終了してしまっている。
時は流れて、2016年のVR元年。「STFE 2016 Award」の最優秀賞を取ったのが『没入空間インタラクション』というコンテンツだ。こちらは、ドーム型の半休筐体に8Kのプロジェクター2台を使用して映像を投影した作品だ。その企画制作協力として、ドローンとVRによる空中遊泳や空間旅行、プルクール、トレイルラン、ロードレース、侍と盾のショートムービーなどを作成している。
こちらは、映画やCMの撮影などに使われている大型のドローンにスタビライザーを搭載し、360度VRカメラで撮影している。しかし、スクリーンに映し出すのは半休であるため、背面は不要だ。そのとき、ちょうどグーグルが2018年6月22日にVR動画の新しいフォーマットである「VR180」を発表した。そこで、『DJI INSPIRE 2』とマイクロフォーサーズの超広角レンズを取り付けて制作するという企画を進めていたが、実現にはいたらなかった。
現在は、お手軽ドローン『PHANTOM』に360度VR撮影可能なカメラ『Insta360』を取り付けて撮影を行っている。
https://www.youtube.com/watch?v=A8Cxal6nHE8
ドローンの未来としては、現状は撮影や農薬散布、測量、壁面/鉄塔/ソーラーパネル調査、ドローンレース、水中ドローンなどに使われているが、今後は物流や移動手段に使われていくだろうと、水見氏は考えている。
アマゾンでは、「Amazon Prime Air」として、日本でも資材運搬用に開発されたドローンで検証が行われている。
https://www.youtube.com/watch?v=98BIu9dpwHU
また、交通移動手段としてドローンを使った自動タクシーがドバイでは登場している。
次世代VRとして、バンダイナムコエンターテインメントとバンダイナムコスタジオが、マイクロフトの『HoloLens』を使い、『パックマン』を自分の体を使って遊べるアトラクション『PAC IN TOWN』を開発している。こちらはセグウェイのように体重移動できるホンダの『UNI-CUB』にまたがって、ゲームを遊ぶようになっている。
この『HoloLens』シースルー型のデバイスで、実際の世界にCGを合成して見ることができるデバイスだが、その最新モデルが『HoloLens 2』が今年の2月25日に発表され、年内にも発売が開始される予定だ。現在水見氏が代表を務めるプリズムーンエンタテイメント社では、ポケット・クエリーズとVR/MR企画を進行中である。
また、NHKエンタープライズと資生堂が共同で、香りと立体音響だけで構築した視覚を使わないVR『Caico -Invisible VR-』というものを開発している。
2012年に、『PlayStation VR』の前身となる『V Project』というものがあった。これは「まさにそこにいる体験」を実現するポイントである、広視野角で高画質を実現したものだったそうだ。
水見氏が提案する次世代VRは、5GとPS5、そして次世代高画質ヘッドマウントディスプレイであるという。現在の『PlayStation VR』の画質には不満があるそうだ。また、リアルレンダリングや生配信、有料配信マネタイズなども含めて、ソニーグループの力を集結して、新たなVR元年を作っていきたいそうだ。
具体的には、世界中のコンサートやフェスを複数台の360度VRカメラで生配信し、自由にアングルを切り替えて高画質ヘッドマウントディスプレイで臨場感のある体験ができるようにするほか、アイドルイベントやスポーツなどでも利用できるという。
水見氏がソニーと仕事をしている理由は、「モルモット精神」だという。ソニーの人と話をすると、必ず「アトムを作る」「スター・ウォーズのレイア姫のホログラムを投影する」といった話が出るそうだ。これらが本当に実現したら、面白いコンテンツを作ることができるというわけである。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。