03.18
【World MR News】熟練者の技術継承やトレーニングにVRを活用!――「第28回 3D&バーチャル リアリティ展」レポートその①
リード エグジビション ジャパンは、2月26日から28日の3日間、千葉県の幕張メッセで世界最大級のものづくり専門展「日本 ものづくり ワールド 2020」が開催された。本稿ではその中から、「第28回 3D&バーチャル リアリティ展」に出展されていたものを中心にピックアップしてご紹介していく。
■「ポケット・クエリーズ」ブース
ポケット・クエリーズのブースには、オーダーメイドで安価にVRトレーニングが制作できるパッケージソフトの『iVoRi 360』が出展されていた。工場や建設現場などの現場作業での技術継承トレーニングとして利用出来るほか、安全教育に習熟度テストにも対応。さらには、展示会やショールームといったバーチャル展示にも利用することができる。
こちらのパッケージを使うことで、ヘッドマウントディスプレイと導入サポート付きで合計35万円からという低価格で、独自のカスタムVRトレーニングを導入が可能となる。
また、同ブースでは東京電力ホールディングスと共同開発しているMRソリューション『QuantuMR(クァンタムアール)』のユーザーインターフェイスを、話題のMRグラス『HoloLens 2』で体験することもできた。ちなみにこの『QuantuMR』とは、MR技術を発電所や変電所のメンテナス業務の最適化と効率化を図り、技術後継などに活用できるソリューションである。
■「クリーク・アンド・リバー社」ブース
クリーク・アンド・リバー社のブースでは、同社の新たなソリューションである『ファストVR』が出展されていた。こちらは、自社内で教育用のVRコンテンツを制作して、短納期かつ低コストで360度撮影から編集、そして活用までを実現するというもの。
基本パッケージに、VRゴーグルの『IDEALENS K4』が組み込まれており、こちらに制作したインタラクティブVR教材をインストールすることで、あとはタブレットを使い複数のVRゴーグルを一括操作することができるというのが特徴だ。
そのほか同ブースでは、VRの特徴を活かした学習効果が高いトレーニングが行える「VR教育・研修」や、現場に360度カメラを設置してライブ中継で360VR映像を視聴できるVR Japanのソリューション『遠隔監視VR』なども展示されていた。
■「アーカイブティップス」ブース
アーカイブティップスのブースでは、映画やゲームのほか、最近はVTuberなどでも注目されるようになってきたモーションキャプチャーシステム『Qualisys』のデモ展示が行われていた。今回の会場内には22台のカメラが設置されていたが、実際は3台ほどあればトラッキングは行える。
カメラは2台展示されていたが、これはカメラの画素数などと同じで精度の違いによりハイエンドなものと通常タイプという形に分けられている。ちなみに人の動きをトラッキングする場合、アクターの人数自体に制限はないが、重なってしまうと問題が起きるためある程度広いスペースは必要だという。
カメラ1台100万円で基本ソフトが200万円ほどするということなので、最低500万円ほど必要になるそうだ。
■「シリコンスタジオ」ブース
シリコンスタジオのブースでは、リアルタイムレンダリングエンジンの「Mizuchi」を使った活用事例の紹介と、オートモーティブ向けの展示が行われていた。中でも目を引いたのが『Avatar Generator』だ。こちらは、人の顔をCGで作ることができるというもので、年齢や顔の表情など、無数のパラメーターで設定していくことができる。
こうして作られた顔のCGは、画像として提供したりツールとして提供されたりということを想定している。様々な顔が作れるため、AIのディープラーニングの教師用データとして、自動車メーカーのOEM業者などでも使われている。
展示されていたのは顔だけだったが、機能を拡張することで体全体や男女のバージョンなども設定できるようにする予定だ。ドライブモニターの外側を映すものはあるが、社内の様子を再現し、眠そうになっているときなどのAIで判別できるように教師用データとして利用するといった感じである。
もうひとつユニークな展示が行われていたのが、『煌めきディスプレイ』である。蝶の花粉のように、自然界では見る角度によって色や輝度の光が反射や散乱しており、キラキラしてみるものがある。写真ではわかりにくいが、こうした物は通常のディスプレイで再現するのは難しい。そこで、高解像度と交戦密度で再現したのが、こちらのディスプレイというわけである。
■「ディプロス」ブース
3Dスキャナーの販売と、3DデータをVRですぐに可視化できる『MeshroomVR』というソフトウェアを扱っているディプロス。同社のブースでは、3D空間上でデザインや駆動、発光など総合的な演出の確認が行える『デジタルモック』が出展されていた。
展示されていたのはパチンコ台をデジタルで再現したものだが、通常こうしたものを作るときは実機でモックを作ることになる。当然ながら時間もコストも掛かり、変更が発生したときに巻き戻しに時間がかかる。しかし、『デジタルモック』を活用することであらかじめ完成したイメージを確認してから実際の設計に取りかかることができるというのがこちらの特徴だ。
また、3Dスキャナーを使ってデータを取り込む体験も行えるようになっていた。こちらは固定式のスキャナーで靴のような小さなものを取り込めるほか、やや大きなサイズの物はハンディタイプのスキャナーでデータを取り込み、3Dデータを制作することができるというものだ。
■「テイ・アイ・エス」ブース
テイ・アイ・エスのブースでは、VR空間上で産業ロボットの動作検討ができるソリューションの『V-Eye(バーチャル.アイ)』が出展されていた。元々同社では、設備設計や製造を行っているメーカーだが、完成させる前にイメージを掴むために利用するほか、あるいはロボットの動きを直感的に分かりやすくするために、こうしたソリューションが使われている。
例えば施設にロボットを置いたときの危険性なども実際に設置する前に確認できるほか、操作性の良さなどを検討することができるというのが特徴だ。
■「ジャパンディスプレイ」ブース
今回出展されている中でも、ひときわ目立っていたのがジャパンディスプレイのブースだ。こちらは、複数人がバーチャルな同一空間内を動き回れる多人数参加型のフリーローム型VRのデモとして、銃を使って標的を撃つゲームが体験できるようになっていた。
通常はこうしたゲーム用途というよりも、地震などの天災やテロといった特殊な状況をVRで再現することで、クォリティの高い訓練が行えるということを目的としたソリューションである。
■「きもと」ブース
デジタルツインを目標に、計測や3次元化とVR/ARコンテンツの制作をおこなっているきもと。今回の出展では、同社が提供しているこうしたサービスのアピールが行われていた。
デジタルツインといえば、現実宇空間をバーチャル世界にも再現するというものだが、実際には3次元のデータすら持っていないところが多い。そこで、同社では建築業界などを中心に3次元モデル作成なども行っているそうだ。
■イベント概要
イベント名:日本ものづくりワールド2020
会期:2020年2月26日(水)~28日(金)
会場:幕張メッセ 11ホール
主催:リード エグジビション ジャパン
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。