2020
02.26

【World MR News】熱源を視覚化して異常を発見する『サーモMR』も展示! 関電工の「2019年度技術開発・改善事例報告会」をレポート

World MR News

関電工は、2月3日に東京・千代田区の東京商工会議所で「2019年度技術開発・改善事例報告会」を開催した。この報告会は、「たしかな技術で未来を創る、支える」をテーマに、ITを使った測定の自動化や作業員の負荷を軽減する様々な技術など、同社の技術開発や改善事例を紹介するという内容のイベントだ。

本稿ではその中から、展示会場で出展されていたVRやMR、IoT関連のものをピックアップしてご紹介していく。

関電工の経営ビジョンは「社会を支える“100年企業へ”」だ。それを実現するための施策のひとつが事業活動を支える技術開発である。同社のコアとなる施工技術に新たな考えや技術を加え、顧客のニーズに応えるものや職場で活用できる技術の開発が行われている。

その一環として先進技術の活用による施工の次世代化としてVRやMR技術の活用研究が行われている。今回は報告会と共に、会場内に実際にこうした成果品の展示も行われていた。

『HoloLens』を活用して現場の異常箇所を発見するシステム『サーモMR』

今回展示されていたもののなかで、特に目を引いたのがマイクロソフトのMixed Realityデバイスである『HoloLens』を活用した異常過熱発見システムの『サーモMR』だ。

こちらは、ポケット・クエリーズと共同開発し特許申請も行ったソリューションで、『HoloLens』のほか、頭に被ったヘルメットに赤外線カメラと画像制御部を搭載。MRデバイス越しに見た物体から発せられる赤外線を検知して熱画像を生成。それをサーモグラフとしてわかりやすく見えるようにしたものだ。

現場の作業は、時には危険を伴う場所で行うこともある。また、必ずしも測定の対象物は目で確認できるものばかりではない。この『サーモMR』は物体に重ねて表示するような形で、温度分布を視認することができるようになっているため、専門的な知識が乏しくても、ある程度直感的に異常箇所が把握できるようになっている。

▲サーモグラフィ自体は見慣れているため、温度の違いが非常にわかりやすい。

『HoloLens』自体はPCなどに接続することなく、単体で使うことができるデバイスだ。そのため、作業員は両手を自由に使えるほか、移動の制限もないため安全に作業を行うことができるというのも特徴のひとつである。

また、表示する温度の範囲の設定や警告音で位置を通知できるほか、内蔵カメラを使って写真付きで報告書を作成するという、作業を大幅に効率化する機能も用意されている。

▲『HoloLens』の上に付けられているのが赤外線カメラだ。後頭部のほうは画像制御部である。

VRを活用し6つの労働災害を体験

実際の作業現場には、様々な危険要素がある。特に高所での作業では、墜落などの危険性も常にはらんでいる。しかし、こうしたことを文章や映像だけで学ぶことは意外と難しい。そこで最近注目を集めているのが、VRのトレーニングや教育への応用だ。

今回の展示会では、VRを活用した安全体感装置の展示も行われていた。こちらで体験出来たのは、「脚立からの墜落」「梯子からの墜落」「電柱からの墜落」「開口部からの墜落」「回路確認時の感電」「相間バリア取付時の感電」の6種類だ。

これらは、労働災害の特徴をピックアップしたもので、とりわけ重大な事故に繋がりがちな墜落災害が4件、感電災害が2件、VRで体験できるようにしている。

このVRを使ったシステムのメリットとしては、特定の現場に行く必要がなく、省スペースでこうした災害を体験できるというところである。また、必要な機材もコンパクトであるため、運搬しやすく、本部や支店、営業所などで体感研修を実施することができる。

風力発電の施設をVRで体験

同社では、環境に優しい再生可能エネルギーとして風力発電所を国内の複数個所に設置している。さすがに風力発電そのものは展示できないため、こちらではVRを活用してその様子が見られるようになっていた。

展示ブースでは小型の模型も置かれていたが、VRで現場を見ることでそのスケールの大きさなども体感することができるようになっていた。ちょっとユニークだったのは、VRを体験している人が見ている映像が、ディスプレイに表示され何を見ているかわかるようになっていたところだ。

どんな映像が体験できるのかあらかじめわかるようになっており、一緒に見ている人もコンテンツの内容が楽しめるというわけである。

装着するだけで高圧交流電源への接近を検知できるIoTデバイス『接近センサ(高圧用)』

ヘルメットに取り付けておくことで、センサ本体が電源に接近していない状態でも、体の一部が電源に接近することで検知してくれる『接近センサ(高圧用)』の展示も行われていた。

取り付ける場所はヘルメットの後部であるため、ヘッドランプなどを併用するときでも邪魔にならないのが特徴である。こうしたデバイスは小型であるため、装着し忘れなどのミスをしてしまいがちだ。しかし、これなら毎回装着する手間もなく利用することができる。

ロボットが現場のお手伝いをしてくれる全自動測定記録システム『BLuE駈(kakeru)』

竣工前には膨大な測定作業と、それに伴う記録業務などが発生する。従来までは測定したものを読み上げ、それを聞き取りながら記録し、さらに事務所に戻ってから清書するといった作業が発生していた。そうした記録業務の省力化と品質向上のために作られた測定記録支援システムが『BLuE』だ。

その応用システムとして、移動体と組み合わせた自動測定システムの展示が行われていた。こちらのロボットは、CAD図面上から自由自在に移動体をコントロールすることができる。ルートの設定はもちろんのこと、座標の指定や微調整なども行える。

また、測定結果や現在位置もリアルタイムにCAD図面上に反映させることが可能だ。展示されていた自動搬送装置以外にも、ドローンなどにも取り付けて測定することもできる。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。