10.20
【World MR News】マイクロソフトが考えるSociety 5.0を実現するための「Intelligent Edge」と「Intelligent Cloud」――「CEATEC 2019」レポートその①
一般社団法人電子情報技術産業協会、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の3団体で構成するCEATEC 実施協議会は、10月15日から18日の4日間、千葉・幕張メッセでSociety 5.0の総合展「CEATEC 2019」を開催した。こちらでは、その中から、初日に行われたマイクロソフトによるセッション「Society 5.0を実現するIntelligent Edge Intelligent Cloud」を中心にレポートする。
今年で20回目の開催となる「CEATEC」。そのオープニングセレモニーで、CEATEC実施協議会 会長の遠藤信博氏は「この20年の間に、家電の見本市からCPS、IoTへと大きく変化してきた。20回を機に名称をCEATEC JAPANからCEATECにあらため、グローバルに出展を集う場と目指していく」と、意気込みを語っていた。
データが増えるほどスマートになりSociety 5.0が実現できる
オープンニングセレモニーに続き、この日の10時半より行われたのがマイクロソフトの講演「Society 5.0を実現するIntelligent Edge Intelligent Cloud」だ。Microsoft Corporation IoT and Mixed Reality Sales Vice PresidentのRodney Clark氏が登壇し、セッションがスタートした。
JTB、ナビタイムジャパン、日本マイクロソフトが、「MIKO」というAIベースのチャットボットを開発した。賢いAIに基づいたものになっており、旅行や外食について様々な情報を教えてくれる。JTBの豊富なリソースを活用して質問に回答。ナビタイムの持つ電車やバスといったインフラの情報も活用。撮った写真が何かリアルタイムにわかるようにもなっている。
ヘルスケアでは、様々なAIがクラウドにあり加速していく。医療に関するデータを収集して、クラウドで処理。それらを患者のために活用することで、医療をさらに精密にしていくことができるのだ。
同社はアステラス製薬とも連携し、Mixed Realityを活用した医師と患者のコミュニケーションを支援するソリューションを開発している。『HoloLens』とAIを使い、医師はリアルタイムで患者に関する画像などの情報を見ることができ、説明することができるのだ。医療に関する意志決定を支援してくれ、有効なツールとなっている。
クラウドでは、これらをサポートし分析やパーソナル化して、視覚的にそれらを提示することができる。たとえば、大阪にいる医師が東京にいる医師と連携して、骨粗鬆症の診断を行っていくというようなことも可能になる。
こうしたソリューションで起きていることは、様々な情報が収集されデジタルフィードバックループが生まれているということだ。これは継続的な価値を生み出すものでもある。デジタルフィードバックでは顧客にも力が与えられ、オペレーションも最適化される。意志決定のスピードも上がり、それにより製品も変わってくる。
すべてのデータはデジタルフィードバックに入力される。情報の量が増えていくほど、全体の情報がよりスマートになり、Society 5.0を実現することができるのである。
大成建設のAI・IoTを活用した取り組み
大成建設 営業本部 ソリューション営業本部 常務本部長の岩田丈氏からは、同社がAI・IoTを使った取り組みについての紹介が行われた。同社では、今年のCEATECのテーマであるSociety 5.0を実現するには、業種や業界の垣根を超えた共存が必要だと考えている。
あらゆるサービスでデータを活用し、サービスが繋がる世界が実現していく中で、建設業界も例外ではないという。
当社では、建物引き渡し後に施設運用や保守事業に着目。AI・IoTを活用して、不動産価値の維持や利用者満足度の最大化、建物保守業務の効率化を測るために、今年の7月に専門組織を起ち上げている。
Windows for IoTはより簡単にして導入しやすい
続いて、Microsoft Corporation Partner Program ManagementのIan LeGrow氏が登壇。Windows for IoTについての紹介が行われた。
デジタルトランスフォーメーションを交差点のシステムを例に例えると、信号機といったシンプルなモノから道路沿いなどのセンサー、それらがクラウドと繋がることで街が大きく変わってきた。しかし、それらのスタートとなっているのは、カメラやセンサーといったEdgeのデバイスだ。
Intelligent Edgeは、大きな変化が出てきている。データがクラウドに上がっていく部分は変わらないが、クラウドがインサイトを引き出してインテリジェンスに返すソフトが、AIモデルの中に入っている。そこで使われているのが、コンテナというテクノロジーだ。これにより、クラウドとEdgeの間を簡単に共有することができるようになった。
同社が目指しているのは、できるだけ簡単にするということだ。そして、その保全も簡単に行うことができるのである。
予測精度を上げる3つのキーはIoT、AI、クラウド
ゲストとしてパナソニック コネクティッドソリューションズ社 副社長の坂本寛明氏が登壇。「現場プロセスイノベーション」の事業展開加速に向けたマイクロソフトとの取り組みについて紹介が行われた。同社には7つの事業があるが、その中でBtoBを扱っているのがコネクテッドソリューション社だ。
顧客の現場それぞれで、作る・運ぶ・売る・点検するといった業務がある。そこでノートPCなどのEdgeデバイスを提供し、プロセス改善をしている。これからもEdgeデバイスを磨いていくが、それだけでは足りないと坂本氏はいう。それは、世の中が変わってきており、顧客の課題も多様化してきているからだ。
坂本氏は、自身がこれまでの30年、予測に基づいて行動をしている。その予測が難しく、知識・経験・熱意に基づいて計画しているが外れてしまう。そのため様々なロスが発生し、本来予測が上がっていればやらなくてもいい業務をやらなければいけなくなっていた。
Society 5.0については、BtoB事業に限っていうとこれらが目指す情報化社会の次の社会は、「予測精度を上げる」ということに尽きると坂本氏は語る。
予測精度を上げるのに3つのキーがある。それが、IoT、AI、クラウドだ。Edgeデバイスを使ってIoTでモノとヒトを繋げる。必要なデータをクレンジングしてクラウドに上げる。そこから抽出されるデータを分析や提案し、予測精度を上げていくということを目指していくと土砂では考えている。
新しいデジタル経済が2030年には百数十兆もの経済価値を生み出す
会社と顧客の間に入って接点で仕事をしている人は、全世界に20億人いる。これは全世界の労働者のうち、もっとも多い人たちでもある。様々な産業、ホスピタリティ、小売り、医療の業界では、その他の職種の4倍の労働者がいる。
そうした人たちの77パーセントには、必要なテクノロジーが与えられていないため生産性があがらないという状況だ。これは大企業だけの問題ではなく、中小企業ではさらに大きな問題となっている。
写真を見たときに、それが何に見えるか。波止場か、水の先で止まってしまうと捉えるか。あるいは橋と捉えるか。橋を建設して、向こう側に到達しようとしている意志を表しているのか。新しいテクノロジーを作っていくには、異なる考え方をしていく必要があるのだ。
マイクロソフトでは、顧客、消費者、市民を対象に、新しいビジネスモデルを構築するときに、Society 5.0やデジタルトランスフォーメーション、IoTが何をもたらしているのか考えている。どういう結果が可能になるのか答えていく必要があるのだ。ビジネスモデルを変えることで新しい顧客を獲得できているか、新しいコスト構造が導入されているのかを考えていくのである。
日本には、1億2700万人の人口がいる。この新しいデジタル経済が2030年には百数十兆もの経済価値を生み出すことになるのだ。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。