2019
08.19

【World MR News】5Gが2035年までにもたらす経済効果予想は12.3兆ドル【Rakuten Optimism 2019】

World MR News

楽天は、7月31日から8月3日までの4日間、パシフィコ横浜で楽天グループとしては史上最大規模となるイベント「Rakuten Optimism 2019」を開催した。本稿ではその中から、クアルコムテクノロジーズ社 シニアバイスプレジデント兼4G/5G担当ジェネラルマネージャーのドゥルガ・マラーディ氏によるセッション「5Gのインパクト」の模様をレポートする。

▲ドゥルガ・マラーディ氏。

■5Gは最終的にIoTと繋がる必要がある

5Gでは、変わっていくものやこれから生まれてくる産業など、様々な異なる業界について考える必要がある。超高速で低レイテンシー、大きなネットワーク容量を確保するのは有益なことだ。セルラーコミュニケーションのなかでは、5Gについてふたつの特徴に注目しているとドゥルガ氏は語る。これはレイテンシーと信頼性だ。また、5Gは最終的にIoTと繋がる必要がある。4GではすでにIoTとの連携が始まっているが、それが5Gではより大きな規模になっていくため「Massive IoT」とも呼ばれている。

▲こちらが5Gで何を実現しようとしているか表した図だ。

5Gが2035年までの商品とサービスで経済にもたらす効果は、12.3兆ドルになると予想されている。この数字自体が重要なのではなく、トランスフォーメーションのテクノロジーであるということが重要なのだとドゥルガ氏は語る。

5Gで変化が起きる場所は、モバイルデバイスによるデータの使い方だ。新たなモバイルデバイスも登場する。もちろんノートPCやAR/VRなどもブロードバンドに接続されるようになる。それに加えて、企業向けのエンタープライズアプリケーションや産業アプリケーション、スマートシティなどワイヤレスの接続が全体的に広がっていく。

2019年は7つの地域で5Gが導入され、4Gのときよりも早くグローバル化が進んでいる。10年前は、2~3社が4Gをローンチしたが、帯域幅は限られていた。それが初年度からこれだけ多くの地域で実現しているのだ。

4Gでは実現せず5Gでできるものとはなんだろうか。5Gの特徴は、ピークのデータ速度だけではなく平均的にユーザーエクスペリエンスが改善するというところにある。5Gにはふたつのユースケースがある。ひとつは、今のユースケースだ。映画やファイルをダウンロードして楽しんだり、あるいはゲームをプレイしたりといったものも改善する。5Gのデバイスで繋げることで、ダウンロードのレイテンシーも20倍分の1ほどになるのだ。動画を観るときも、平均のデータ速度が高くない限りネイティブな映像を観ることができない。

ふたつ目のユースケースはモバイルコンピューティングだ。エンタープライズ、産業向けアプリケーション、FAなどが入ってくる。現在5Gに対応したデバイスは、75以上発売済または開発中だ。つまりデバイスのエコスステムはすでに整っているのである。

■5Gで固定無線ブロードバンドも促進

5Gのユースケースのひとつに、顧客構内設備(CPE)がある。現在、モバイルブロードバンドがない家庭が多数ある。そこに、固定無線ブロードバンドが設置できるようになれば大きな変化が現れる。ギガビットのスピードを家庭でも利用可能になるのだ。

どうすれば5GとWi-Fiが、お互いを補い合えるものになるのだろうか。5Gはテレビ会議やSkypeなどが、移動中でも簡単にできるようになる。また、5Gはセキュリティ性も高いのが特徴だ。本当に5Gが屋内でも有効なのかという実験も行われている。その結果、エリア内であれば5Gbpsの平均最高速度を出すことができた。このように屋内でも5Gの力を活用することができるのである。

デバイスでは、QualcommのSnapdragon 8cxを搭載した5G対応のPCが登場する。こちらは、高いパフォーマンスに加えて数日間持つと言われるバッテリー駆動時間性能を持つほか、いちいちWi-Fiのアクセスポイントなどを気にせず常時接続が可能になり、移動中にノートPCでクラウドのデータを活用できるようになるのだ。また、XRなどを活用することでコラボレーションも行える。こうしたものを実現するためにも、モバイルエッジコンピューティングは非常に重要だとドゥルガ氏はいう。

自動車メーカーの製造工場には、様々な産業用ロボットなどがあり、ヘッドマウントディスプレイを付けた作業員などがある。そこにある産業用ロボットは、必ずしも高速なネットワークは必要ではない。1ms未満のレイテンシーで99.9999パーセントの可用性が必要だ。

ヘッドマウントディスプレイは、10ms未満のレイテンシーで利用出来るほか、Massive IoTデバイスとしても活用することができる。

自動車分野では、カメラやセンサーなどから運連取の補助が必要なレベル3の自動運転への取り組みが進んでいる。そこでも無線ベースの通信が活用される。ひとつの車から他の車と通信することで、例えば視覚的に見えないところにいても接近していることがわかるようになる。また、子供が飛び出してきたときに周りに注意を促すという安全性を高めるためにも役立たせることができるようになるのだ。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。