2019
08.19

【World MR News】5Gの実現化でコンピューティングの将来はネットワークのエッジで起こる【Rakuten Optimism 2019】

World MR News

楽天は、7月31日から8月3日までの4日間、パシフィコ横浜で楽天グループとしては史上最大規模となるイベント「Rakuten Optimism 2019」を開催した。本稿ではその中から、インテル コーポレーション 最高経営責任者(CEO)のロバート・スワン氏と楽天株式会社 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏によるセッション「5Gの今と、未来の創造」の模様をレポートする。

▲写真左から、ロバート・スワン氏と三木谷浩史氏。

■5Gの登場でよりスマートなコンピューティングが行われるようになる

インテルはCPUの市場シェアで、90パーセントを占めるなど長年成功を収めてきた。しかし、それはこれ以上成長するのが難しいという意味でもあるとロバート氏はいう。そのため、同社のコア・コンピテンシーやコア・テクノロジーを使って新たなところに向かっていく必要あり、企業文化をシフトさせる必要があった。

イノベーションを大事にするというカルチャーを維持しつつ、市場は大きくなっている。これはCPUではなく、シリコン全体の市場がそうなっているのだ。そして、その市場の規模はインテルが誕生してから最大限にまで達しているという。

5Gに関しては、「重要な技術の変曲点に向かっている。コンピューターの性能は上がってきており、その中のひとつが5Gだ。次が人工知能(機械学習)。その次が自動化システムになる。5Gの一番のチャンスは、クラウド化したネットワークにある。5Gを使うことで、コンピューターの環境とネットワークの環境が統合されていく。その中で、コンピューターの演算能力はクラウドからネットワークに降りてきて、よりスマートなコンピューティングが行われるようになる」とロバート氏は語る。

楽天はインテルと提携することで、ネットワークの完全仮想化を実現している。これは業界を一変させるもので、多くの企業が不可能だと考えていたことでもある。完全に仮想化したネットワークを実現すると昨年発表したときにも、大手からは不可能だと言われた。しかしこれが実現したことで、よりコストを下げてユーザーにサービスを提供することができるようになった。

サービスを差別化しコストを下げることで、イノベーションは加速化するとロバート氏は考えている。インテルの核はコンピューティングカンパニーだ。そして、どこでそれが起こるのかというところを見ている。それはPCやデータセンター上だけではない。

「5Gが実現化することで、コンピューティングの将来はネットワークのエッジで起こるようになる。そのため、インテルもコンピューターのアーキテクチャーを、新しいスペースに展開している。5Gの持つ特徴である超高速で低遅延、そしてエッジでのコンピューティングが実現することで、イノベーションが起きるスピードも大きくなる。そして、新たな成長の波が出てくる。ネットワークをクラウド化し、コンピューティングがネットワークにシフトしていくことで、インテルにとっても大きなチャンスが訪れる」とロバート氏は語る。

■5GとAIで自動運転に革命が起きる

最近話題に上ることの多くなってきた自動運転だが、政府が発表した「官民ITS構想・ロードマップ」ではレベル0からレベル5までの6段階で、レベル分けが行われている。レベル4は、条件付きだがシステムがすべての運転を行うというもので、レベル5ではドライバーすら不要な完全な運転自動化となっている。

このレベル4とレベル5の実現を目指すには、ふたつの革命が必要だとロバート氏はいう。ひとつは、安全における革命だ。国家的に5Gのインフラを活用することで、レーテンシーの問題を改善することができる。そして、AIを使って交通をより安全なものにしていくことが重要なのである。これは5GとAIを使うことで実現可能なものだ。

もうひとつは、モビリティに関する革命だ。より効率的に時間とエネルギーを移動のために使うのではなく、別のものに使えるようにすることである。5Gは自動運転を実現する。これは安全に関する革命だけではなく、運転に使ってきた時間を他のことに使えるということで、大きな革命となるのだ。

イーロン・マスク氏は2021年には実現するといい、別の人はもっと時間が掛かるという。人混みが多いイメージのイスラエルで、レベル4の実験に参加したというロバート氏。常にハンドルに手を掛けていないと危ない都市だが、そんな場所であっても3~4年、保守的に考えると10年もあれば完全な自動運転を実現可能だと言われている。ロバート氏自身は、こうしたテクノロジーが普及する前に、ロボットタクシーのような存在が登場するのではないかと考えている。

■インテルはPC中心からデータ中心型の企業に変わろうとしている

インテルは、元々PC中心の企業だったが、それがデータ中心型に変わろうとしている。その理由は、より大きなデータを生成したいという飽くなき要求があるからだ。それにより、更に大きな計算能力が求められるようになるのである。

ストレージに対するデマンドも上がっており、ネットワークエッジにおいて大量のデータをさばく需要が高まってきている。AIは多くのデータを入力することで賢くなっていく。データが増えていけば、計算能力やストレージ、データを迅速に移動させることも重要となってくるのだ。インテルでは5G、AI、自動運転という必要不可欠なテクノロジーを担いで、これらを実現しようとしている。

ロボットタクシーならば、車両内に搭載したものだけで計算能力は事足りる。しかし、それをより大きく普及させていこうとすると、車両に実装するのは現実的ではない。また、クラウドにデータをアップロードして計算させるといったこともできない。

そこで、自動運転車ではクラウドにデータをアップロードするのではなく、5Gネットワークのエッジで計算を行うようにする。これにより、高い計算能力を車両に搭載する必要がなくなるのだ。1台あたりの計算能力のコストがどんどん安くなっていくことで、自動運転は普及していくのである。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。