2019
04.10

【World MR News】ささやきを感じる触感デバイスや『セカンドライフ』ライクなVRコンテンツも登場――「コンテンツ東京 2019」レポートその②

World MR News

4月3日から5日まで、東京ビッグサイトで開催された日本最大のコンテンツビジネス総合展「コンテンツ東京 2019」。本稿ではその中から、ソフトバンク、スペースラボ、MOAI設計、トビー・テクノロジー、MARK.SPACE JAPAN、バルスのブースの模様をレポートする。

■「ソフトバンク」ブース

ソフトバンクのブースでは、同社のオープンイノベーション「SoftBank Innovation Program」が参考出展されていた。VRでは、SALIN、Oben、wrnchの3社がパートナーとして参加。VR空間内で遠隔地にいる友人と一緒にスポーツなどのVRコンテンツの鑑賞やコミュニケーションが行える「本人のアバターを利用したVRコミュニケーション」が展示されていた。

こちらは、ただのVRコミュニケーションツールと差別化を図るために、アバターをスマホで撮影してリアルにするほか、音声と連動してリップシンクで口元も動かせるようにしている。また、その様子を外からスマートフォンで録画しておき、感動の瞬間を残しておくこともできる。今のところはプロトタイプの段階で、まずはコンセプトとしてこうしたものが楽しんでもらえるのか検証していく予定だ。

また、スマートフォンだけでテレビ番組などを観戦しているときに、関連したARコンテンツが表示されるという技術も同時に出展されていた。スポーツ観戦なら選手の詳細情報を見られるほか、番組のシーンに応じた演出も楽しむことができる。

■「スペースラボ」ブース

スペースラボのブースでは、アリのように身体が1/1000に縮んでしまった世界をVRで体験できる『アリのままVR』が出展されていた。建築やインテリアのCGパースが本業の同社だが、そこで培ってきたリアルな寸法感と現実を切り取った再現力を体験できるのが特徴のコンテンツだ。

CGの制作だけではなく、マシンの販売も行っている同社だが、同ブース内では5つのエディションの中から、使用用途に合わせたマシンが選べるワークステーション『画竜点睛』も展示されていた。たとえば、VRなどを始めたいといったときに、様々な機器を購入したりセットアップをしたりと、煩わしいことが多い。しかし、この『画竜点睛』では、あらかじめ必要なセットアップが済んだ状態で納品されるため、すぐに使い始めることができるというのが特徴である。

こちらが『画竜点睛』のPC。CINEMA 4D専用機やMayaとの相性を重視したモデルなど、目的に合わせて選ぶことができる。

■「MOAI設計」ブース

VRに触覚を加えるアイテムを開発しているMOAI設計。同社のブースに出展されていたのは、『VR体感ウェア ストライク・ガジェット』だ。こちらは、「アイドルが歌うステージの床になりたい」というVRコンテンツの触覚表現を実現するために、約2年前に作られた装置である。擬似的にアイドルの足に踏まれる体験ができるというわけだが、ほかにも格闘ゲームのダメージや銃で撃たれたときの表現などに使えないか検討しているという。

いわゆる振動ではなく、空気圧で押し込むという仕組みになっている。振動は瞬間的に感じることができるが、慣れてしまうため長時間の刺激は苦手だ。しかし、こちらは圧迫に近いため長時間の刺激にも向いているのである。

このゴツイ見た目のデバイスが、『VR体感ウェア ストライク・ガジェット』だ。

そうした中で、バンダイナムコアクセラレータープログラムへの参加が決定し、いろいろと思案してもらった結果、『VR体感ウェア ストライク・ガジェット』のほうはオペレーションも大変で市場もニッチであるということから、「ささやきを表現する」という『Voiceture』というシステムを開発している。 

女性はVRゴーグルを付けることに抵抗がある人が多いが、こちらはヘッドホンを耳に当てる仕組みのものであるため、そうした課題も解決することができる。実際に体験してみると、ボイスと共に熱い吐息が耳元に感じられる仕組みになっており、なかなかユニークなデバイスであった。

今後は、公衆電話型のデバイスにして、テレフォンカードのようなものを入れると聴けるようにするといったことも予定されているそうだ。

■「トビー・テクノロジー」ブース

トビー・テクノロジーのブースでは、人の視線がどこを見ている正確にわかるアイトラッキングに関する展示が行われていた。

「アイトラッカー」は大きく分けて3つの種類があり、スクリーンの中でどこを見ているかがわかる据え置きタイプと現場などで使用できるウェアラブルタイプ、そしてVRやARだ。いずれも仕組みは同じで、角膜に赤外線で反射点を作り、瞳孔の中心の位置から視線を抽出している。

今回出展されていたウェアラブルアイトラッカーの『Tobii Pro グラス 2』は、人が行動するときに何を見ているかを正確に計測することができる。一見するとARグラスのように見えるが、情報を表示するためのデバイスというよりも情報を収集するためのデバイスといえるだろう。

こちらで集められたデータは、解析やビジュアリゼーションできるツールの『Tobii Proラボ』で利用することができる。

写真左がウェアラブルアイトラッカーの『Tobii Pro グラス 2』。

■「MARK.SPACE JAPAN」ブース

MARK.SPACE JAPANブースでは、VR世界に今住んでいる世界を移してしまおうという、壮大なプロジェクト『MARK.SPACE』が出展されていた。その昔『セカンドライフ』という仮想世界(メタバース)が流行したことがあったが、その進化版に近いイメージだという。

1空間に8×8の64平米のエリアがあり、上限30万ユニットまでオブジェクトを作ることができる。『セカンドライフ』と同様に不動産的な価値もあり、すでにバーチャル世界の土地の売買が行えるほか、そこから発生したお金を円やドルに換金することができる環境も整っているとのこと。

その中で、自分の家をデザインしたり企業が店舗を作りショッピングを楽しんだりすることもできる。現在はまだアバターは実装されていないが、アバターのような形でバーチャル世界に入り試着ができるほか、購入したアイテムは本物で自宅にも届くようになっている。

このように、リアルな世界とVR世界が連動したビジネスモデルになっているそうだ。また、教育機関向けに教室を作り、リアルタイムに授業が受けられる仕組みなども、今後提供される予定だ。

ショッピングではアバター用だけではなく本物も入手できる。

■「バルス」ブース

バルスのブースでは、ファン参加型の次世代ライブスペース『SPAWN(スポーン)』のデモが展示されていた。こちらは、モーションキャプチャーとインタラクティブ配信システムを使い、ライブの参加者とアーティストの一体感を実現したシステムである。今年の2月15日より池袋HUMAXシネマズでオープンしたほか、順次全国展開していく予定だ。

人気VTuber「銀河アリス」が等身大で踊るライブの映像も流されていた。

同社ではキャラクターのモデルを作って、動画の撮影から公開まで一貫して行う事業を提供している。そのほか、キャラクターだけをVRMなどで提供するなど、部分的な対応もしているそうだ。

同社所属の人気VTuberが描かれたクリアファイルも配布されていた。

■「コンテンツ東京 2019」開催概要

展示会名:コンテンツ東京 2019(全7展から構成)

会期:2019年4月3日(水)~5日(金)10~18時

会場:コンテンツ東京:東京ビッグサイト 西展示棟

AI・人工知能EXPO:東京ビッグサイト 青海展示棟

主催:リード エグジビション ジャパン株式会社

 

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。