2019
04.15

【World MR News】8つのユニークなアイデアが生まれたイベント「スマートグラスを使った革新的なビジネスを考えるアイデアソン」開催

World MR News

マイクロソフトの『HoloLens 2』をはじめ、様々な新製品が登場してきているスマートグラス。それをテーマにしたフューチャー主催のアイデアソン「スマートグラスを使った革新的なビジネスを考えるアイデアソン」が、3月21日に開催された。本稿では、その模様をお届けする。

祝日だったこの日。朝から17名がイベントに参加し、午前中は『M300』『AceReal』『HMT-1Z1』『RETTISA Display』『MOVERIO BT-300』『MOVERIO BT-35E』『Mirage Solo』『HoloLens』といった、AR/MRのスマートグラス体験会が行われ、その後個人で考えたアイデアの発表が行われた。

チーム分けの後、お昼を挟んでからチームでアイデアをブラッシュアップ。16時半から、チーム別にアイデアの発表が行われた。

■Smart GyoGyo Glass(チーム名:SGGG)

チーム「SGGG」は、スマートグラスと漁業を掛け合わせたビジネスを提案した。日本の海洋面積は世界6位である。世界の漁獲量が増加しているのだが、日本は恵まれた環境にあるにもかかわらず、漁獲量が減少しているという課題がある。養殖という手段もあるが、養殖に向いている魚と向いていない魚がある。 

また、誰がどれだけどの魚を捕ったのかという情報も共有されていない。そのため乱獲がおこり、水産資源の総量が減少する。その結果として、漁獲量が減り漁業が衰退してきているのだ。一次産業はIT化が進んでいない。漁業もIT化されていないため、生産性が低くなってしまうのである。

そこで同チームでは、スマートグラスを用いて漁業のこうした問題を解決したいと考えた。エンタメ業界などで幅広く利用されており、特に人が介入する現場での作業に向いているからだ。

機能については、資源の「見える化」を軸にしている。魚群探知機のように、スマートグラス越しに魚群の場所がわかるようになっている。場所を表示するだけではなく、漁をして良い場所かなども自動的に選定し、水産資源の減少を抑制する機能も用意する。また、その日の漁獲量や漁獲可能枠なども表示することで、乱獲を防ぐようにする。

■ARマッチングアプリ(チーム名:Team Trust)

チーム「Team Trust」が提案するのは、「ARマッチングアプリ」だ。婚活パーティを行う企業やそうした場が増えてきているが、うまくマッチングできない人がいる。そういう人たちは、そもそも何を話せばいいかわからなかったりする。そこで考えたのが、相手の情報をリアルタイムで条件抽出できるアプリである。 

たとえば、様々な趣味があるなか「巨人が好き」ということを検索し、「巨人が好き」といっていた人をスマートグラスのアプリで可視化する。すると会話の最初のステップが簡単になり、その後のコミュニケーションが円滑になっていくのである。

婚活の多くは事前アンケートに答えるが、自分が気になるワード以外の情報をカットして検索することでマッチングする。

仕組みとしては、スマートグラスが会話を取得し、そのデータをデータベースに保存していく。参加者がキーワードを検索し、スマートグラスで可視化するといった感じだ。

■WANT ONLY(チーム名:TORIATE)

一人チームの「TORIATE」が提案するのは、スマートグラスで見る物を変える「WANT ONLY」というサービスだ。見る人によって、目の前の怒っている人を猫にしたりVTuberなどにしたりする。

なぜこんなことを考えたかというと、人それぞれに価値観の違いがあり見たい物も異なるからだ。そこで、仕事も自分の好きなことに変えてしまえばいいと考えたという。こうしたことは、ARデバイスならばある程度可能である。

VRでは、子供が嫌いな注射をキャラクターがすることで恐怖を軽減するというサービスが存在する。これはごまかすというよりも、多様性と価値観をお互いに強要することなく社会で存続させることができるのではないかと思ったそうだ。

価値観の多様性が素晴らしいといったところで、それ自体を強制するのはナンセンスである。それならば、ARグラスをかけているそれぞれの人が、自分が見たいと思っているものを見た方が良い。そうしたサービスを、この「WANT ONLY」では提供していく。

ビジネスモデルとしては、アプリなどでのショッピングも含めてすべてのものにフィルタリングをし、使用者が不快に思わない程度、たとえば、買い物のときに1パーセントなどの徴収でサービス運用をまかなっていく。今後増えていくARデバイスのシェアが増えていくほど、サービスのシェアも増えていくと考えている。

■What the food looks Like -料理の次元を超えろ-(チーム名:チームCOACH)

「チームCOACH」が提案するのは、「What the food looks Like」というアプリだ。飲食店に入り、頼んだ食事がメニューの写真と全然違ったり、名前から料理がイメージできない、分量がわからないということはよくある話である。

これまでのメニュー表示に問題があるとして、それらを解決するためのサービスとなるのが、今回発表されたものだ。

機能としては、メニューを3Dで実寸大で表示し、サイズなどが見られるほか、アニメーションでも確認できるようにする。パーティなどで料理を並べたときの感じもチェックすることができる。店の位置情報とスマートグラスを連携し、店の看板に3Dモデルを出すほか、その店がどんなところなのかという情報も見られるようにする。また、スマートウォッチと連携して、健康管理も行えるようにする。

ビジネスモデルとしては、想定顧客はB2Bで料理人からチェーン店まで幅広い。料理のイメージができるほか、料理の盛り付け方などアルバイトの教育にも活用できる。収入源となるのは、利用費や契約費、機能追加、システムメンテナンスで、コストとしては固定費や変動費、サーバ費、人件費、開発費用などがかかることが想定されている。

■キモチみえるめがね(チーム名:キモチ開発)

チーム「キモチ開発」が発表したのは、「キモチみえるめがね」だ。情熱のあるふたりがタッグを組んで生まれた同チーム。「片付け遊び」と、「気持ち翻訳」というふたりが持ちよった企画の新規性を「気持ちを知る」ことを軸にかけ合わせている。

スマートグラスでは、手が自由に使えるほか、同じ空間を共有する、自分の顔が相手に見えるという優位性がある。それを活かした企画にもなっている。

子育て中のママが、子供が泣いているときに気持ちがわからないことで不安になってしまう。しかし、親も遠くに住んでおり頼りにする人がいない。そこで、「言葉がなくてもキモチが見えるお手伝い」として、子供の表情や音声、脳波をセンシングして解析し、おおまかなキモチを表示する。これにより、子供がどんな感情で泣いているのか理解できるというのが「気持ち翻訳」の機能だ。

コミュニケーションにおいて、顔が見えるというのは大きな要素だ。そのためにも、スマートグラスであることが重要なのだ。

子供が少し大きくなってくると、自分で何でもやりたがってくる。しかし、本能のままに行動するため、ちらかして片付けがでない。そこでスマートグラスをかけることで、モノのキモチが視覚的に見えるようにして、片付けを遊び化する。

これを大人が一緒に使って手本となることで、子供の片付けを習慣化していくことができるのだ。当然のことながら、スマートグラスであるため両手を自由に使って片付けることができる。こうしたことにより、誰かを助けるキモチやモノを大事にするキモチを育んでいくのである。

■ショパナビ(チーム名:ハッピーターン)

チーム「ハッピーターン」が提案するのは、「ショパナビ」というサービスだ。買い物に出かけたときに、買い忘れをするというのは良くあることだ。そうした「買っとけばよかった」という問題をスマートグラスでなくすというのが、同チームが発表したテーマである。

3年後にスマートグラスが普及した世界を前提にしており、IoT家電で自宅消耗品のストック管理とスマートグラスによる買い物支援を行う。あらかじめ、スマートフォンで欲しいものリストを作成しておく。欲しいものリストに登録した商品や、消耗品のストックがなくなっているものを、スマートグラスにアラートで表示。テレビ電話で通話しながら相談して、買う物を選択していく。

また、最適な買い物ルートの提示やスーパーのお得情報、歩いた距離の時間や消費カロリーなども表示できるようにする。商品を手に持った場合、消費カロリーや電子マネーの残高なども表示する。これにより、買い物忘れがなくなり健康管理もすることができるのだ。

■アラート・グラス(チーム名:ふくじんチーム)

チーム「ふくじんチーム」が考えたアイデアは「アラート・グラス」だ。外は危険がいっぱい。そこで、後ろにも目があればいいというところから、アイデアがスタートしている。

人の目は前を向いており、耳も基本的に前方からの音を捉えるのに向いている。そのため、左右や後ろから迫り来る危険に気が付きにくく、気が付いたときは遅すぎてしまう。そこで、「アラート・グラス」を装着することで、後ろや左右からの危険を表示できるほか、視覚障害者のために音でも知らせるようにしている。

国際社会の中で、自分で危険から身を守りたいという思いから、ストーカー、歩きたばこ、誘拐犯、痴漢などの被害を事前に防ぎたいと考えている。スリなどにあったときに、カメラで録画した情報を事件解決に役立たせたることもできる。

また、防災情報とも連携するほか、感染症の防止、体調が悪くて倒れたときに駆けつけてくれるというサービスも考えている。さらにたとえば、スズメバチに襲われたときに、虫が嫌がる超音波などを発して自動で避けるということも考えているそうだ。

■スタイリングアプリ(チーム名:コーヒー)

チーム「コーヒー」が提案するのは、「スタイリングアプリ」だ。仕事や学校の準備で忙しく、朝は思っている以上に時間が足りない。特に女性は、化粧などもあり、時間が掛かってしまう。そこで、「スタイリングアプリ」を使って服選びの時短を図るというのがコンセプトだ。

ユーザーのサイズをアプリ内で取り込み、好みの雑紙のデータなども登録することで、服選びを提案してくれる。こうした情報をビッグデータ化することで、ユーザーのニーズが把握できるようになる。また、あまり着ないような服は減っていくため、一般層と洋服メーカーの間にあるギャップも減らせるというのがメリットだ。

アプリ内のユーザーデータに好みの服を保存しておくと、ある程度ユーザーの好みが特定され、スタイルが提示されていくようになる。スマートグラスを掛けた状態でクローゼットの中を見ていくことで、クローゼットの中身を概ね管理できるようになる。

これにより、ダブり購入が減らせるようになる。また、自分が持っていないタイプのセール品をアプリがおすすめしてくれることで、購買意欲の刺激にもなるのだ。

現在雑紙の売り上げは減ってきており、そうした出版社の経営改善の手助けとして、ユーザーのビッグデータを提供する。ユーザーがレビューを数回書き込むことで、スタイリストからアドバイスをもらえるなどの特典を用意することで、ディープなファン層を増やしていく。そうした施策からアクティブユーザーを獲得していく。

これにより、洋服メーカーが一般層のニーズにあった商品を提供できるようになり、アプリの信頼性も上がっていく。また、ユーザー自身の口コミから新規ユーザーの獲得にも繋がっていくといった感じだ。

優勝は「キモチ開発」チーム!

すべての発表終了後、参加者や関係者による投票が行われた。その結果、優勝を勝ち取ったのは「キモチみえるめがね」を発表したキモチ開発チームだった。同チームには、発売後に『Oculus Quest』が贈呈される。

本イベントを主催したフューチャーの執行役員 中元淳氏は「優勝チームは二つの別々のアイデアからスタートして一つに合体したチームだったので、最初はまとまっていないのではないかとドキドキしながら聞いていましたが、ちゃんと一つのアイデアにまとまっていましたね。『子どものキモチがわからずに困っている子育て中のお母さん』というペルソナがしっかり描かれ、困っている人が多そうで、ニーズがあるなと思いました。そのお母さんを助けるツールとして、対面で両手があく、スマートグラスである必然性もはっきり伝わってきました。プレゼンもよくできていて、最後に「自分のスライドを飛ばして終わりにしないで!」ともう1人のメンバが待ったをかけ、アイデアのコアなところを熱く語り始めた姿にも情熱を感じ、高く評価しました。全てのチームでみなさんが本気でアイデアを出し合い、ぶつかり合って化学反応が起こったことが感じられました。今後ますますスマートグラスの普及が進む中、みなさんのアイデアをぜひ世の中に広げていってもらえたらと思います」と講評をのべた。

フューチャー 執行役員 中元淳氏。

見事優勝したキモチ開発チームのメンバーは、「最初自分のアイデアが選ばれずどうしようか悩みましたが、勇気を持って情熱枠にエントリーし、かつ声を掛けてチームを作って楽しかったです」「違うプランからスタートしたふたりですが、ある時に噛み合った瞬間がありました。それが最終的にうまく伝えられたと思います」と、それぞれ感想を述べていた。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。