01.31
黒川文雄のEyes Wide Open VOL.30 「台北ゲームショウ2019に参加して思ったこと 前編」
台北ゲームショウ2019、略してTGS2019
1月25日から28日まで台湾台北(タイペイ)市の世界貿易センタービル1号館、3号館において台北ゲームショウ2019が開催されました。
厳密に言えば、24日には、ゲームビジネス面に特化した、いわば“BtoB”(Business to Business)のビジネス向け展示会が先行してスタートしていました。
日本でも、東京ゲームショウの初日は「ビジネスデー」として設定され、主には業界関係者向けの展示や商談の場になっていますが、これと同じものが台北ゲームショウにもあると思ってもらえればわかりやすいと思います。
アジア・インディーズゲームの登竜門的コンテスト
まず“BtoB”ですが、1月24・25日の2日間は、ゲームビジネス交流とゲーム版権取引のイベントです。
こちらの展示場はメインホールである1号館とは若干距離のある3号館での開催ですが、台湾、中国、香港、日本、韓国、アメリカ、フランス、ドイツ、ブラジル、タイ、マレーシア、イスラエル、インドネシア、フィリピン、シンガポール等のインディーズ開発者、VR、MRゲーム開発者、デベロッパー、IPライセンス、配信事業、広告代理店、決済プラットフォーム等関連企業、などの多くのビジネスパートナーの出展がありました。
なかでも、今回の“BtoB”ホールになかではインディーゲーム・ゾーンが活気に溢れ、日本からの参加者(開発者とパブリッシャー)は主催者発表によると過去最高数をマークしたとのことです。
ちなみに「INDIE GAME AWARD」は、今年で5回目を迎え、開幕初日24日に以下の9つの受賞作品が発表されました。
「INDIE GAME AWARD」受賞一覧
・最優秀オーディオ賞:『No Straight Roads』(マレーシア)
・最優秀イノベーション/最優秀インディゲーム/協賛特別賞:『RPGタイム!~ライトの伝説~』(日本)
・最優秀デザイン賞:『Gerritory』(台湾)
・最優秀VRゲーム賞:『Subnautica』(米国)
・最高のモバイルゲーム賞:『Behind the Screen』(台湾)
・最優秀ナレーション賞:『STAY』(スペイン)
・最優秀ビジュアルアート賞:『Iris.Fall』(中国)
注目すべきは、先日、筆者が参加した厦門国際動漫フェスティバルでも優秀賞を受賞した“DESK WORK”、日本語タイトル「RPGタイム!~ライトの伝説~」が受賞したことです。
このゲームは、子供の頃に自由に想像したRPGの世界を手書きのエンピツの世界観で再現したもので、まだ開発途中ですが、斬新な世界観に評価が集中したようです。(リリース2019年夏 予定/写真)
「RPGタイム!~ライトの伝説~」公式サイト http://deskworks.jp/
想定よりも少なかったVR系の展示物
さて、VRやMR系の出展物ですが、後述しますが“BtoC”(Business to Consumer:一般客向け)のほうにもいくつか出展がありました。
“BtoB”ブースのなかで目立った作品は、さきほどの「INDIE GAME AWARD」で、優秀VR賞を受賞したUnknown Worlds Entertainment社の『Subnautica』です。
『Subnautica』は海底探索をするVRゲームですが、とても素晴らしいVR世界観を演出していました。
おそらく私が今まで体験した水中系VRゲームのなかでも群を抜いた完成度だと思いました。喩えていうなれば、某大手テーマパークの水中探索アドベンチャーをVR化したら、こうなるのではないかという完成度です。
『Subnautica』のホームページ
なお、『Subnautica』の続編に位置する探索ゲーム『Below Zero』も1月31日にローンチする予定とのことですので、注目したいパブリッシャーです。
https://unknownworlds.com/subnautica/below-zero-on-xbox-playstation-when/
そして、日本からのVR出展もいくつかありましたが、VRのインタラクティブノベルゲームとして「夕鬼 零 Yuoni:ゼロ」を体験しました。まだ完成に至っていませんが、VR空間で小説を読むと言うコンセプトで開発が進んでいます。こちらもインディーズVRならでは視点での開発で、大掛かりな仕掛けでビックリさせる従来のものとは異なるVRの世界観を目指していると思われます。
「夕鬼 零 Yuoni:ゼロ」 公式ムービー
また、展示のなかで、興味深い展開を行っていたのは韓国のVrotein社で、VRアクトラクションをカラオケボックスのような形で提供するサービスです。同社では、スタンド型のVR体験筐体も開発しており、省スペースで、たくさんのコンテンツをライブラリーとしてストックし、VRアトラクション展開を行うもので、限られたスペースでのVRアトラクションの導入に適しています。
http://www.vrotein.co.kr/
次回は“BtoC”(Business to Consumer:一般客向け)の展開状況を御紹介する予定ですが、ちょうど先日発になった(1月25日発売)ばかりの「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」VR版の体験が人気を集めていました。
VR向けのコンテンツであり、コンテンツ自体がVR演出とのマッチングが良いことも、その理由に挙げられることでしょう。
この展示会で興味深いところは、展示ブースの中にハードやグッズの販売コーナーがあることです。
大手のパブリッシャーのほとんどが販売グッズのブースコーナーを設けており、体験して良かったら購入というストレートなマーケティングも台北ゲームショウならではの展開ではないでしょうか。
しかし、今回の台北ゲームショウを通して感じたことは、VRゲームの大きなブレイクスルーにまだ時間がかかるのではないかということでした。
もしかするとVRよりも先にMRなどの実用的な技術的な運用や実装が先行するかもしれません。引き続き市場を見て判断をしていきたいと思います。
(次回に続く)
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筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。