2019
01.08

【World MR News】3Dアバターが自由に扱える標準フォーマット「VRM」を世界に! 「VRMコンソーシアム」が2019年2月に設立

World MR News

IVR、エクシヴィ、S-court、DUO、ドワンゴ、バーチャルキャスト、ミラティブ、Wright Flyer Live Entertainment、クラスター、クリプトン・フューチャー・メディア、SHOWROOM、ピクシブ、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、12月20日(木)にVR向け・3Dアバターファイルフォーマット「VRM」についての合同発表会を開催。そこで、2019年2月に13社による共同事業体「VRMコンソーシアム」を設立することを発表した。

「VRM」とは、VRのための3Dアバター用フォーマットだ。VR時代を考慮して、視点設定やボーン設定などVR世界でアバターが使いやすくなるように定めたものである。2018年4月にドワンゴが提唱し、2018年12月現在では服すのさービスで対応・対応予定となっている。

「VRM」を提唱することになった経緯はふたつある。ひとつ目は、3Dアバターを使うサービスが2018年に入り拡大に増えてきたことがあげられる。アバターを作るサービスとアバターを使う各種サービスが拡がっていき、従来のフォーマットでは使用の違いなどがありそのまま使うことはできなかった。そこで、各プラットフォームに依存せずに、どこでも共通で3Dアバターが使える標準フォーマットを策定しようというところから始まっている。

バーチャルキャスト 取締役 COO 石井洋平氏。

ふたつ目は、バーチャルYouTuber(以下VTuber)の登場だ。2018年に入り、市場が拡大。わずか半年間で4500を超えるVTuberが誕生している。そこで出てきたのが、3Dアバターは「誰」なのか? といった問題だ。

これまでは3Dモデルは単なるデータにすぎなかったが、VTuberのようにキャラクターを演じることでひとりの人格になる。そのため、本人のみしか使えないという使用が限定される場合もあれば、クリエイターが自由に使って自由に演じてもらっていいという場合もある。そのため、3Dアバターの権利をどう使っていいのか多くの選択肢が出てきた。これらを3Dフォーマットの中で扱わなければいけないという課題が出てきたのだ。

これらを解決するために、3Dアバター向けファイルフォーマットとして提唱されたのが「VRM」である。

バーチャルキャストの石井洋平氏によると、この「VRM」は国内外で大きな反響を得ているという。そこで、今後「VRM」の策定と普及を目的とした団体となる一般社団法人VRM CONSORTIUMを、2019年2月を目標に設立する。現時点ではまだ設立ではなく準備会という段階であり、今後同団体に賛同する会員を募集していくとのこと。

また、発起人には先に挙げた13社に加えて、オブザーバーとして任天堂も参加している。

■VRMがもたらす未来を発起人13社のプロダクトで表現したイメージムービー

発起人13社が「VRM」に期待すること

■IVR

3Dアバターを手軽に作成できる『Vカツ』を提供しているIVR。「VRM」に期待することとしては、『Vカツ』で作ったアバターをVTuberや企業広報、バーチャルアナウンサー、VRタレントなど違うサービスやプラットフォームで活用できるようになるというところだという。VRはゲームなどエンターテイメントに特化しているイメージも強いが、教育や医療、芸術に文化など、幅広く浸透していくことでより広く3Dアバターが多くの活動を展開していくことに期待しているとのこと。

IVRの大鶴尚之氏

■エクシヴィ

2013年からVRライブなどVRのツールを開発してきたエクシヴィ。最近も『AniCastⓇ』というVRアニメ制作ツールの開発をおこなっている。2013年にVRヘッドマウントディスプレイの先駆けである『Oculus Rift DK1』が出てきたが、当時高価だったVRやモーションキャプチャといった技術がコモデティ化し現在のVTuberや3Dアバターが出てきたと、エクシヴィの近藤義仁氏はいう。SNSではアイコンにPNGやJPGといったフォーマットの画像が使われているが、VR時代のPNGやJPGに当たるものが「VRM」である。「このVRMは、日本発で世界を取れるデファクトスタンダードになれると思っています」(近藤氏)

GOROmanことエクシヴィの近藤義仁氏。

■S-court

自分好みの美少女キャラクターが作れるアプリ『カスタムキャスト』を展開している、S-court。2018年10月にリリースし、わずか11日間で累計100万ダウンロードという実績を達成している。「VRM」についても、市場を拡大させてユーザーがこれまでにない体験ができるように発信していくとのこと。

S-courtの川崎大和氏。

■DUO

大きく分けて3つの事業を展開しているDUO。ひとつ目はミライアカリなど主要IPの運営だ。ふたつ目は、そうしたVTuberたちのマネージメントを行う事務所のエンタムである。こちらでは、通常のタレント事務所と同じようなことをバーチャルでも行っている。そして3つ目は、バーチャルキャラクター専用のライブプラットフォーム『イリアム』の運営だ。

このようにIPを持ちながらマネージメントも行い、自社のプラットフォームも持っているのが強みである。同社の塚本大地氏は、「VRM」が浸透するとサービス間のキャラクターの移動が簡単になり、普通の人が好きな時に好きなプラットフォームで好きなことをするというのが一般化されると考えている。「バーチャルキャラクターの本質は、僕らが持っていたコンテンツや情報発信のスキルを最大化していく可能性がある」(塚本氏)

DUOの塚本大地氏。

■ドワンゴ

バーチャルキャストという新しい会社を設立し、VRに関連に関してはそちらに移譲している。しかし、VRに関してすべて手放したわけではなくドワンゴ独自でもVR事業を行っている。そうした中で、「VRM」という共通のプラットフォームがあることは、利便性などもあり日本発の新しいフォーマットを世界標準に持って行きたいと考えているとのこと。

ドワンゴの清水俊博氏。

■バーチャルキャスト

「VRM」の開発を進めてきたバーチャルキャスト。同社では、VR向けのアプリ『バーチャルキャスト』で、生放送ができるライブコミュニケーションサービスを展開している。ドワンゴで行ってきたARライブシステムなどもこちらで引き続き携わっており、「VRM」を下敷きにすることで様々な演者に参加してもらうことができるようになり、新たな演出の開発も進めている。

バーチャルキャストの岩城進之介氏。

■ミラティブ

PC不要で、スマホユーザーが実況を行えるサービス『ミラティブ』を提供している同社。ゲーム配信や雑談をするときに、『エモモ』というアバター機能を提供している。すでにゲーム会社とVRMの持ち込みも取り組んでいる。今後は『ミラティブ』で作成したキャラクターをVRM化し、他のプラットフォームに利用するほか、他からVRM形式で『ミラティブ』に取り込みスマホで楽しめるようにするということも検討中だ。

ミラティブの夏澄彦氏。

■Wright Flyer Live Entertainment

Wright Flyer Live Entertainmentは、VTuberのプロダクションのほかVTuber専用のライブエンタメプラットフォーム『REALITY』の運営も行っている。『REALITY』では、毎月60以上のオリジナル番組を提供していく予定だ。『REALITY Avatar』では、スマホ1台でアバターのカスタマイズから配信まで行うことができる。現在VRMで作られたアバターは取り込むことができるが、『REALITY Avatar』で作成したキャラクターを他製品で使えるようにするVRM対応も現在検討中だ。

Wright Flyer Live Entertainmentの渡邊国志氏。

■クラスター

「ひきこもりを加速する」というスローガンを抱えて活動しているクラスター。同社では、誰もがVR上でイベントやライブ、カンファレンスなどの活動が行えるVRアプリ『cluster』の運営を行っている。当初は箱形のアバターが使われていたが、2018年の4月より「VRM」にも対応。人気VTuber・輝夜月による初のバーチャル音楽ライブも開催している。

日本のみならず世界中から、数百万~数千万人が集う音楽ライブが行われる未来が必ず来ると信じており、それを実現させるためにも「VRM」のような統一フォーマットは不可欠だと考えているそうだ。

クラスターの加藤直人氏。

 

■クリプトン・フューチャー・メディア

クリエイター向けに、様々なサービスを提供しているクリプトン・フューチャー・メディア。その一環として、VTuberなどのバーチャルライブなども開催している。専門知識がなくても生演奏などが行えるコンサートシステム『R3』も独自開発しており、リアルタイムにキャラクターを操作しながら歌やパフォーマンスが行えるほか、オーケストラや合唱と共演もすることができるのが特徴だ。現在は自社で取り扱っているキャラクターのみに対応しているが、今後は「VRM」フォーマットが広まっていくことで、様々なキャラクターのライブやパフォーマンスも実現できると考えているそうだ。

クリプトン・フューチャー・メディアの熊谷友介氏。

■SHOWROOM

誰でも、無料で視聴・配信ができるライブ配信サービス『SHOWROOM』を提供しているSHOWROOM。誰でも簡単にスターになれるサービスではあるが、中には顔出しをしたくないという人もいる。そうしたハードルを少しでも下げるために、バーチャルで配信が行える『SHOWROOM V』というアプリをリリースしている。この『SHOWROOM V』では、「VRM」のモデルを使って配信を行うことが可能となっている。もちろんプリセットのモデルだけではなく他製品で作成したキャラクターを取り込むこともできる。現在制作中のサービスについても、「VRM」に随時対応していく予定とのこと。

SHOWROOMの近藤善洋氏。

■ピクシブ

イラストコミュニケーションサービスを運営しているピクシブ。同社では、イラストを作成しているクリエイター向けに3Dに挑戦してもらうために、『VRoid Studio』を提供している。イラストレーターが絵を描くように3Dが作れることをコンセプトにしており、手軽に3Dキャラクターが制作できるのが特徴だ。『VRoid Studio』で制作したキャラクターが動かしているところを見てもらうために、『VRoid Hub』というプラットフォームも開発。

『VRoid Hub』では、『VRoid Studio』で作ったキャラクターだけではなく、「VRM」でも投稿できるようになっている。『VRoid Hub』で作ったものを簡単に呼び出せるようにするための『VRoid SDK』も用意している。こうしたことが実現できるのも、統一された「VRM」というフォーマットがあってからこそであるため、そこに可能性を感じているそうだ。

ピクシブの清水智雄氏。

■ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン

今回の発表会にあわせて、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏からのビデオメッセージも公開された。

ゲームやインタラクティブアプリケーションで幅広く使われている『Unity』。今回「VRMコンソーシアム」に参加することで、洗練されたアバターをより自由に使える世界にするための手伝いをしていくという。「VRM」は3Dの標準フォーマットである「glTF2.0」をベースしているが、ユニティは「glTF2.0」の仕様策定団体である「Khronos Group」の正式メンバーでもある。そこで両者の橋渡しもしていきたいと考えているそうだ。

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏。

「VRMコンソーシアム」では、3DアバターやIPを扱っている事業者の会員を広く募集していく。ミッションは3つあり、統一規格の策定や新たに発生した権利の取扱、それらを広く世界標準に進めていくための標準化の推進だ。

会員制度は、正会員や賛助会員といった格付けをしていく予定だ。また、両会員とも年会費の徴収を検討している。

■VRMコンソーシアム 設立準備会

https://vrm-c.github.io/

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。