2018
09.10

【World MR News】2020年に向けた注力分野で3つのイノベーションを推進――日本マイクロソフトパートナービジネス記者発表会が開催

World MR News

日本マイクロソフトは、8月31日から開催されるカンファレンス「Japan Partner Conference 2018」に先駆けて、8月30日に日本マイクロソフトパートナービジネス記者発表会をザ・プリンス パークタワー東京で開催した。

Azureの売り上げは前年比100パーセントで成長

まずはグローバルなパートナービジネスを担当しているマイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデントOne Commercial Partner担当のGavriella Schuster氏が登壇した。

Gavriella Schuster氏。

日本と言えばふたつの言葉が浮かぶというSchuster氏。ひとつは「イノベーション」。もうひとつは「クォリティ」だ。日本はリーダーとして。イノベーションとクォリティを過去数十年間に渡り率いてきた。

マイクロソフトのミッションは、顧客が継続的に世界の市場におけるリーダーシップを維持することを、パートナーを通じて手伝っている。マイクロソフトはパートナーに依存し、ソリューションやテクノロジーを最終的な顧客に提供することで、顧客のイノベーションを促進している。

日本における製造プロセスはまさに、世界の最先端をいっている。カメラ、車、ゲーム機など、日本はこれまで唯一の国として、これほどのレベルのイノベーションやR&Dを率いてきた。

社会としても政府がイノベーションを促進している。「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる変革を通し、マイクロソフトは日本のパートナーとともに、そのイノベーションの伝統を維持する手伝いをしてきた。

世界中でAzureの売り上げは、前年比で100パーセント成長している。クラウドソリューションプロバイダーと呼ばれるパートナーは、225パーセントアップ。Office 365の売り上げは、36パーセント伸びている。Dynamics 365についても、52パーセント成長している。マイクロソフトにとってこれらの数字は、いかに日本のパートナーが健全であるかを示すものであるとSchuster氏は語った。

2019年は「デジタルトランスフォーメーション」の必要性が高まる

続いて、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 パートナー事業本部長 高橋美波氏より、日本での取り組みについて紹介が行われた。

高橋美波氏。

昨年1年間で市場に投入したソリューションの数は、800以上。その流れの中で、デジタルマーケティングやトランスメーションに関わるAIの領域などを日本の市場に投入している。

2019年は、日本に関しては労働人口の減少など「デジタルトランスフォーメーション」の必要性が注目を集めた。まずは「AI Infusion」。新しい価値をパートナーと共に届けていく、AIの民主化を行っている。

そして「Windows & SQL Server EOS」の最新化。市場には44万3000台のサーバがあり、それらをクラウドにあげることで新しい形をエンドユーザーに届けられると考えている。

2025年に向けた「SAP Migration」も、かなり対象の企業がいる。デバイスだけではなくサービスを付加することによって、「Surface as a Service」も展開している。同時に中堅・中小の市場、特にSMBやGovernmentなどのクラウドの占有率を高めることで、市場の活性化などを推進していく。

今回は、同社が2020年に向けた注力分野として推進する3つのイノベーション「インダストリーイノベーション」「ワークスタイルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」の領域で、新たなソリューションの発表が行われた。

匠の技を次世代に継承するための東芝IoTアーキテクチャ『SPINEX』

まずは、東芝デジタルソリューションズ株式会社との新しいソリューションの紹介が行われた。特に生産の現場などでIoTを活用することで、「デジタルトランスフォーメーション」を促していくというものだ。

東芝デジタルソリューションズ株式会社 取締役 東芝デジタル&コンサルティング株式会社 取締役社長の沖谷宣保氏。

東芝グループでは現在、「東芝Nextプラン」として事業変革を行っている。その中のひとつで、顧客と成果を一緒に競争していくデータ競争ビジネスを目指しており、それを加速するために東芝デジタル&コンサルティングを設立している。

日本の製造や流通などの産業界には、共通の課題として労働人口の減少があげられる。生産労働人口は、一部の統計によるとピーク時から3500万人減少の4900万人になるといわれている。

これまで日本の作業会を支えてきた技術などが、次世代に引き継ぐことが困難な時代になっていく。そこで、東芝グループではデータの力を駆使して、匠の人の技やノウハウを継承していくことを目指している。それを技術面で支えるのが、東芝IoTアーキテクチャ『SPINEX(スパインエックス)』である。

東芝グループは、創業以来140年以上、ものづくりにこだわってビジネスを展開してきた。様々な現場の知見がノウハウがとして貯められている。昨今AIやIoTという言葉をよく耳にするが、それらは各領域で使われてきた。そうしたところで、装置を監視、異常を検知、制御などの仕組などに取り入れられてきているのだ。そして、それらがソフトウェアとして知見が貯められている。

こうしたデータ化した社会において、同社では『SPINEX』の元に、数々のソフトウェアやユースケースを蓄積し有効活用している。また、コンサルティングによる事業創造から、クラウド、データ分析、セキュリティなどの最新技術を駆使したソリューション事業、新しい価値を創造するオペーレションなど、一貫したサービスを提供している。

こうした事業を推進していくにはスピード感が必要だ。従来までは自分たちで作ってきたが、もはやそうした時代ではない。優れた技術や製品を持つパートナーとのシステムの構築が不可欠だと沖谷氏はいう。

回の協業第1弾として、東芝デジタルソリューションズのIoTを活用した作業機械・設備の見える化クラウドサービスである『IoTスタンダードパック』をAzureに対応し、8月30日より提供を開始した。

こちらは東芝グループが、これまで培ってきたノウハウを集結し、機器や設備の稼働状況の見える化および遠隔監視を実現するソリューションである。

働き方改革を実現するトータルサービス『NEC 365』

続いて日本電気株式会社 執行役員の松下裕氏が登壇。同社の働き方改革の実現を継続的に支援するトータルサービス『NEC 365』の紹介が行われた。

松下裕氏。

「働き方改革」だが、同社では7つの社会価値創造テーマに取り組んでいる。その中のひとつが「Work Style」で、『NEC 365』が訴求するテーマとなっている。これまで同社では、『Office 365』や『Microsoft 365』を、約300社、100万を超えるユーザーに導入を促進してきた。

しかし、これまではこれらのツールとしての導入・構築だったが、利活用、運用、全社への展開、その上で働き方改革を実現するというサービスについては、顧客自身が努力していくというサービスだった。

これまでの導入実績を元に、単なるツールの提供だけではなくセキュリティやシステム運用、ユーザーの利便性、利活用促進といった課題に対してそれぞれについてもサービスを提供していく。それをトータルサービスとして『NEC 365』と名付けている。

『NEC 365』は、5つのカテゴリー、15のサービス群で構成されている。サービス体系については、顧客のニーズなどの環境変化や働き方改革に対する市場動向を踏まえて、強化・追加が行われていく予定だ。

同社はAzureを中心にしたビジネスソリューション、顧客への付加価値提供に力を入れている。松下は、そのクラウドビジネスの大きなきっかけとして、今回の『NEC 365』を起爆剤にしていきたいと語った。

ソーシャルAIチャットボット『りんな』のキャラクタープラットフォームに3社が参加

最後に新たらしい取り組みとして、ライフスタイルのイノベーションについての紹介が行われた。ソーシャルAIチャットボット『りんな』を活用したキャラクタープラットフォームで、電通、博報堂アイ・スタジオ、カヤックの3社がソリューションパートナーとして参加することが発表された。

この『りんな』は、2015年の提供開始以来、約700万人の利用者数を獲得している。大きな理由としては、アシスト型のチャットボットとは異なり、実は雑談型でより親和性やユーザーとのアタッチメントが高くなっているところだ。これを活用することで、企業のエンドカスタマーとの接点を強くしていくことができる。

これはマイクロソフトの研究所であるMicrosoft Researchが開発したテクノロジーをベースに、Azureベースでのクラウドでチャットボットの展開をしている。

『りんな』というキャラクターにとらわれず、新しいキャラクターや企業が持つキャラクターに合わせて、どんどんソリューションが増えエンドカスタマーとの接点が増えていくことを期待しているとのこと。

ここで株式会社カヤック 代表取締役 久場智喜氏と株式会社博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員 佐々木学氏が登壇。それぞれのメッセージが語られた。

久場智喜氏。

「我々は、テクノロジーを使って面白いものを作るのが得意なクリエイター集団です。今回『りんな』という新しいテクノロジーを提供いただき、それを使ってユーザーに対してより面白い体験を提供してけると思っています」と久場氏。

佐々木学氏。

また佐々木氏は、「今回、『りんな』のキャラクタープラットフォームに参画させていただくことで、新しいクリエイティブの表現を可能性として期待しています。アイ・スタジオは、表現・技術を強みにした会社です。今顧客体験だけではなく、継続的な顧客接点を作って行かなくてはならない時代に来ています。その中で、『りんな』のシステムは新しい表現の形として期待しています」と語った。

 

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。