2018
06.28

【World MR News】『Oculus Go』の魅力とこれからコンテンツ制作に参入するには?――セミナー「Oculus Go買いましたか?」レポート≪後編≫

World MR News

6月12日に、東京・市ヶ谷のKADOKAWA セミナールームにおいて、5月に発売されたばかりのスタンドアロンタイプのVRゴーグル『Oculus Go』をテーマにした3時間のセミナーが開催された。

本稿ではその後編として、「Oculus Goから未来を展望する」と題されたパネルディスカッションの模様を一部抜粋してお届けする。

こちらのセッションでは、株式会社桜花一門 代表 高橋建滋氏、合同会社DMM.com EC&デジタルコンテンツ本部 本部長 動画配信事業部/電子書籍事業部 事業部長 山本弘毅氏、株式会社HAROiD 代表取締役社長 安藤聖泰氏、株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員 遠藤諭氏が登壇。また、GOROmanこと株式会社エクシヴィ 代表取締役社長 近藤義仁氏は、リモートで登壇した。

▲写真左から、株式会社エクシヴィ 代表取締役社長 近藤”GOROman”義仁氏(スクリーン)、株式会社桜花一門 代表 高橋建滋氏、合同会社DMM.com EC&デジタルコンテンツ本部 本部長 動画配信事業部/電子書籍事業部 事業部長 山本弘毅氏、株式会社HAROiD 代表取締役社長 安藤聖泰氏。

今後出てくるVRデバイスは販売力があるもの=コードレスになる

遠藤諭氏:現状VRデバイスそのもの状況はどのような感じですか?

山本弘毅氏:『PlayStation VR』(以下PS VR)や『Oculus Go』などの販売台数は公表されていないと思います。あくまでうち(DMM.com)の数字でいいますと、スマートフォンで観ている方が一番多いです。それに近いところでPS VR、だいぶ離れたところでその他のデバイスです。

遠藤氏:全体の半分をスマホと『PS VR』がわけていて、残りのプロっぽいところをOculus Riftとかが占めている感じですね。

山本氏:『PS VR』だけでも7~8万人が毎月使っています。

高橋建滋氏:『PS VR』は、全世界200万台以上出たというアナウンスが出ています。そのうち、世界の10分の1が国内という数値をみています。その中でホコリを被っていない台数が10万台という予測値を自分が出しています。その根拠として、昨年末に『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』が10万本出たということで、その数値を頭の中で描いています。

遠藤氏:それに対して、今日のテーマである『Oculus Go』はどんな感じになっていくんですかね?

▲株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員 遠藤諭氏。

高橋氏:1万台以上1万5000台未満ぐらいはいっているかなというのが、肌感覚ではあります。

安藤聖泰氏:『Oculus Go』を見て大きく変わったと思うのは、これまでのVRは、PCやPlayStationなど何かが必要でした。それが、スタンドアローンだけでできるようになったのが画期的です。やっと普通の人にすすめられるものになりました。これからもっと普及しているだろうなと思っています。

山本氏:仕事柄ほとんどのデバイスに触っていますが、一番いいかなと思います。やはりコードレスというところが大きいです。今後出てくるVRのデバイスについては、販売力があるもの=コードレスになるのかなと思っています。

高橋氏:(コードレスではないデバイスも)残ることは残ると思います。外出中にiPodをイヤフォンで音楽を聴いている時代に、レコード盤で音質がといいながら、巨大なスピーカーとアンプで聴いているという残り方のイメージです。

▲株式会社桜花一門 代表 高橋建滋氏

10年後には一家に1台が当たり前の時代になる

遠藤氏:iPodは音楽市場を変えましたが、『Oculus Go』もそんな存在ですか?

高橋氏:自分はどちらかというと、1981年からスタートするマイコンと照らし合わせながら説明しています。1981年の『PC-6001』や『カセットビジョン』が、2016年に登場した『Oculus RiftやPS VRが出たタイミングです。今回の『Oculus Go』に関しては、『ファミコン』くらいはいったのではないかと。

『PC-9801』が7年かけて100万台売れるのが、1987年。その翌年に1年間でもう100万台売れます。

▲株式会社エクシヴィ 代表取締役社長 近藤”GOROman””義仁氏(スクリーン)

遠藤氏:『PC-9801VM』が出たからね。

高橋氏:間を端折ると、1995年にウィンドウズ95が出て一家に1台が当たり前になり、マジョリティまで浸透しました。1981~2年にスタートしたマイコンが、そこまでたどり付くのに13~14年掛かっています。目先の早い人が、このヘッドマウントディスプレイがビジネスの場で使うというのが、もう2~3年後になります。2028年ぐらいには、一家に1台やひとり1台が当たり前で、ビジネスもすれば遊びもするのが当たり前になります。

そのときARやMRになっているかもしれませんが、そういう時代が10年後に来ます。

安藤氏:どうやって儲けるんだというビジネスの話が出てくると思いますが、先に特性の話をしたいと思います。テレビやスマホ、『Oculus Go』など様々なデバイスがありますが、それぞれで課金モデルや広告モデルをやっています。スマホは「歩きスマホ」と言われるぐらい、歩きながらでもできるデバイスです。

仮に広告モデルをやっているときにどれぐらいの人が見ているか。テレビだと、掃除しながらかもしれません。しかし、『Oculus Go』は体験する人から見れば没入感ですが、ほぼ絶対に(映像を)見ています。確実凝視しているメディアだと考えると、間違いなく同じことを広告などでやっても、明らかに刺さるものになっています。

課題は普及です。固定電話が携帯電話になったぐらいの革命が、このたった1本のケーブルが無くなっただけで実現しています。この世界にすでに関わっている人たちからすると、あまり変わらなく感じているかもしれません。Go単体でVR体験ができるというのは、想像以上のインパクトがあることなんです。そのため、普及するための材料は出来たと思います。

買ったときに気付くのは、最初からコンテンツが揃っているところです。普通、こうした新しいものを買うとオススメのものを5つぐらい触って飽きるのが、すでに環境が違います。もう1個何かのトリガーで普及すると思うので、ここから早いのではないでしょうか。

あとBtoBでスゴイツールが出てくるかもしれません。最近会議中にPCを開いて内職している人がいっぱいいます。あれをやめさせたいのです。僕の社内では(笑)。これはできなくなります。

▲株式会社HAROiD 代表取締役社長 安藤聖泰氏

遠隔地の人がひとりいてテレビ会議すると、同じ場所にいる人たちのほうがコミュニケーションが取りやすく、テレビ会議をしている遠隔の人とは距離を感じます。みんなこれを被れば近くも遠くも一緒になり、内職もしないようになります。

遠藤氏:山本さんどうですか? いきなりこれを家に送りつけるというのもいいですよね。

山本氏:やっぱり最初に買う動機が必要だと思います。何よりもマスの方に普及するには(値段を下げることが必要で)、2万円台のデバイスが出たのはスゴイことかなと思います。

遠藤氏:僕は過激に行ったほうが面白いと思っていますが、GOROmanさんはどう思いますか?

近藤 “GOROman” 義仁氏:そうだと思います。僕は、むしろ勝手に早めればいいと思っていて、自分たちで作っていけばいいじゃないですか。自分たちで作っていって、世界を変えればいいだけです。僕は実際にOculus社を持ってきたし、こうやって『Rooms』で話しています。何年に何というのはナンセンスで、勝手にやれよとしか言いようがないですね。

遠藤氏:来そうな感じですかね?

GOROman氏:来るというより、持ってくる。そんなもの待っていったってしょうがないじゃないですか(笑)。

安藤氏:一時期メディアが「3Dが来る」といって、ものすごい3Dで撮影した素材が山のように眠っています。あれを今こそ活用できるかもしれません。普通に3Dコンテンツを見るというものとしても面白いかもしれません。

遠藤氏:東大の先生が、VRのライバルはツイッターだとおっしゃっていました。それはVRコンテンツを楽しんでいるときにツイッターができないからだそうです。

GOROman氏:たぶんVR OSになったときにツイッターはできるので、ながらツイッターになるでしょうね。VR OSが出てからが本番で、今はシングルタスクのMS-DOSみたいなものですね。

遠藤氏:その見通しはどんな感じですか?

GOROman氏:OculusはVR OSをずっと作っていると思います。その中にマルチタスクのアプリがどんどん動いたり。実際『Oculus Rift』のほうは「Oculus core」という概念があって、ウィンドウズの好きなアプリをピン留めしてずっと置いておくことができます。そういのがOSレイヤーに入ってきて当たり前になり、マルチタスク、マルチウィンドウ、マルチVRになるでしょうね。なので、今は過渡期でウィンドウズ3.1みたいな中途半端な状態です。

遠藤氏:OSが何する前夜のような感じですね。

GOROman氏:そもそもウィンドウズもiOSもAndroidも、2DのウインドウやフラットデザインのアプリのOSなので、空間UIではありません。

女性が今後のVRの育成を決める?

遠藤氏:山本さんと一緒にマイクロソフトのVR発表会に出させていただいたときに、ソニー・ミュージックエンタテインメントの方がいて、むしろミュージシャンがVRの活用へ興味を持っているということをおっしゃっていました。空間共有的には可能性がありますよね。

テレビを見ている女性や、客層を広げる音楽ファンや女性客がこの後のVRの育成を決めると思っています。

iPhoneが2008年に出てバーンと売れたように見えますが、あれも2段階踏んでいて、白いiPhoneが出たときに女性にすごく売れました。そうしたきっかけ的に、新しいコンテンツでなおかつライブなどが出てくると(影響が)大きい気がしますが、その辺はどのようにご覧になっていますか?

山本氏:近藤さんが昔からおっしゃっていましたが、ものを持って女性にもてるようになると一気に普及すると・・・・・・。

遠藤氏:キモズムの谷ですね。

山本氏:そこまではいずれなるのではないかと思います。VRなのかARグラスなのか『HoloLens』なのかはわからないですけど。最先端のアーティストなどは、そうしたものに興味を持っていますので。

▲合同会社DMM.com EC&デジタルコンテンツ本部 本部長 動画配信事業部/電子書籍事業部 事業部長 山本弘毅氏

遠藤氏:どんどん持ってもらうといいかもしれないですね。『PS VR』もガンガンコマーシャルすればあのタイミングでもいけたのではないかと思います。残念ながら数が作れないという話があったみたいですが。みんながやっている図が流れれば、やるというのがあるじゃないですか。

GOROman氏:機会損失でしたね、あれは。

今のフェーズはすべて未来への屍になっていく

遠藤氏:最後にひと言ずつお願いします。

高橋氏:『Oculus Go』を買ったはいいけど、何をしたらいいか迷われている方がちょいちょいいらっしゃるので、そうした人のために迷わせない情報(※)をいろいろと出しています。

GOROman氏:僕は今のVRだと絶対に流行らないと思っています。さんざんエバンジェリストとかやってきて、こんな状態では流行らないと思いました。ですけど、携帯電話がその昔ショルダーだったりスマートフォンの最初がPalmだったりしたことを思い出せば、このフェーズはすべて屍になっていきます。その屍を超えていった先に未来があって、逆に今が重要だと思っているから、こうした活動をしています。

なので、おそらくこのままでは絶対に流行らないんですけど、iPhoneが出た11年前に全員買うとは思わなかったじゃないですか。ここにいる皆さんで、コンテンツを作っていけたら、日本の未来も楽しくなっていくのではないかと思っています。

山本氏:今の話にもありましたが、この会場の中にiPhoneを持っている人はほとんどいなかったのではないかと思います。僕らDMMも、すぐになにか動きがあるといよりは、将来的に来るのではないかととりあえず見ながら考えようというのが、たまたま上手くいっている状況です。本来であるならば、よく言われている2020年以降、5Gとかが揃ってくる中で、まだまだ時間は掛かるかなと思います。

実写の動画ですと、今2K+2KのHDを両目で見ているので、画質は4Kのテレビで見ているよりも悪いと思います。これがいずれ8Kで撮影して、4K+4Kにすると、今の4Kのテレビを見ているレベルで実在する場所と変わらないレベルの解像度で見られるようになります。そうしてくると、実写の方は変わってきます。

2020年からビジネスとしてスタートするので、そういった意味では、今から携わっておいたほうがいい思いがいずれできるのではないかと思います。

安藤氏:初めて本当の意味で、遠くの人と人が同じ時と同じ時間を同じ場所で誰かと共有できるツールができたかなと思っています。元々のコミュニケーションテクノロジーの歴史は電話から始まり、スマホやLINEで繋がるようになりました。

本当の意味で目の前で同じ空間を共有できるという面白さを、エンターテイメントとかにも活かしたようなものをこれから作っていくと、今までまったく体験したことがなかった人たちがこの世界に入ってきて、いろんなものが作れるのではないかなと思っています。

(※)「OculusGOを買ったが何をしたらいいか解らなくなった人が見るページ」
https://www.oukaichimon.com/oculusgo.html

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。