2017
12.25

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.8「2017年 / VR元年はVR週間で締めくくり」

EyesWideOpen

毎年12月になると、ひとつ年を取る。年末の忙しさのなか、年齢を重ねたことの感慨に浸ることもなく、師走の街を駆け抜けるのが恒例行事と化している。

とは言え、自身のなかで、今年はどんな一年だったかという点を振り返ることにしている。

個人的に2017年を通して、エンタテインメントにおける、一番の関心事はVR(バーチャルリアリティ)だったと思う。それは、おそらく2018年も大きくは変わらないだろう。

そんなVR元年を象徴するかのように、12月の後半はVRをテーマにした発表会、体験会、トークセッションというスケジュールで終わろうとしている。

VRセンス成否の行方は導入動向次第か…?

写真)(左から)阪口一芳社長、襟川恵子氏、シブサワコウ氏

12月19日、九段下のコーエーテクモホールディングス傘下でアーケード向けゲーム事業を展開するコーエーテクモウェーブにおいて、五感を刺激するVRセンスの21日からの実稼働を宣言する発表会が開催された。

当日の登壇ゲストは、コーエーテクモウェーブの阪口社長、コーエーテクモホールディングスの代表取締役であるとともに、VRセンスのゼネラルプロデューサーである襟川惠子氏、そして当初はVRセンスのプロジェクトに反対したというシブサワコウ氏までもが登壇し、現状と今後のコンテンツ施策などについて熱弁をふるった。プロジェクトの要になる経営者3人が揃って登壇し発表するという、力のこもった発表であり、今後のアーケード向けVRの動向を占ううえで重要なものと考えて良いだろう。

写真)VRセンスの持つ8つのギミック

ちなみに今後の新作は「進撃の巨人」「戦国無双」などを順次導入していくとのこと、さらに、12月22日をニコニコの日ならぬVRセンスの日と制定し各店頭での販促活動を行っていくとのことである。

しかし、課題となるのは他のVRとは異なる体験の創造と演出だが、1台あたりの価格面、2台でワンセットという感が拭えない部分、そして、セガ、バンダイナムコなどの大手アーケード施設を有する法人への導入の可否などがVRセンス全体の成否を担っていると思った。

http://www.gamecity.ne.jp/vrsense/

写真)VRセンス導入店鋪一覧

 

これが最終版?!庵野監督も納得した「エヴァンゲリオン The 魂の座」

12月20日、港区、札の辻交差点にそびえるバンダイナムコ未来研究所にて、バージョンアップされた「エヴァンゲリオン The 魂の座」を」体験することができた。実際の施設での更新と稼働は12月27日となる。

写真)「エヴァンゲリオン The 魂の座」を体験する筆者

https://vrzone-pic.com/activity/eva.html

写真)バンダイナムコ未来研究所

「エヴァンゲリオン The 魂の座」は既に、VR ZONE SHINJUKUで展開中のコンテンツだが、バージョンアップ版となる。

今回の改善点は「エヴァの暴走」と、従来3機(3人)だったプレイが、4人での協力プレイに変更、全体的な戦闘バランスの見直し、コックピット内の演出、BGMの新規追加という。スタンバイ時に余裕があれば周囲を見回すと様々な演出効果が確かめられことだろう。

今回は私のテスト体験はMarK.06を操縦しエヴァンゲリオンの世界に没入し、使徒とバトルを繰り広げるというものだ。幸い、私が参加したチームは使途との戦闘に勝利し「暴走モード」に突入した。 

ちなみに、21日に開催された黒川塾でも、コヤ所長こと小山氏と、タミヤ室長こと田宮氏が語ってくれたが、従来の3機体制では、2人組でのプレイが中心になってしまい、稼働率が落ちることが課題だったということから、今回、MarK.06筐体を導入することで、それらの稼働率を向上される目論見もあるという。

土日はまだ待ち時間もあると言うが、平日は比較的待ち時間も無いということから、プレイ体験として狙い目のようだ。VRセンスの動向も相乗効果として、アーケードVRのさらなる認知促進になることが望まれる。

写真)「エヴァンゲリオン The 魂の座」画面

 

写真)体験を記念して撮影 バンダイナムコエンターテインメント「エヴァンゲリオン The 魂の座」       (左から) 小山順一朗氏 井本一史氏 開発責任者  田宮幸春氏

 

2017年、最後の黒川塾56 / アーケードVRの展望 2017年-2018年

そして、最後の章を飾る話題は、12月21日(木)開催、私自身が主催するエンタメ勉強会「黒川塾」の56回目として「アーケードVRの展望 2017年-2018年」 を紹介しよう。

今回の黒川塾は2017年のVRの総括として、活発になっているアーケードVRを牽引している第一人者の方達をゲストに2017年のVR事情を理解する会として企画した。

前段でご紹介したVRセンスの現場責任者であるコーエーテクモウェーブの阪口一芳社長、そしてバンダイナムコの小山順一朗氏、田宮幸春氏、セガCAジョイポリス社の小川明俊氏という、現在のアーケードVRシーンを牽引する素晴らしいメンバーに登壇いただくことができた。

写真)(左から)小川明俊氏、阪口一芳社長、筆者、小山順一朗氏、田宮幸春氏

前章、前前章で紹介したVR ZONE SHINJUKU、VRセンスの現状も含めての現状を把握することができる良いトークセッションになったと思う。

以下に簡単に登壇ゲストのコメントを紹介する

■VRセンス 阪口社長

1・女性客の反応が予想以上に良かった

2・体験者の約半数が普段ゲームセンターに足を運ばない人達だった

3・ヘッドマウントディスプレイの装着の際も大きな問題はなし

4・アーケードのみに限らず空港、老人ホーム、テーマパーク、海外に展開や導入を予定

■VR ZONE SHINJUKU

1・休日は混雑気味だが、平日は割と利用しやすいとのこと

2・海外からの観光客の利用も多い

3・ 「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」が非常に好評

4・体験筐体を3機から4機に増やすことで、空き状況の稼働を防ぐ

5・業界全体でVR体験の13歳未満非推奨のガイドラインの構築

■CAセガジョイポリス

1・休日の人気は衰えていないが、平日は落ち着いて遊べる

2・今後は6~7コンテンツを日替わりや週替わりで用意することも検討

3・海外の良質なVRコンテンツを積極的に導入していく

4・VRを活用したeスポーツコンテンツも導入する

5・大型施設だけでなく、カラオケボックスやネットカフェなどでも展開できるビジネスモデルも検討中

各社各様のコメントであったが、それぞれに共通しているのは、新しいエンタテインメントの積極的な認知促進と体験の共有化であったと感じた。VR体験、VRデバイスなど関連する産業とコンテンツは未だ成長の過程にあり、改良や研究の余地がある。

しかし、今この時代に生まれ、これらがスタンダードなものとして体験することができる「VRネイティブ世代」を育てるためにも多くの人により良いVR体験を醸成することが、2017年を超えるものが2018年に求められることだろう。

皆様に於きましても2018年がよい一年でありますよう祈念しております。

写真)黒川塾56 登壇者と参加者

©コーエーテクモウエーブ ©カラー ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)

1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。