2017
07.31

黒川文雄のEyes Wide Open VOL.3「VRの付加価値~人間の五感を刺激するトリガー」

EyesWideOpen

2017年6月28日、有明ワシントンホテルにてコーエーテクモウェーブが主催するアミューズメント用VR筐体「VR センス」の発表会に参加することができた。

コーエーテクモウェーブの「VR SENSE (センス)」の発表会

「VR センス」は、2月の「JAEPO2017」で概要発表がなされており、今回は、ワシントホテルの向かいにそびえる東京ビッグサイトで開催されている「コンテンツ東京 2017」に実機のVR センスが出展されていることもあり、メディアに向けて、アミューズメント施設等へのデリバリー直前の最後の御案内という色合いが強い発表会だった。

 

 

五感を刺激する5機能

すでに報道されている概要だが、「VRセンス」に関してすこし振り返ってみたい。

「VR センス」は、新設計の筐体型VR体感ゲームマシンで、シートが動く「多機能3Dシート」、香りが漂ってくる「香り機能」、何かが足元や手元を動いたような感じを演出する「タッチ機能」、風圧を感じる「風機能」、温感冷感という温度を感じる「温冷機能」、水しぶきのようなミストを噴出する「ミスト機能」という5つの機能を備えている。

私も実際に「コンテンツ東京2017」にて、「超 戦国コースター」・・・VRコンテンツの中身はコーエーテクモがウリにする戦国城下町を舞台にジェット?コースターが駆け巡る・・・というものを体感したが、おそらく体感したVRコンテンツに依って異なるのだろうが、「3Dシート」「風機能」「ミスト機能」は感じられたものの、他の「香り機能」「タッチ機能」は感じることができなかった。それらは「コンテンツ東京2017」のブースが周囲の出展社と相まって賑やかすぎたことや、マシンがフル稼働だった状況でフルスペックを発揮できていない可能性もあったかもしれない。取材、体感する側としては、もうすこし余裕のある時間と場所で開催を再度望みたいと思う魅力に溢れたVR体験だった。

VRSENSE体験中の筆者 黒川文雄

 

「VRセンス」の実店舗でのロケーション・テストとデリバリーは今夏を予定している(8月頃の予定)とのことで、おそらく、まだ出荷に向けてのチューニングの余地はあるので、完成が待ち遠しい。

人間の五感を刺激する「VRセンス」の試みは、すでに飽和状態にあるアーケードに新風を吹き込むことになるだろう。

 

襟川惠子氏自らの指揮したプロジェクト

「VRセンス」の発想と企画は襟川惠子(コーエーテクモホールディングス 代表取締役会長)氏が自ら主導したという。

発表会では「シブサワコウ(襟川陽一氏)からは反対されて社内の貴重なリソースは使用禁止」とまで言われたという・・・。そのような中で、惠子氏自ら、コーエーテクモウェーブ社の優秀なスタッフをピックアップしたという。

元々アーケード用ゲームや筐体の開発ノウハウを持つコーエーテクモウェーブ社の開発スキルは高く、なおかつ既存のコーエーテクモ社の関連するIPをベースに企画の構想を練ったものが多く、どこコンテンツも独自性が強いものに仕上がっているようだ。過去の乙女ゲームのパイオニアとして開拓したことなど、常に新しいものに挑戦する襟川惠子氏らしい発想力を感じた。

特徴的な筐体デザイン

なかでも、筐体のデザインは襟川惠子氏が出張先での移動中のクルマの中で思いついたものだという。

 

(描きとめたスケッチ)

こちらのスケッチは惠子氏が移動中に、えんぴつで、ササッと描いたというが、美術が好きで多摩美大を卒業したというのも頷けるようなものになっている。このスケッチを基に筐体のデザインがなされ、ほぼデザイン画の通りに完成したものになっている。

さらに惠子氏曰くは「通常のVR(バーチャルリアリティ)コンテンツは他社さんがやってくるでしょうから、仮想現実がもっとリアルに感じられるものにしようと。それで、風や雪の表現ですとか、振動の揺れですとか、そういったものをどんどん入れて臨場感を高めて。今までに体験したことのないような感動をお客様に味わっていただきたいということで作ったんです」という。おそらく、これらの人間の五感を刺激する要素を基にVR体験はさらに増幅していくことだろう。さらにコーエーテクモウェーブ社としては積極的に技術開示を行い他社の参入を促進したいという。人間の脳は非常に高度で精密と言われているが、その脳をうまくだます機能が今回の「VRセンス」には感じることができる。

VRに足りなかったもの、VRにあるべきものを考えた結果が今回の「VRセンス」は現実なVR世界を僕らにもたらしてくれるトリガーになると思う。

 

©コーエーテクモウェーブ All rights reserved.

VRSENSE発表会で紹介されたタイトルの一部

 

 

筆者: 黒川文雄(くろかわふみお)
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ジャーナリスト、コラム執筆家、アドバイザー・顧問。
『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。
黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。現在、注目するカテゴリーはVR、AR、MR、AIなど多岐に渡る。