2019
09.11

【World MR News】VRアバターの共通規格に関する知見を学ぶイベント「第3回 VRM勉強会」が開催

World MR News

VRM勉強会は、8月27日にVRアバターの共通規格「VRM」に関する知見共有やアプリ自慢を行う勉強会「第3回 VRM勉強会」を、六本木ヒルズ森タワーのメルカリで開催した。本稿では、その中から一部のセッションをピックアップしてご紹介する。

■「気軽にVRMアプリを出してみよう」by なっつー氏(@yashinut)

なっつー氏からは、「気軽にVRMアプリを出してみよう」というタイトルでセッションが行われた。VRMは、キャラクターをいろいろと変更できるという特徴から、配信系やアバターになりきるということに紐付けられる事が多い。今回なっつー氏が考えたのは、ひとつ要素を取り出し、それとVRMを掛け合わせて何かができないかということだ。

▲なっつー氏。

なっつー氏が過去に考えたものには、VRMからスタンプ画像を作ったりミニゲームと組み合わせたりして、自分と相手で遊べるというようなアイデアだ。また、VRMと雑紙を組み合わせたもので、自動的に同人誌のようなモノが作れるなど、ひとつ要素を入れて掛け合わせてみることでアイデがいろいろと出てくるのだ。

VRM対応アプリを作るときに便利なライブラリなどがいくつかある。一番情報が多いのはUnity向けの「UniVRM」だ。他にもUnreal Engine 4向けやBabylon.js向け、Three.js向けなどがある。ちなみに「UniVRM」は、現時点でバージョンが0.53.0で、まだメジャーバージョンにはなっていない。それでいながら多くのユーザーが利用しているのである。

UniVRM(Unity向け)

https://github.com/vrm-c/UniVRM

VRM4U(Unreal Engine 4向け)

https://github.com/ruyo/VRM4U

babylon-vrm-loader(Babylon.js向け)

https://github.com/virtual-cast/babylon-vrm-loader

three-vrm(Three.js向け)

https://github.com/rdrgn/three-vrm

▲こちらが、なっつー氏が調べた主なプラットフォームの対応表だ。

アプリを作ることができたら、次は配信先だ。できるだけお金をかけずに簡単に配布したいときは、ウィンドウズやAndroidならGoogle DriveやDropBoxなどの共有ストレージや、Booth、DLSiteといったデータ販売可能サービスで配布するのがおすすめだ。

しっかりストアで配信したいときは、PCならSteam、スマホならGoogle PlayやApp Storeなどがある。

▲なっつー氏が作成したアプリ。VRMからLINEスタンプ風のものを作ることができる。

■「ユーザー視点から見たVRMの課題」by よーへん氏(@mtprince9)

学術系アイドルユニットVTuber「Holographic」として活動中のよーへん氏からは、「ユーザー視点から見たVRMの課題」として、VRMを取り巻くライセンスの課題について紹介が行われた。

▲オンラインで登壇したよーへん氏。

VRMライセンスの課題に関する視点には、法律的、運用が技術面、アバター制作者、ユーザー、アバターに関する考え方といったものがある。今回 よーへん氏がピックアップしたのは、最後のアバターに関する考え方だ。

VRMでは、「アバターとは何か?」ということがハッキリ提示されていないとよーへん氏はいう。これは、幅広く使えるようにするために、あえて解釈の余地を残してあると捉えることができる。しかし、それにより出てきた問題もあるという。

今年の7月末くらいに、VRoid製のモデルがYouTube広告のキャラクターとして無断使用されるという事態が発生した。当時のライセンスは、「アバターとしての利用はNG、法人利用可能、ただしクレジット表示が必要」となっていたのだが、クレジット表示などもなかったという。

そもそも論として、VTuberが演じている=アバターという概念には疑問がある。「人格を付与する」の意味や、アニメーションが付けられたキャラクターはアバターになるのかなど、「アバター」「人格」「演じること」についての定義が共有されていないのが現状である。

それではどうすればいいのだろうか? 極論としては、少しでも使われるのがイヤならネットに上げない方がいいという結論にならざるを得ない。管理側と開発側、ユーザー側、法律家側の視点で、アバターや人格について共有できる機会を持つべきだとよーへん氏は提案する。

アバターの中に人がいることを軽視した問題は、昨年からいくつも発生している。アバターそもそも論についての議論は、今後も様々なことで語られることになりそうだ。

■「個人VRゲーム開発でのVRM思想フル活用のすすめ」by まっつん氏(@n_mattun)

まっつん氏からは、「個人VRゲーム開発でのVRM思想フル活用のすすめ」というテーマでセッションが行われた。VRM思想がゲーム開発者にとって嬉しいポイントは、アクションゲームを作るときにアクション部分は頑張って作ることができても、モデルを作るスキルや時間、予算がないということがある。しかし、VRMならモデルはユーザーが準備してくれるため、データを読み込んだ後の処理だけを考えればいい。

▲まっつん氏。

モデルが用意されてることの派生するメリットとしては、キャラクターデザイン設定(見た目や性格など)や、世界観の設定などを考える必要がないというところだ。また、同じゲームのプレイ動画であって、ユーザーごとにアバターが変わることで異なる印象となり飽きにくいというメリットもある。

さらに、ゲーム内でキャラクターメイキング機能を作る必要もない。『VRoid Studio』『セシル変身アプリ』『Vカツ』など、外部VRM制作ソフトがキャラクターメイキングに当たる部分を引き受けてくれるため、同様の機能を持つ必要がないのだ。

VRMの共通規格があることのメリットは他にもあり、汎用ローダーがありランタイム読み込みにも対応しているところだ。無心で汎用ローダーを使うことで、Humanoid制御下のモデルとして好きに制御できる環境を作ることができるのである。

やることが多い個人VRゲーム開発者にとって、キャラクターにまつわるゲーム開発工数をごっそり削ることができるVRM思想はものすごく嬉しいので、もっと流行って欲しいとまっつん氏。その空いた時間で、制作者がこだわりたいところに注力できるのは、創作物を産みやすい状況になるのだ。

■「VRMをマッハでフィギュア化するボクセル化データ変換技術のご紹介」by そむにうむ@森山弘樹氏(@Somnium)

今回ふたり目のオンラインで登壇したそむにうむ@森山弘樹氏からは、「VRMをマッハでフィギュア化するボクセル化データ変換技術のご紹介」というタイトルでセッションが行われた。

もはや、「ひとりnアバター使い」が標準になろうとしているとそむにうむ@森山弘樹氏はいう。VTuberはこの1年で8000人に到達。VRChatも、『Oculus Quest』の発売で参加者が急増してきている。しかし、VTuberやVRChatのアバターは引退などで2度とその姿が見られなくなる可能性もあり、はかない存在である。そこで、バーチャルな存在をリアル側に残すという試みを行っている。

アバター自体は3DCGで作られており、CADで扱える状態のデータに作り変えることができれば、3Dプリンターで出力が可能だ。3Dプリンター出力にはCADオペレーターによる調整が必要だったが、これを自動化することで誰でもアバターのフィギュア化が可能となる。

VRMを3Dプリンターでフィギュア化するために、VRMファイルをUnityに読み込ませてアクションのひとコマをボクセル化。それからCAD向けポリゴン変換と3Dプリントで着色済フィギュア出力を行うまでの技術をサービス化しようとしている。

VRMは、glTFベースの3DCGポリゴン情報でアバターモデルが形成されている。そのモデルを3Dプリンターで直接造形できれば、低予算でフィギュア化や販売用グッズを作ることができるようになる。ゲーム用の3DCGポリゴンモデルは3Dプリンターで直接出力できなかったが、ボクセル変換技術で可能にしている。

VRMファイルは、UniVRMアセットを使うことで、簡単にUnityモデルに読み込ませることができる。その後は、同社が独自開発したボクセルポリゴン変換プログラムを使用することで、ほぼ自動的にCAD向け容積情報を持つ3Dポリゴンファイルに変換が可能だ。

データ(.PLYファイル)を3Dプリンター出力サービス会社に送り、UV樹脂フルカラー3Dプリンター(ミマキエンジニアリング社製)でフィギュア出力を行う。

直接3Dプリンターでフィギュア化する技術開発には、ふたつのアルゴリズムでデータを作成している。ひとつは「3DCG形状データ断面画像生成アルゴリズム」だ。これは、3DCGデータから、CTスキャン方式で断面画像ファイルを作成していくというものである。

もうひとつは、「ボクセル(断面画像)ポリゴン変換アルゴリズム」だ。こちらは、ボクセルを頂点として三角ポリゴンに展開するアルゴリズムである。これらで3DCADなどの作業を省いて、自動変換を可能にしている。 

同社では、VTuber/VRMアバターフィギュア化サービスとして、「クイックフィギュア」を展開していく。こちらでは、営業とフィギュア製品品質管理とパッケージについて廣済堂と協力し、9月上旬にプレスリリースを発表する予定だ。

VRMファイルには、「人格に関する使用許諾」などが記述でき、利用に関する条件や制約が明記出来るという特徴がある。しかし、こちらの技術で得たノウハウやプログラムを自由配布してしまうと、そうした制約記述を無視しして勝手に3Dプリントされたフィギュアが製作されるという可能性もある。

そこで、現時点ではプログラムの配布は行わす、変換とフィギュア化サービスのみを実施する。VRMファイルは、返還前に規約違反がないかのチェックも行うそうだ。

現時点では、VRMに3Dプリントの規約にかんする記述欄は存在しない。しかし、この技術のようにフルから3Dプリンターでフィギュア化することはすでに可能な状態になっている。そこで、将来的にはVRMにもこれらの可否記述項目を設定する議論が必要だと、そむにうむ@森山弘樹氏は述べ、本セッションを締めくくった。

▲こちらがフィギュア化された作例。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。