2019
07.16

【World MR News】最優秀賞2部門を受賞したチームも登場! 「VTuberハッカソン全国ツアー2019【東京大会】」が開催

World MR News

昨年全国15地方と決勝大会の全16回が開催された、VTuberハッカソンが今年も開催されることになった。その戦陣を切って7月6日と7日の2日間行われたのが、「VTuberハッカソン全国ツアー2019【東京大会】」だ。

前回の大会までは、VTuberのコンテンツ制作のみに絞って行われていた本イベントだが、今回からコンテンツ制作とご当地VTuber、システム開発の3部門で実施される。本稿では、ハッカソン2日目に行われた発表会の模様を中心にお届けする。

■【ご当地VTuberコンテンツ制作部門&VTuberコンテンツ制作部門】最優秀賞獲得チーム:Saezuri

今回から新たに追加されたご当地VTuberコンテンツ制作部門と、VTuberコンテンツ制作部門の2部門を獲得したのは、「Saezuri」チームだ。同チームがテーマにしたのは、「秋葉原で会える!」VTuberを目指すというものである。これはVTuberのご当地はどこかと考えたときに、思い浮かんだのが秋葉原だったというのが理由だ。

キャラクターの「青葉囀(あおばさえずり)」こと、通称ズリちゃんは、ノリが良いギャルだ。職業はバーチャルアンドロイドで、秋葉原非公認ご当地VTuberとして誕生している。

秋葉原フェスティバルやエンタスなど、VTuberと会える街として秋葉原がバーチャルと現実をつなぐ場所になりつつある。その状況を、VTuberのズリちゃんを通して紹介していく。また、PRしたお店もVTuberを盛り上げたいというところが多かったという。

今回は、VTuberと交流するためのARギフティングツール『肉ティング』も開発している。こちらはAR技術を使ってVTuberに肉(ギフト)を投げることができるというシステムである。

ARマーカーの位置を基準にしており、視聴者側はマーカーの位置を中心にVTuberを見たり肉を投げつけたりすることができる。VTuber側からも視聴者の相対位置がわかるようになっている。

審査員からは、映像に合わせて音を切り替えるなど、動画編集のクォリティの完成度の高さが評価されていた。短期間でVTuberモデルを作り、モーションキャプチャなどもしっかりと行われており、秋葉原を題材にして熱狂度も高いというところも選ばれたポイントだったようだ。

■【VTuberシステム開発部門】最優秀賞獲得チーム:カレーメシ

VTuberシステム開発部門を獲得したのは、カレーメシチームだった。前日まではチーム名がなかったそうだが、提供してもらったカレーメシが美味しかったところから名付けられている。今回彼らが発表した企画は、『VTuberのマド』だ。

この『VTuberのマド』は、イベントなどで活用できるシステムである。複数の会場に窓を模したモニターを設置して、ひとつのバーチャル空間にそれぞれを繋げることで新しいイベントが提供できるようにしている。

各会場に設置したモニターからは、同じバーチャル空間が見える。バーチャル空間からは、窓の景色として各会場の様子が見られるようになっている。このバーチャル空間内では、テレポートや窓を掴んで動かすといったことができる。

また、インタラクション的な要素も用意されており、会場内の呼び鈴を押すことで窓の中の人を呼び出すことも可能だ。「餌付けモード」ではごはんを投げ入れることができ、コミュケーションが行える。

システムの特徴は3つあり、ひとつは会場からリアルタイムでバーチャル空間に干渉できるところだ。ふたつ目は、複数会場にいるファン同士の交流やお互いの反応が見られるようになっている。3つ目は、バーチャル空間とモニターの繋がりを活かした遊びもできる。

活用の提案例としては、マド対抗早押しクイズ大会やVTuberがマドに向かって放つペイント弾を、呼び鈴を押して消していくマド対抗バトル、複数人をバーチャル空間に入れ、角窓ずつに担当を決めたりコミュニケーションをしたりするというものが上げられていた。

審査員からは、ネットワーク部分は未実装だったが、しっかりデモが出来ており完成度が高いところが評価されていた。また、VTuber度と熱狂度という点で、ユーザーとのインタラクティブな要素が強く可能性を感じるシステムだったという。

今回受賞出来なかったチームも、オーディエンス省受賞の可能性があり、こちらはひと月後に決定される予定だ。以降は、そのほかのチームの発表内容をご紹介していく。

■チーム名:Project θ

コンテンツ部門として参加したProject θチームは、「夢をカタチに」というコンセプトでバーチャルな世界で夢を達成する「唯音(ゆいね)」というVTuberを考案。彼女はギターのFコードを抑えられずバンドを止めてしまったものの、みんなの前で演奏するという幼い頃に見た夢を諦めきれず、直接演奏しないDTMでバーチャルな世界で演奏するためにVTuberになったという設定だ。

唯音のキャラクターモデルは『VRoid』を使用して作成されたが、かなり難航し、何度も作り直されている。そのほかアイコンなどのデザインも作ったのだが、時間が限られているハッカソンであるにも係わらず、チーム内のコンペで決定したそうだ。

制作された動画はラジオ形式になっており、唯音ちゃんの小話の後楽曲が流されるようになっていた。楽曲のタイトルは『オンリーウィッシュ!』で、夢を諦めないために進み出すための歌というコンセプトで、一晩で作られている。

■チーム名:ぶいちゅーばーたー チーム

コンテンツ部門とシステム開発部門として参加したぶいちゅーばーたー チームが開発したのは、『ワクワクバーチャルYOUTUBE占い』だ。こちらは、あなたに変わって毎日見守る(働く)AI VTuberというのがコンセプトとなっている。

用途は、忙しい時間を仮想ロボットのVTuberに任せて365日24時間毎日働いてもらうというシステムになっている。使い方は、自分の誕生日とメールを入力することで、その日のバイオリズムが見られるようになっている。

占いは老若男女問わず根強い市場があり、VTuber占い師も存在している。また、毎日知らせが届くというところに新規性と独自性があるという。VTuberの活用やマネタイズでは、ダイバシティに対応でき人の代わりに仕事をしてくれるVTuberの開発料や管理維持手数料、コンテンツ使用料などが考えられる。

■チーム名:うさぎさんチーム

システム部門で参加したうさぎさんチームが開発したのは、『VR多重演技収録システム』だ。こちらは、TikTok風のVR動画を多重収録するツールを目指して作られている。ひとり目の演者が撮影した映像を見ながら、ふたり目の演者の演技の動きなどを記録することができるというものだ。演技終了後、VR内でカメラの操作や録画を行う。

TikTok風の機能については、今回は未実装となっている。こちらは、演技をしてチェックするという流れで作っていけるように、今後実装していく予定である。

改良予定としては、Oculus RiftやVIVEなどにも対応していきたいという。また、データのExportやUnityアプリ内の組み込み、リモートで別々の場所で収録できるようにしたいそうだ。さらに、演技したモーションを共有するようなプラットフォーム展開も構想としてはあるという。

■チーム名:KinetV2を用いたモーションキャプチャ~VRoidとUnityを添えて~

なんと高校1年生と中学3年生という若いメンバーで集まったチーム、KinetV2を用いたモーションキャプチャ~VRoidとUnityを添えて~。今回彼らがシステム部門で参加して開発したのは、名前にもあるようにKinetV2を用いたモーションキャプチャのシステムだ。

Unityと『VRoid』が使えるPCとKinectV2、Nintendo SwitchのJoy-Conをデバイスとして使用している。Kinectは、マイクロソフトのSDKを使用し演者の動きと座標を取得している。

手の角度や表情の切り替えが行えるほか、リップシンクにも対応。また、グリーンバックになっているため背景の合成も簡単に行える。

スライドバーを調整することでカメラの位置が変更できるほか、Joy-Conで手の角度の調整や手を閉じたり開いたりできるほか、顔の表情も操作出来る点が本システムの独自性だ。また、Joy-Conの振動機能を利用して、ボタンを入力したときにフィードバックが返ってくるようにしている。

何よりも最大の特徴は、KinectV2が2万円弱、Joy-Conが1万円弱と3Dモーションキャプチャシステムとしては比較的低価格で使えるというところだ。しかし、落とし穴もあり、残念ながらKinectV2はすでに生産終了となっており、中古で入手する必要がある。

■チーム名:二星キラリ制作プロジェクト

二星キラリ制作プロジェクトチームは、コンテンツ部門としてキャラクター「二星キラリ」を考案している。同チームメンバーはブロックチェーン企業で活動しているそうだが、ブロックチェーン業界初のマーケ支援VTuberを制作したいと考えているそうだ。

同チームの戦略は、徹底的に流行っている歌を歌わせるということと同時に、ゲーム実況を行うというものだ。権利の関係で、今回ゲーム実況は割愛されている。

ブロックチェーン企業がこのVTuber参入を目指したのは、Dapps gameというブロックチェーンを使ったゲームのユーザーが少ないというのが理由だ。最大DAUのタイトルであっても1日3200回しか使われていない。この状態のままでは、業界そのものが無くなってしまうという危機感がある。そもそもその存在を知らない人も多いため、情報発信をする場としてVTuberの活用を考えている。

VTuberが最適な理由は、ゲームのプレイ画面も見せることができるため、Dapps gameの情報をそのまま流してコンバージョンがしやす。ゲーム実況を見る人がターゲットになりやすく、ミニマムで始められるというところだ。

流行っている歌を歌わせるという部分に関しては、とあるVTuberがすでに実施しておりチャンネル開始からわずか9ヵ月で登録者数14万人を達成したという実績がある。同様の動画も数千万回再生されており、これらと同様の戦略に乗って伸ばしていくというのが狙いである。

■チーム名:やはぎダンシングクラブ

コンテンツ部門とシステム部門で参加したのは、やはぎダンシングクラブチームだ。キャラクターとして開発したのは「夢星なな」で、歌とダンスが得意なアイドルVTuberだ。

会場の野良メンバーで結成されたという同チーム。コンテンツのきっかけは、メンバーのひとりが『PERCEPTION NEURON』でダンス動画を撮りたいというところからスタートしている。システム開発の部分では、『PERCEPTION NEURON』向けのVTuberシステムを開発している。こちらは、『AXIS Neuron』にモデルとモーションを読み込ませて確認することができる。左右で取り込んだ動きの確認を直後にできるのが特徴だ。

こちらを開発したきっかけは、そもそも『PERCEPTION NEURON』で遊べるコンテンツが少なかったからだという。UIも消すことができ、クロマキーで背景を抜いて配信することもできる。

アバターに関しては、『VRoid Studio』を使って制作している。イメージカラーがピンクだったものを青に変更し、そこからの連想で海や空、星空などにイメージを広げている。Unity上で編集した生映像を元に、映像編集ソフトで仕上げている。

発表は以上で終了だが、次回の「VTuberハッカソン2019横須賀大会」は、7月27日と28日に16 Startupsで開催される予定だ。主催はVTuberの夢のゆあさんで、なんと審査員も含めて全員がVTuberという、かなり挑戦的なイベントとなっている。参加者も募集中なので、興味がある人はぜひチェックしてみよう!

■開催概要

イベント名:VTuberハッカソン2019横須賀大会

日付:2019年7月27日(土)~2019年7月28日(日)

時間:両日とも 10:00~21:00

場所:16 Startups(神奈川県横須賀市小川町19-5 富士ビル3階)

参加費:1000円(当日会場にてお支払いください)

募集人数:ハッカソン参加者 30名(先着順)VTuber審査員 5名(先着順)

特設サイト:https://nagatsukimxi.wixsite.com/website

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。