05.10
【World MR News】近未来の“可視化された世界”を描いた映画「The Circle」
アメリカでは先月末劇場公開されたたばかりの映画「The Circle」。世界的に抜群の知名度を誇る俳優トム・ハンクスと、「ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニー役、そして現在大ヒット上映中の「 美女と野獣」などで、子役からスターの道をまっしぐらのエマ・ワトソンの共演ということでも注目され、日本でも年内の劇場公開(配給:GAGA)が決まっており、非常に話題性のある作品だ。
作品のキャッチコピーは、「トム・ハンクス×エマ・ワトソン 豪華競演で贈る、新感覚”SNS”スリラー」とあるが、実はこの映画、当サイトの【MRのある世界】でも紹介していたように、やがて来るであろう“全てが可視化された世界”の到来と、それがもたらす人々の暮らしへの影響についてをリアルに描き出した作品である。
まずは予告編をご覧頂きたい。
トム・ハンクスが演じるのは、世界中から注目を集めているSNSの開発運営企業のトップ。全ての情報を公開し、秘密や嘘がないことこそが人々の人生にとって有益であるということを信じ、その実現に向けてプロジェクトを推し進めて行く。エマ・ワトソン演じるメイは、その大企業の進める企画のモデルに抜擢され、人々から注目を浴び、カリスマとなっていく。一見成功をおさめたかのように見えたメイだったが、メイをフォローする人々が求めるハードルは日々高くなり、その行く末に待っている状況とは一体どんなものなのか…。
まずこの予告編を観て少しの恐怖さえ感じるのは、トム・ハンクスが演じる企業経営者のプレゼンや、エマ・ワトソンが演じる普通の女子の振る舞いのシーンが、あまりにも現代の現実の世界と酷似していて、まるでニュース映像を観ているかのようなリアルさが伝わって来ることだ。トム・ハンクス演じる経営者のプレゼンシーンにおいては、間違いなくFacebookをはじめとする世界中にユーザーを抱える米SNS企業をモデルにしているし、さらに予告編中盤には、まさに今世界が思い描いているような“情報が可視化された世界”として、周囲の人々に纏わる意志や情報がテキストとなって全て表示されているというシーンも出てくる。
こういった世界の内容が、実際に映画という、より身近でエンターテイメント性の強い枠の中で、一般的に視聴できるようになる、ということは、ARやMRの世界を広く一般的に認知させることにも繋がるし、また遠くない未来にこういった世の中になるかもしれない、という想像を、見た人に具体的にイメージさせることとなる。良いと思って開発されたものでも、必ずしも全て善の方向へ人々を導くものではないかもしれないし、これらの新しい技術が出てきたことによって起こりえる新たな問題についても考えさせられることになるだろう。
ちょうどYouTubeが流行しはじめた頃、アメリカのドラマでは、自撮り動画で視聴者数を増やしたいがために悪戯がエスカレートし過ぎて自らの不幸を招いてしまうというような事件を取り扱ったエピソードが多く作られた。こういった流れと同様、AR、MRが及ぼす影響についてを考える時代のフェーズに差し掛かっていると言えるだろう。
いずれにせよ、この“可視化された世界”は、近い将来、もうまもなくやってくる。そして、それをより良き方向へと活用させることは、常に人々に課せられた社会問題でもある。
画像:The Circle Official Trailer 1 (2017)より