03.08
【World MR News】関電工の技術力が集結した展示イベント「平成30年度 技術開発・改善事例報告会」をレポート
関電工は、2月25日に東京・千代田区の東京商工会議所で「平成30年度 技術開発・改善事例報告会」を開催した。本イベントは、同社の技術力と安全・品質への取り組みなどの報告と合わせて、技術開発成果品を、一堂に集めたものだ。本稿では、その一部をご紹介していく。
VRで危険を体感
今回の「技術開発・改善事例報告会」では、様々な発表の他ふたつの展示会場を利用して、同社の最新の取り組みが紹介されていた。そのうちのひとつである展示会場2では、「VR体験コーナー」としてバーチャルリアリティを活用した安全教育用のコンテンツが体験可能となっていた。
実際の現場では、ちょっとした不注意が大きな事故に繋がってしまうことがある。しかしそうしたものは、文字を読んだり話を聞いたりするだけではいまひとつ自分事として捉えるのが難しい。そこで活用されたのが、VRを使った安全教育だ。実際の事故で起こりうる、脚立、梯子、電柱、開口部などからの墜落事故が体験できるほか、弱い電流が流れる手袋をはめて、感電事故を実際に体験できるなど、それこそバーチャルとはいえリアリティ感溢れる体験ができるようになっていた。
また、自動車運転中のスピードの出し過ぎ等による交通事故の体験もできるようになっていた。こちらは夜間に車を運転中、時速60キロと80キロで人身事故を起こしてしまう事例を体験することができた。
体験中は、ハイビームやロービームを自分で切り替えながら走行できるのだが、薄暗い中で不意に人が出てくると避けられないというプログラムであった。実際には注意しているつもりでも、なかなか人の存在に気が付くのは難しく、こちらのVRではその危険性について体験することができるようになっていた。
ちなみに、こうしたVRによる安全教育は新人の集合研修時のみならず、各本部や支店、営業所でも体感研修が行えるようになっている。ノートPCとカメラ、VRヘッドマウントディスプレイとコントローラーさえあれば実施できることも大きな利点だ。
■測定記録支援システム『BLuE(ブルー)』
竣工検査時などの「測定」業務は、これまで紙に手書きでデータを記録し、それを後で清書しなおすなど多数の手間が掛かっていた。そこで、照度計や絶縁抵抗測定器、デジタルマルチメータから取得したデータをBluetooth経由で飛ばし、遠隔測定や自動入力できるようにしたのが、こちらのシステムである。
手書きや清書の作業が減ったことで測定作業の負担も軽減されるほか、記入漏れ・書き間違いといったミスも防ぐことができるという。
この『BLuE(ブルー)』は、『AutoCAD』や『Excel』といった市販ソフトにも対応しており、図面や帳票に直接データを入力することができる。当然のことながら清書の必要もなく、そのまま報告書が完成するというわけだ。実際に使用した現場の感覚では、概ね3割ほど負担が減ったという意見もあったそうだ。
『BLuE(ブルー)』とも連携可能なドローン型自走照度測定ロボット『飛んで測るくん』も展示されていた。こちらは、ドローンに照度計を取り付けることで、測定操作を自動化できるというものだ。障害物を回避したり測定位置の高さを調整したりできるのも、このドローンを使った測定のメリットである。
■パワーサプライの遠隔点検
突然発生する停電など、いざというときに役立つパワーサプライ(非常用電源装置)。これらの装置には、蓄電池が使用されているが、運転状態による温度変化が大きいため、劣化状況を把握するのが難しい。それを、遠隔地からリアルタイムで監視できるようにしたのが、こちらのシステムだ。
プロビジョニングシステムとセンサ搭載パワーサプライで構成されており、電源部や蓄電池の状態をチェック。内部抵抗値の状態で、取替が必要な時期が近づいたときに、「注意」「寿命」などのアラートが出るようになっている。
わざわざ現地に足を運ばなくても点検ができるため、コストダウンにも繋げることができるところも、本システムのメリットのひとつである。
■IoTを活用した故障診断解析技術
ビルなどでは、一般家庭に使われているようなエアコンとは異なり、大きな熱を発生する空調機が使われている場合がある。それを全体に回すポンプやファンといった設備の、故障検知をするトライアルの紹介が行われていた。
一般的には、こうした大きな熱は水の循環を利用して温度を制御することが多い。そうした設備の異常の兆候を、ディープラーニングを使用した分析アルゴリズムで検出できるようにしている。これらは自動で行われるため、実際に異常が発生したときにアラートを出して、後から現場を訪れて点検するというような利用も可能だ。
このように、設備が自らの状態を診断してデータのみを提供するというパターンもあれば、そのデータを利用したシステムも構築することができる。こちらは、それらの橋渡しとなる技術で、どちらのパターンでも対応できるように開発が行われている。
■アリトン工法&アリトンmini
同社独自の技術として、昭和28年より長きにわたり使われている小口径推進工法の「アリトン工法」。「Earth Little Tunnelling Method」の略語から名付けられたものだが、簡単に地面を掘ることができないようなところでインフラ管路用の穴を掘り進めていくときに利用されている。
マシン部分は同一だが、ヘッド部分が交換できるようになっており、土質など様々な状況に合わせて交換が行える。ただ掘るだけではなく、100メートルという長い距離を掘削した場合でも、その誤差を1~2センチメートル程度に収めることができるというのが特徴だ。
このアリトンを更に小型化し、通常のマンホールなどから利用出来るようにしたのが「アリトンmini」だ。軽合金フレームを採用し、削孔機を電動・分割・小型化することで、マンホール内に搬入して設置が行えるようになっている。こちらもヘッドを交換することで、コンクリート削孔と地盤削孔に対応している。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。