10.12
【World MR News】「DataMesh Live! ライブデモと事例紹介」――Tokyo HoloLens ミートアップ vol.10レポート①
マイクロソフトのMRデバイス『HoloLens』のアプリ開発者が登壇し、VR/MRに向いたアプリやHoloLensアプリ開発の裏話などの紹介が行われるイベント「Tokyo HoloLens ミートアップ vol.10レポート」が、10月6日に日本マイクロソフト セミナールームで開催された。
本稿ではその中から、DataMesh株式会社代表取締役の王暁麒氏によるセッション「DataMesh Live! ライブデモと事例紹介」の模様をレポートする。
DataMeshは、2014年に設立された会社で、中国の北京に本社を持つ。当初はビッグデータとAIのソリューションを提供していたが、そのときに悩んでいたのが分析の結果をどのように顧客に伝えるかというところだ。そんなときにマイクロソフトから『HoloLens』のアナウンスがあり、これがあればわかりやすくデータ分析の結果を伝えることができると考え、MRをビジネスのメインに追加している。
『DataMesh Live!』とは、映画撮影用のジブアームに『HoloLens』を設置し、『HoloLens』を装着している本人が見ている光景を第三者の視点で可視化することができる技術だ。特徴としては4Kに対応しており、リアルタイムにも対応している。
また、マルチカメラにも対応しており、同時に複数の角度からホログラムを撮影して信号を出力することができる。テレビ局よく使われる手法だが、同時に複数の角度から撮影して外部からそれぞれの画面を切り替えるという使い方ができる。さらに、移動カメラにも対応している。
通常のように『HoloLens』自体を被って見ることもできるのだが、そこには、周りから見て『HoloLens』使用者が何を見ているのかぜんぜんわからないという課題がある。MR技術を普及させるためには、その課題を解決していく必要があるのだ。
マイクロソフトからは、ふたつのソリューションが提供されている。ひとつは「Microsoft MRC」だ。MRCのメリットとしては、無料で使用でき手軽に使うことができる。技術的に難しい部分もなく、USBやWi-Fiがあれば直接MRの映像を取り出すことができる。また、『HoloLens』を被っている人の映像をそのまま取り出すこともできる。
デメリットもあり、数秒間の遅延がある。また、人の頭に設置されているデバイスの映像を取り出すことから画面が不安定だ。人の頭は気が付かないうちにゆれているため、酔いやすいのだ。そのほか画質のクォリティが低いという問題もある。
もうひとつは、「Microsoft Spectator View」だ。こちらのメリットとしては、MRCと同じく無料で使えるところだ。完全オープンソースとなっており、改修も可能である。また、開発のコミュニティも活発である。
デメリットとしては、既存のプロジェクトへの組み込みは高度なUnityの知見が必要になるなど簡単ではないところだ。デモを実施するエンドユーザーも、Unityの知見が必要になる。その理由は、設置にもUnityの知識が必要だからだ。
セット自体にも時間が掛かり、長いときは1日掛かってしまうこともある。その上、よくクラッシュしてしまうという。また、基本的に固定カメラしか実用化できない。カメラの移動は可能ではあるが、高度な技術が必要でレイテンシーがひどくなってしまう。そのほか、性能問題もある。
『DataMesh Live!』をデモプレイ
続いて、『DataMesh Live!』を使ったデモが行われた。こちらは、広気ホンダの自動車製造工程(プレス・溶接・塗装・車体組み立て)を、『HoloLens』で再現したものである。
このホンダの事例だが、元々は工場見学向けにMRが使えないかというところから始まっている。その理由のひとつに、中国では工場見学が一大コンテンツとして成立しているためだ。従来は、動画で全体像を説明していたところを、『HoloLens』に置き換えることで立体的に見られるようになるというところからスタートしている。
この案件が、ホンダ中国の社内で高い評価を受け、カーディラーでの販売促進や新人教育研修などにも活用されている。ここから学んだ教訓としては、作ったものを積極的に社内の人に見せることで、『HoloLens』の活用方法が出てくることがあるということだそうだ。
『DataMesh Live!』は3つの場面で活用できる
『DataMesh Live!』は、主に3つの場面で活用することができる。ひとつは、MRを使った展示物を大人数に見せたいときだ。また、MRコンテンツを使ったテレビ局の番組作りや、大人数でコラボレーションをしたいときなどにも有効だ。
ハードウェア構成としては、『HoloLens』とワークステーションを無線で共有。空間の情報は、あくまでも『HoloLens』で取得している。PC上にホログラフがあり、3つの情報をリアルタイムで合成してスクリーンに出力している。
『DataMesh Live!』では目指していないものもある。たとえば全てのキャプチャーカードはサポートしておらず、基本的にBlack Magic Design社の製品に対応している。様々な知見を入れて開発されていることから、今後も無料化の予定はない。
また、フレームのロスがない映像を求める顧客にも合わない。BEVと同じようなパフォーマンスも提供することはできない。つまり、コントロールされた環境で、少々の後処理が行える条件ならばコストパフォーマンスに優れているといえる。
現在、ホログラムのズームイン・ズームアウト機能も開発中だという。さらに、空間情報を取得するために『HoloLens』を使用しているが、それをAndroid端末に置き換える研究も行っているそうだ。
続いて、『DataMesh Live!』の事例がふたつ紹介された。ひとつはMRとAI接客ロボットを組み合わせたものだ。中国の富裕層向けに、将来子供を海外留学させるときのアドバイスをしてくれるものとして作られている。撮影は『DJI Ronin MX』で行われている。『DJI Ronin MX』はドローンに取り付けることもでき、将来的には空撮も可能になるという。
もうひとつは、MRを使ったマルチプレイヤーゲームだ。実際の空間と融合して、リアルタイムの『スター・ウォーズ』が体験できるところである。パネルの裏に隠れることで、バーチャルの弾を避けることができるようになっている。手に持っている銃にはセンサーが取り付けられており、銃からも弾が飛んでいるように見える。
ちなみに、これぐらいの規模のゲームになると『HoloLens』の機能だけでは足りず、別のセンサーも『HoloLens』の上に取り付けているという。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。