2018
10.10

【World MR News】日本マイクロソフト、「公共機関におけるクラウドサービスの導入・利用促進を支援する新たな取り組みについて」を10月4日より提供開始

World MR News

日本マイクロソフトは、10月4日に政府・自治体・教育・医療等の公共機関におけるクラウドサービスの導入や移行、利用促進に向けた支援プログラム「マイクロソフト 公共機関向けクラウド利用促進プログラム」の提供を開始した。

日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤知成氏。

日本政府は、「ソサエティー5.0」という、社会を変革させるというテーマでAIやIoTといったデジタルトランスフォーメーションを促進する政策を進めている。これを具現化する「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係わる基本方針」として、今年の6月には「クラウド・バイ・デフォルト」を打ちだしている。

このような背景の中で、日本マイクロソフトとしては日本の社会をより良くしていくという観点から、政府の政策と連携を取りながら様々な取り組みを日本だけではなく米国本社を巻き込んで検討してきた。

今後クラウドの展開やその延長線上にあるAIの展開については、高度な倫理観念が求められてくる。同社では、世界規模で倫理の取り組みを行っており、高度な技術を使っていくための規範を現在作成中だ。

ユーザーのセキュリティやプライバシーを守るのを第1優先として、会社全体としてコミットしているという。

日本の公共機関向けのクラウドを進める上で、同社のグローバルの力を借りてすでに成功しているアメリカ・イギリス・ドイツ・オーストラリア・シンガポールといった先進国の、公共機関向けクラウドの状況とニーズ、セキュリティ要件をどのようにクリアしているのか調査を実施している。今後、公共機関向けのクラウドやAIの展開が進んでいく中で、これらの経験や知見を提供していく予定である。

海外デジタルトランスフォーメーションの事例としては、政府機関、行政機関、ヘルスケア、教育機関においての一例として、英国内国歳入関税庁(HMRC)やオーストラリア クイーンズランド州における災害対策、イタリア国立労働災害保険協会における情報管理やワシントン大学における取り組みなどがある。

このように、マイクロソフトのグローバルな組織としては、情報が蓄積されている状況だ。日本はこれから本格的に進めていくが、政府機関、自治体、教育機関、医療機関の期待に応える準備が整っているのだ。

またCSRの観点で、「ID2020」と呼ばれるクラウド・テクノロジーを使ってIDを持っていない人にIDを提供する取り組みも行っている。

個人を特定する情報が管理されている日本ではあまり考えられないことだが、アフリカなどでは戸籍すら持っていない人も多数存在している。そうした人たちのために、同社の技術を用いて個人を特定して認識できる仕組みを提供している。

こうした国内外のこれまでの実績を結集し、今回提供することになったのが「マイクロソフト 公共機関向けクラウド利用促進プログラム」だ。パブリックセクター事業本部長を務める佐藤知成氏が4月に就任。「人の一生に寄り添うマイクロソフト」という方針を発表して以来、6月に教育機関向けの方針説明を実施。また、9月にはヘルスケア分野におけるクラウド利用を促進する体制の強化を発表している。

さらに中央官庁や中央自治体向けに提供する、日本政府が提唱している「クラウド・バイ・デフォルト」に共感し支援する立場として、今回の発表が行われることとなった。その骨針は、「ガバメント クラウド早期導入支援」「ガバメント クラウドエキスパート」「ガバメント パートナーソリューション」である。

個々の領域だけではなくひとつの地域を見た場合、公共医療機関、公共教育機関、自治体というように、複数にまたがる領域もある。地域の観点では、シームレスな住民サービスが求められている。縦割りのインダストリーでの活動だけではなく、クラウドにより生活を良くする地域に根ざした活動も行っていく。

同社のAzureなどのクラウド環境は、日本の公的機関にCSマーク:ゴールドという認定を取得している。

5つの施策でクラウド利用促進プログラムに取り組む

同社のグローバルの状況を収集し、政府機関、自治体、医療機関、教育機関におけるパブリッククラウドの利活用が、どのようなモノであるべきか同社で長期間にわたり検討してきた。

それと同時に、同社が過去から付き合いのある政府や自治体、医療機関、教育機関と国内大手パートナーともディスカッションを重ね、公共機関向けのクラウド促進プログラムを作っている。

業務執行役員 パブリックセクター副事業本部長 光延裕司氏。

そうした中で、懸念事項として上がってきたのがセキュリティだ。技術検討をしていく中で、現在のパブリッククラウドは進化しており、すでにオンプレミスの環境とそれを上回るセキュリティの実装は済んでいる。そこにおける懸念事項はないものの、インターネットに接続されたパブリッククラウドは、感情的な面から不安が大きいと感じられてしまう。ここがもっとも大きな懸念となっているのだ。

そうした認識に基づき、パブリッククラウドがセキュリティ的にも安全で、コストメリットや拡張性といった大きなメリットがあることをしっかり伝えるために、今回のプログラムを発表している。このプログラムでは、政府・行政機関、ヘルスケア、教育機関の3つの分野を5つの項目に分けている。

ひとつ目は、人材育成プログラムだ。これは、資格取得特の支援と集合形式でのトレーニング、ウェブを使ったオンライントレーニングを、各レベルに応じた形で実施する。目標は、2020年までに4万名を目指している。

クラウドファーストという形で先行している英国において、3年間で3万名というプログラムを実施している。日本ではそれよりも期間を狭めて、目標人数も増やしているというわけだ。

ふたつ目は、公共機関向け災害対支援だ。これまでも、自治体からの要請があったときに迅速に対応出来るようにしている。

たとえば、西日本豪雨の際に被害にあった広島県や愛知県の被災自治体に支援を行っている。救援物資が滞留してしまう状況を、ポータルサイトを使って情報を提供。救援依頼や地図など、紙情報が散乱している状況を、Excelなどを使って整理していく仕組みを提供している。さらにSkypeを使って、被災地と本部との情報連携を行っている。

こうしたノウハウは、社内貯まっておりこれから活かしていきたいと考えている。そのうちのひとつとして、災害対策セミナーや体験型ワークショップを国内の主要箇所で実施していく。これにより、クラウドを活用した災害対策の有益性やどういった形で使えるのかといったところを広めていく。

また、災害対策支援を希望するところに、協定を締結していく。災害発生前の平時に、情報交換や訓練をして、災害対策や防災訓練のあり方を協議し体制構築の支援を行っていく。また、非常時を想定したクラウド活用の防災訓練も、これまでのノウハウと共にサポートしていく。

実際に災害が発生したときは、これらを活かしてすぐに対応出来るように体制構築をサポートしていく。これらの協定については、同社の担当者が47都道府県に対してこれから申し入れをしていく予定とのこと。

3つ目は、クラウドの早期導入支援の提供だ。佐藤氏が就任して以降、デザインシンキングに力を入れている。これは社員やユーザーを品川オフィスに招き、これまで何度かデザインシンキングワークショップを実施している。

デザインシンキングのノウハウを活かし、今後のクラウド導入における既存業務プロセスの見直しや、サービスデザインによるプロセスの見直しなどを、ユーザーと共に進めている。

単純なクラウドサービスの導入だけではなく、業務プロセスやサービスデザインを取り入れることで、効率的なクラウド導入をユーザーに実施してもらうことができる。また、ユーザーの課題解決に向けて、同社が手伝える環境を作っていくのが目的だ。

日本政府がデジタル・ガバメント実行計画で、サービスデザイン対象のサービスを公表している。それらを中心に、提案をしていく。今後1年間で、50ほどのシステムを対象にワークショップを実施する予定だ。

4つ目は、日本マイクロソフトの社内体制として公共機関向けのエキスパートを育成していく。「クラウド・バイ・デフォルト原則」のガイドラインに準拠した形で、今後公共機関におけるクラウドの検討が進んでいく。そうしたユーザーのために、実際のクラウド検証や効果測定ができるエキスパートを社内に200名育成していく。これは、公共機関向けにスムーズなクラウド導入を検討してもらえるようにするのが目的だ。

最後はパートナーソリューションだ。公共機関においては、同社のパートナーのソリューションが数多く採用されている。今後1年間において、政府、自治体、病院、医療危難、教育機関などでの働き方改革や、住民支援サービスなどのソリューションが、数多く出てくる。

それらを、同社のクラウドで効率的に提供できるようにしていく。同社のAIやIoTの機能を使ったソリューションを、今後1年間で200種類揃えていくとのこと。

すでにこれらの取り組みは、アクセンチュア株式会社、西日本電信電話株式会社、日本電気株式会社、東日本電信電話株式会社、富士通株式会社といった賛同パートナー企業と合意している。また、パートナーは今後も増やしていく予定となっており、地域に根ざしたパートナーやSIerとも連携をし、広めていきたいと考えている。

同社では、これらの施策を推進することで、公共機関向けのクラウド分野でNo.1になることを目指して活動していく予定である。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。