2020
06.18

【World MR News】Azureを活用したデジタルツインの実現――「IoTビジネス共創ラボ 第15回勉強会」

World MR News

IoT ビジネス共創ラボは、6月10日にPepperやドローン、XRに感心がある事業企画やIT管理部門向けのイベント「IoTビジネス共創ラボ 第15回勉強会」を開催した。今回はオンラインでの開催ということもあり、日本全国から参加が可能となっていた。そのため、参加枠も大幅に増やされ183名も参加した大イベントとなった。

本稿ではその中から、特に気になる部分をピックアップしてお届けする。

Microsoft Build 2020: Azure IoT 関連最新情報

日本マイクロソフトの福原毅氏からは、ここ半年間の「Microsoft Build 2020: Azure IoT 関連最新情報」というテーマでセッションが行われた。

セキュアなIoTデバイスを安く作るというコンセプトの「Azure Sphere」を、2020年2月より一般提供を開始した。その一方で、リアルタイム処理はできないため「Azure RTOS」を2020年6月より一般提供開始している。

また、Windows 10 IoTのロードマップも発表された。いくつか特徴があるが、そのうちのひとつがWindows上でLinuxのモジュールが動くようになった。完全なLinux環境のAzure IoT Edgeを平行して動かすことができ、Linuxの豊富なIoTエコシステムが利用可能になる。またNXPのチップを使い、低い調達コストで利用ができるようになった。

「Azure SQL Edge」は、Linuxコンテナ上のSQLサーバ2019をベースに開発が行われたものだ。フットプリントが非常に小さい、500MBで動かすことができる。ユニークな点は、ストリーム・アナリティクス相当のエンジンが入っているところだ。

また、2020年5月から「Live Video Analytics on IoT Edge」も提供されている。カメラから画像をキャプチャーして、必要なところにパブリッシングしたり分析用のAIエンジンに渡したりといったことができる。

Azureのサービスのひとつに「デジタルツイン」がある。接続されたソリューションが進化を続ける中で、ビジネスは環境全体を接続することを求めている。そこで、オペレーションを最適化してコストを削減して、画期的な体験を提供していきたいのだが、環境をモデル化してデジタル世界に構築していくことは、最も整理されたビジネスでも難しい。

そこで「デジタルツイン」というアプローチで、現実世界のモノ、場所、ビジネスプロセス、人を複製するという手法を利用するのだ。

例としては、ドイツの「Willow Twin」がある。こちらでは建物のデジタルツインレプリカを作り、建設時に生成された静的情報とライブの動的な情報統合している。そこで活用されているのが、「Azure Digital Twinsプラットフォーム」だ。

建物をデジタルツインにすることで、現実世界ではなくデジタル世界とデジタル環境を表示してテストを実施することができる。システムの動作チェックやシステムシミュレーションの実行、人の流れの分析を行うことで、信頼できる結果が得られるのだ。

「Azure Digital Twins」は、「Digital Twins Definition Language(DTDL)」を使ってモノの関係性を定義していく。こちらは、業界標準のJSON-LDを使用している。関係性を定義すると、イベントシステムやビジネスロジックが実行できるようになる。

DTDLを使って関係性を表現するにあたり、業界標準を作っていきたいという思いから「Digital Twin Consortium」を2020年5月18日に立ち上げている。

また、「Mixed Realityサービス」として、「Azure Digital Twins」と「Azure Remote Rendering」「Azure Spatial Anchors」の3つを提供している。「Azure Remote Rendering」は、2020年5月にパブリックプレビューになっている。「Azure Spatial Anchors」は、現実世界に3Dをマップングするサービスとなっている。

COVID19に対応するためにマイクロソフトが取り組んでいること

続いて、「COVID19へ対応するためにマイクロソフトが取り組んでいること&皆さんとできること」と題して、日本マイクロソフト IoT影響本部の村林智氏より紹介が行われた。

マイクロソフトでは、新型コロナウイルス(COVID19)に対応するためのソリューションを用意している。2020年3月24日に、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏が「COVID19に対抗するために団結していこう」と呼びかけている。

また、こうした事態の中でマイクロソフトのクラウドサービスはしっかり継続されているのかという問い合わせも多かった。そこで、3回にわたりアナウンスを行っている。

情報が拡散してわかりにくいという意見もあったことから、それらを集約した支援情報サイトも2020年4月20日より公開。ここでは、リモートワークや現場社員からの業務支援、業種向けソリューションなどの情報を提供している。

COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) 対応に関する支援情報

https://aka.ms/resilient-japan

Azure IoT HubとIoT Edgeを活用した”三密対策”ソリューション「comieru LIVE」の開発プロジェクトへの道のり

最後は、「Azure IoT HubとIoT Edgeを活用した”三密対策”ソリューション『comieru LIVE』の開発プロジェクトへの道のり」と題して、ヘッドウォータースの長澤良行氏よりセッションが行われた。

今回のテーマである『comieru LIVE』の前に、『comieru』というサービスがあった。こちらはステレオカメラを部屋の出入り口に取り付け、人の出入りでエリア内の人数をカウントして混雑情報を表示するというものである。

こちらはアイコンで表示していたのだが、それを見える化したいという要望があり、立ち上がったのが『comieru LIVE』というソリューションである。

カメラに接続したエッジデバイスで位置情報を取得し、静止画の上にアイコンをマッピングして視覚的に混雑情報を表すようにしている。

『comieru LIVE』のシステム概要は、カメラから流れる映像を解析して位置情報を検知して、その位置情報のみをAzureで構築しているクラウドプラットフォームに送信。そして、静止画にアイコンをマッピングしているといった感じだ。

基盤自体は元々あったため、1ヵ月でプロトタイプを作ろうというところからプロジェクトがスタートしている。Azureサービスを上手く活用できたのも、すぐにプロダクトを作ることができた理由のひとつだという。

しかし、実証実験は大変だった。元々予定にはなかったが、リリースに向けて見えるものが欲しいということから、急遽交渉をしている。そのときに、店舗にハードウェアを設置する敷居が高く感じたところだそうだ。

可視化の部分については、現在も試行錯誤が続いている。また、当時はラズパイも候補になっていたが、IoT Edgeで使うことができなかった。だがラズパイ4が登場することで、今後使いどころが増えると考えている。

同社はキャッシュレスサービスの実績もあるため、モバイルオーダーペイの連携も今後はやっていきたいそうだ。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。