03.30
【World MR News】ユニークなAR/VRデバイスや関連技術が多数発表! 「CES2020 Recap by MESON」レポートその②
MESONは、1月22日に東京・渋谷のGoodpatchで世界最大のテクノロジーの祭典「CES2020」で発表された最新テクノロジーやトレンドなどを紹介する報告会「CES2020 Recap by MESON -2020年のAR/VRトレンド紹介-」を開催した。
本稿では、MESON CEOの梶谷健人氏と本間悠暉氏、伊藤淳氏、比留間和也氏によるセッション「CES2020の注目展示とそこから読み取る技術トレンド」をピックアップしてご紹介していく。
まずは、同社も出展していた『Nreal Light』のブース。こちらでは、未来のイマーシブな体験には何があるのかというテーマで展示が行われていた。SynamonとKDDIが開発したゾンビを倒していくゲームなど、3つのブースを用意。また、Androidアプリを『Nreal』上で開くことができるプラットフォーム「Nebula」の発表も行われ、こちらも注目を集めていた。
今回の「CES2020」では、『Nreal Light』とよく似たスタイルのARグラスも多数出展されていた。本間氏は『am glasss』『Pacific Future, Glow』『MADGAZE inc.,RealX』『0glasses』といったARグラスを体験しに行ったが、解像度や視野角、SLAM、デザイン、つけ心地のいずれかが欠けており、あらためて『Nreal』のクォリティの高さを実感したそうだ。
『LetinAR』は、ピンホール型のARグラスグラスだ。かなりカジュアルなデザインになっているが、その分視野角は狭くなっている(20度ほど)。これはグラス型のデザインを実現するために、光源となるディスプレイを小さくしたのではないかと思われる。
こちらはそのまま製品化を目指したいというよりも、技術デモとして展示したかったという狙いがあったようだ。
中国のハードウェアメーカーXimmersが展示していたのは、SLAMありで視野角59度のARグラス『RhinoX』だ。590グラムと重めで、実際に掛けて見ると『North Star』のようなずっしりとした感じがある。メーカーとしてはエンターテイメント向け用途と考えており、それらを扱っている企業に販売していきたいと考えているそうだ。
『RealMax』は、視野角100度という広さが特徴のARグラスだ。上部に『Leap Motion』が取り付けられており、ハンドトラッキングを行いながらAR体験が行えるというところも特徴のひとつである。
視野角100度のARグラスは他にもあまりない特徴だ。そのため、目の前にドラゴンや車が現れると没入感もすごい。しかし残念な点としては、SLAMがガタついたり鮮やかではなかったりというところだという。
『iGlass』は視野角80度、解像度4Kのグラスだ。目の前で見るとかなり綺麗に見えるが、SLAMは付いていない。開発側では、自宅で映画を観るなどの用途を想定しているそうだ。
これ自体はお金をかければ作れるというものといえるが、『Nreal』が純粋に進化を遂げていったときに、4Kで広い視野角を持つようになると体験の質が変わってくると感じさせるものではあったとのこと。
『XTAL』は、両眼合わせて8Kの超高解像度で180度の視野角を持つVRゴーグルだ。こちらのブースでは、飛行機のコックピットに座って映像が体験できるというデモが行われていた。遠方を見ても解像度が高いこともあり、粒感が感じられないぐらいよく見えていたそうだ。
ゴーグル自体はヘルメットに取り付けられているスタイルで、かなりゴツ目である。そのため、重量もある。ターゲットはエンタープライズ向けで、空軍のシミュレーションなどに使われることを想定している。
今回の「CES2020」で、最も話題となったといっても過言ではないのが、パナソニックのVRグラスだ。こちらは実際に体験できたのは、メディア枠に限られていたそうだ。
特徴としては、パナソニックとデバイスメーカーのKopinが共同開発したマイクロ有機ELパネルを搭載しており、磁性体流体ドライバーを採用したイヤフォンやデジタルアンプが搭載されている。現状はPCに接続されているが、今後スタンドアロン化も目指しているとのこと。
PicoVRの小型VRグラスは、パナソニックのVRグラスと同じぐらいの大きさで小型軽量化されているところが特徴のデバイスだ。日常使い出来そうな仕上がりになっており、これまでVRを体験したことがなかった人でも付けられそうだという。
画質は片目1600×1600のLCDが搭載されており、ドットの密度が高く映像は美しい。軽さも合わせて、これで2時間映画を観るのにも便利そうなデバイスとなっている。
LetinARブースではグラス以外にも、スマートイヤフォンのようなデバイスも展示されていた。こちらは、爆音が流れるブース内の人と通話ができるというものだ。話している相手が爆音の部屋にいる状態でも、話し声だけを抽出してくれるので普通に会話をすることができる。こちらには自動翻訳機能も搭載されている。
ちなみに、爆音が相手に伝わらないのは、耳の内側の鼓膜側から音声を抽出しているからである。
スタートアップが密集している展示会場のEureka Parkでは、スピーカー付きのグラスも多数出展されていた。『Bose Frame』のようなスピーカー付きのものから、コントローラーが付いたゲーム向けのものなど、ユニークなデバイスが多かったそうだ。
ソニーが出展していたのが、『Light Field Display』だ。『Looking Glass』のような裸眼で立体視ができるディスプレイだが、カメラで見ている方向の視差を追従。見た方向からの映像をレンダリングして表示してくれるというものである。
目の前にガラスがない分、『Looking Glass』よりも没入度は高い。出展されていたものは試作品で、販売などの予定は未定だ。
同じくソニーに出展されていたのが、『360 Reality』だ。テレビのスピーカーをリッチにするというもので、通常のテレビは下側にスピーカーが付いているため没入感はないがこちらテレビ上部にサブスピーカーを付けることで没入感が高まるように作られている。
これにより、立体感があるようなサウンドが楽しめるようになっている。
デルタ航空が技術デモとして展示していたのが『Parallel Reality』だ。映画『マイノリティレポート』のような世界観で、ひとつのディスプレイでありながら見ている人に最適化された情報が表示されるようになっている。
体験では4人同時に行われていたが、最初に名前と行き先と言語を設定し、同時に同じディスプレイを見る。ディスプレイは、数千個の光源を別々の方向に出せるように作られている。これにより、見ている人に合わせたものをその人にだけ見えるように表示することができるのだ。
ディスプレイとは別にカメラが設置されており、顔を認識してどんな移動をしているかトラッキングしている。そのため、場所を動いても自分のための情報が表示され続けるようになっている。こちらはすでに空港での実用化も決まっているという。
AR/VR関連に関しては、NrealやVuzixはプラットフォームやユースケース作りに注力しており、それ以外の追従しているその他の出展についてはまだまだクォリティの高いものとは言えない状況であった。そのため、デバイスにおけるブレイクスルーは昨年と比較すると今回はあまりなかったという。
MaaS関連では、今回の「CES2020」で最も注目されていたのが、トヨタの「Woven City」だ。他社がコネクテッドカーに力を入れているところに、トヨタがひとつ上の次元であるコネクテッドシティーを発表した。
こちらは、同社が所有する東富士工場の跡地を使い、あらゆるモノやサービスが繋がる「Woven City」を作り上げるという構想である。コネクテッド、自律走行、シェアリング、電動化のCASEと呼ばれる4つの文脈に注力。こちらに同社の技術開発を1ヵ所に集め、都市スケールで検証を行っていく。21年初頭に着工を開始するほか、建築家にビャルケ・インゲルスを起用するなど、その本気度がうかがえる。
「Woven City」では道を3つに分けている。ひとつは自律走行用、あとは歩行者用とパーソナルモビリティである。車の性能同士の戦いから街単位に戦場が切り替わっていく中で、トヨタがその戦陣を切った形だ。こちらも今後の動向を合わせて注目していきたい。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。