2020
02.04

【World MR News】『HoloLens 2』を活用した次世代ワークスタイルソリューション「コールセンター・バーチャライゼーション」をベルシステム24、デロンギ、日本マイクロソフト、DataMeshの4社が協同開発

World MR News

ベルシステム24ホールディングス、デロンギ・ジャパン、日本マイクロソフト、DataMeshの4社は、12月2日にメディア向け記者会見を実施し「コールセンター・ワークスタイル・イノベーション・プロジェクト」を開始すると発表した。

同プロジェクトは、Mixed Realityを実現するヘッドマウントディスプレイ『HoloLens 2』と、DataMesh社の3Dホログラム技術を活用したMRアプリを組み合わせ、デロンギ製品のユーザーサポート業務を、コールセンター拠点以外の場所でも行えるようにするためのソリューションだ。

コールセンターのアウトソーシング事業を手がけているベルシステム24ホールディングスでは、全国に36拠点、約3万人のコミュニケーターが働いている。今後、働ける人の人口は長期的に減っていく傾向にあるが、「企業側が考えなければいけないのは、我々の都合に合わせて働いて頂ける人がどんどん減っていく」ということだとベルシステム24ホールディングスの柘植一郎氏はいう。

本当の労働人口自体は激減しているかというと、そうではない。働きたい気持ちがあっても、これまでの働き方ができない人が増えているのである。その部分のワークスタイルイノベーションが必要であるというのが、同社の原点となっている。

▲ベルシステム24ホールディングス 代表取締役 社長執行役員CEO 柘植一郎氏。

ベルシステム24ホールディングスのセンターには、デロンギの製品がずらりと並べられており、必要に応じて実機の場所にコミュニケーターが行き、分解して確認ができるようになっている。

しかし、こうした状況では自宅に製品を置くわけにもいかず、対応することができないということになってしまう。また、介護の問題や子育てなど、働く人の側も時間や場所などの制約が増えている。しかし、これを『HoloLens 2』などのMixed Reality技術を活用することで、時間と場所の制約から解放して働くことができるようになるのだ。

デロンギでは、同社が考える次のサポートシステムを実現するのにMixed Reality技術が活用できると考え、ワクワクしていると杉本敦男氏は語る。同社はイタリアのベニスに本社を持つ企業だが、その原点は1902年に創業したときのヒーターだ。それはユーザーの満足する物を本格的に作っていくということをDNAにしており、現在でもそれが商品展開に活かされているからである。

今回の取り組みは、デロンギにとってもサポートシステムを次の段階に進めるものだと捉えている。ユーザーサポートを行う場所が狭まっていく中で、それをバックアップしていくことが重要だと考えているからだ。Mixed Reality技術を活用することで、ユーザーのニーズを深めて判断し、同社のキャッチフレーズである「Better Everyday」を具現化しようとしている。

▲デロンギ・ジャパン 代表取締役社長 杉本敦男氏。

DataMeshは、1年前にベルシステム24ホールディングスと今回の件について協議を開始している。技術面でサポートしている同社のアプリを使うことで、デロンギの製品であるコーヒーマシンなど重たいものも、3DのCGとして指で手軽に動かせるようになる。

▲DataMesh 代表取締役 王暁麒氏。『HoloLens 2』を活用することで、本物そっくりのコーヒーマシンを手軽に扱えるようになる。

今回の取り組みでは、DataMeshの中核製品である『DataMesh Director』を活用している。内容はシンプルで、コーヒーマシンのような3Dデータをクラウドにアップロードし、『Director Editor』というPCのアプリを使ってクラウドから3Dモデルをダウンロードする。そこで、サポート用のシナリオを編集していく。その後、再びクラウドにアップロードを行う。

クラウド側で一元管理されたシナリオを、現場にある各々の端末に配布していく。それがオペレーターによって再生されるといった感じになっている。

現在は実証実験のフェーズだが、これから本格導入に向けて3つのスケールアップポイントがあると、DataMeshの王暁麒氏はいう。ひとつは3Dモデルの制作だ。コールセンターでサポートしている商品点数はかなりある。そのため、3Dモデルをどのように作成していくかというところも課題となっている。まずはCADデータからの変換を行うが、CADデータが存在しないものもあり、その場合は社内の3Dモデル工場という舞台を持っており、安く早く作ることができるという。

ふたつ目はシナリオの編集だ。こちらも同様にかなりの数が必要だ。しかし『Director Editor』を使うことで、『パワーポイント』を編集するような要領でシナリオを編集していくことができる。そこで、業務に詳しいユーザー部門に編集をしてもらうという。

3つ目はクロスデバイスのサポートだ。ベルシステム24ホールディングスには、多くのオペレーターが在籍している。より多くのメリットを体験してもらうために、『HoloLens 2』以外のデバイスでも再生できるようにしたいという要望がある。現時点では『HoloLens 2』とiOSデバイスにのみ対応しているが、近日中にAndroidにも対応する予定だ。

日本マイクロソフトでは、11月より法人向けに『HoloLens 2』の出荷を開始している。こちらはいわゆるIoTの新しいデバイスでもあり、これからのコンピューティングを実現するものでもある。デバイスの中には、CPUやウィンドウズなども搭載されており、PCやケーブルレスで使用することができる。

地域や距離に関係なく、新たな人が繋がって新しい形で働くためのデバイスとして取り組んでいるものだ。VRやARなどのXRではエンターテイメントが注目されがちだ。しかし、マイクロソフトでは「人に新しいイノベーションを実現するための、想像力を最大化するための仕組み」だと、日本マイクロソフトの手島主税氏はいう。

▲日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏。

『HoloLens 2』は、リアルなビジネスの世界で使われるもので、体験型で日常世界を変えるというためのものではない。そのため、遠隔支援やトレーニングや作業支援、視覚や共同作業、コンテキストデータ アクセスといった用途で活用されている。

ここで実現しようとしているのは、ファーストラインワーカーの新しい働き方だ。従来までの生産性や効率性ではない世界を実現していくことが、日本の働く人の人口削減を含めて重要だという。

『HoloLens 2』にはアイトラッキング機能が搭載されている。これにより、コールセンターのオペレーターの視線もトラッキングすることができるようになる。最適なオペレーターの行動を分析してナレッジを提供するといったことも取り組んでいく予定だ。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。