06.27
【World MR News】日本のeスポーツ市場は2022年には100億円規模へ拡大する! 「新経済サミット〔NEST〕TOKYO 2019」レポート②
6月20日に開催された「新経済サミット〔NEST〕TOKYO 2019」。こちらは、一般社団法人新経済連盟がイノベーション(創造と革新)とアントレプレナーシップ(起業家精神)、グローバリゼーション(国際競争力の強化)の促進を目的に行われた日本最大級のグローバルカンファレンスである。
今回は5GやAIなど話題の最新技術がテーマということで、会場内ではスーツを着込んだビジネスマンを多数見かけた。そんなか、ひときわ異彩を放っていたのが「eスポーツ」をテーマにしたセッションだ。ちなみにこのeスポーツとは、いわゆるビデオゲームを使ったゲーム大会のことを指した言葉である。
こちらでは、サイバーエージェント常務取締役でCyberZの代表取締役社長を務める山内隆裕氏が登壇。「eスポーツはここまで来た」というテーマで、今現在の日本におけるeスポーツがどのような状況なのか紹介が行われた。
eスポーツの市場規模は2021年には約1821億ドルまで拡大
サイバーエージェントでは、インターネット広告事業やメディア事業、ゲーム事業に加えて、第4の柱としてeスポーツに注力をしている。
eスポーツの市場規模は、2018年の約993.5億ドルから2021年には2倍となる約1821億ドルまで成長すると言われている。規模もかなり大きくなってきており、マンチェスター・ユナイテッドがeスポーツチームを持つというような、大きなプロエンターテイメントのビジネスとして徐々に展開されている。
その売り上げの内訳は、市場規模の42パーセントをスポンサーが占めている。そのほか、放映権が23パーセント、広告が17パーセントといった感じだ。
こちらはゴルフの6500万人に対して9000万人もプレイヤーがおり、すべてのゲームを累計すると2億人以上ものプレイヤーが存在すると言われている。先ほどの『LOL』の世界大会の決勝戦「League of Legends World Championship Final」では、視聴者数が約1億人、最高同時視聴者数が4400万人と、フィジカルなスポーツを凌駕するほどの人気となっている。
TOKIOもCMに出演していたバトロワゲーム『フォートナイト』の大会「Fortnite World Cup」では、賞金総額110億円と世界で最も高額な賞金が出る大会として話題となった。また、放映権に関するビジネスも活性化しており、権利を購入するところが増えている。
日本のeスポーツ市場は2022年には100億円に
ここまでは世界のeスポーツの話だったが、日本のeスポーツ市場規模は、2018年で約50億円と推定されている。こちらも2022年にかけて2倍に成長するといわれている。その内訳に関しては、海外と同様にスポンサー料が8割を占めている。
放映権などはまだまだ小さいが、海外と同様に広がっていく。また、eスポーツファンは383万人で、4年後には786万になる。ゲームの動画などを、見てゲームを遊びたいという人や興味を持つ人が増えていくと予想されている。
サイバーエージェントでは、カードゲーム『Shadowverse』のプロリーグを開催している。2019年シーズンからは、読売新聞社が「ジャイアンツ」ブランドのeスポーツチーム「G×G」を発足しており、プロとして年俸制で選手と契約をしている。こちらはプロとして成り立つのかというという部分も含めて、テストとして挑戦している。
eスポーツリーグはほかにも『クラッシュ・ロワイヤル』といったスマートフォンゲームから『PUBG』といったバトロワゲームまで、いくつか登場し始めている。また、NPB(日本野球機構)が主催するeスポーツリーグや大会も開催されている。
海外では桁外れの賞金も出ているが、日本でも『Shadowverse』の世界大会でよしもとLibalent所属のふぇぐ選手が、優勝賞金100万ドル(約1.1億円)を手にしている。
ここ1~2年のトレンドとして、民法のテレビ局がeスポーツを題材にしたテレビ番組の放映を開始している。また、2018年2月1日には、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSPA)、一般社団法人e-sports促進機構、一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF)の3団体が統合したeスポーツの団体「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」が設立されている。
こちらはプロライセンスの発行やeスポーツの認知度向上、オリンピック競技への働きかけなどを行う団体として活動している。
eスポーツには様々なプレイヤーが増えてきている。その中には、教育機関や企業による協賛、大会主催など、様々な形式で参入してきているのだ。
このように、日本のeスポーツシーンでは、リーグが相次いで発足しており地上波キー局によるレギュラー番組も開始されている。また、ゲーム関連以外の企業がeスポーツに参入している。社会貢献では、地方活性化や若年層との接点、障害者との関わりという面も持っている。
こうしたことを踏まえて、eスポーツがさらなる発展をしていくにはいくつかのポイントがある。そのひとつが、習慣や文化だ。日本でも賞金総額1億円を超える大会が行われるようになってきたが、放映権などもあり海外では賞金総額28億円という大会もある。
ちなみに賞金総額28億円の世界大会は、『Dota2』というゲームの売り上げの一部が賞金となっているため、これだけ高額が出せるのである。一方、日本の大会はゲーム会社のスポンサーのみであるため、限界があるのだ。
韓国の『LOL』トッププレイヤーであるFaker選手は、推定年収3~5億円と言われており、サッカーのトッププレイヤー同様に大スターとなっている。
ちなみに、先ほどの『Dota2』のようにゲームの売り上げを大会の賞金に回すというのは、日本では法律の問題がありできない。そのため、日本にあったやり方を模索していくことがeスポーツの発展に繋がると、山内氏はいう。
もうひとつeスポーツの問題点として、オリンピックが開催されるということもあり会場がほとんどいないという状況がある。大会自体を主催したいというニーズはあるものの、場所がないのが現状である。そのため、施設などの環境整備をしていく必要があるのだ。
海外における先進的な取り組みとして紹介されたのは台湾だ。こちらは日本の文化庁に当たる体育省にeスポーツ部門が開設された、これにより、eスポーツ大会のスポンサーになった企業には、税金の軽減処置が行われている。
また、アメリカの例では、全米州立高校協会がeスポーツを公式なスポーツ種目として認定している。これまでスポーツとあまり縁がなかった子供たちが、クラブ活動に参加するようになったという。
さらに中国の杭州市「eスポーツタウン」が2022年までに作られる予定だ。こちらでは、eスポーツに特化した学校やホテル、病院開設など14の計画が進行している。
日本におけるこれからの取り組みとしては、マイナースポーツからメジャースポーツになるような大きな座組にしていかないと興業として成立しない。それには、国民、企業、国による三位一体の取り組みが必要となるのだ。
『ストリートファイターV』のトッププロゲーマーによるエキシビジョンマッチも開催
今回のイベントでは、『ストリートファイター V アーケードエディション』を使用した、プロゲーマーによるエキスビジョンマッチも開催された。特に優勝しても賞金が出るという主旨のイベントではなかったが、ハメコ。氏となない氏による実況解説に加えて、ウメハラ選手、ボンちゃん選手、マゴ選手、ときど選手が登場。4選手によるシングルイリミネーショントーナメント方式で試合が行われた。
1回戦目はウメハラ選手とボンちゃん選手、2回戦目がマゴ選手とときど選手という対戦の組み合わせに。その結果、ウメハラ選手とマゴ選手が勝利し決勝戦へとコマを進めた。先ほども少し触れたが、会場にはどちらかというとゲーマーよりもビジネスマンといった感じの人が多かったのだが、ゲームが進んでいくにつれてトッププロたちの一挙手一投足に思わず声が出るという場面も見かけることができた。
一見難しそうなゲームではあるが、格闘ゲームの良いメントしてひとつのゲームスパンが短く、体力バーなども目に見える状態にあるため、状況の優劣や勝ち負けがハッキリとわかるというところがある。最初は押されて劣勢だったところをギリギリで耐えしのぎ、逆転勝利するという展開がわかりやすいのである。
イベントが開始される前までは、プロゲーマーを呼んでトークショーでも行われるのかと思っていたのだが、そうしたものよりも、トップの戦いを目の前で見せられたほうが、1000の言葉より説得力があったかもしれない。
eスポーツは単なるゲーム大会という枠を超えて、ビジネスとしても大きな注目を集めつつある。下記に記載したようなeスポーツに関する書籍もいろいろと出てきているので、もっと深く知りたいという人は、そちらに目を通してみることをオススメする。
■『プロゲーマー、業界のしくみからお金の話まで eスポーツのすべてがわかる本』
黒川 文雄 (著)、 加藤 賢治 (編集)、 染谷 昌利 (編集)
出版社: 日本実業出版社
■『1億3000万人のためのeスポーツ入門』
但木一真 (著、 編集)、 謎部えむ (著)、 live (著)、 西谷麗 (著)、 佐々木まりな (著)、 松本祐輝 (著)、 高木智宏 (著)
出版社: NTT出版
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Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。