2019
06.05

【World MR News】国内最大の電気設備総合展示会「JECA FAIR 2019 ~第67回電設工業展~」の関電工ブースをレポート!

World MR News

5月22日(水)から24日(金)までの3日間、東京ビッグサイトで「JECA FAIR 2019 ~第67回電設工業展~」が開催された。本イベントは、電気設備に関する資機材、工具・計測器、ソフト、システム等の新製品紹介など、国内最大の電気設備総合展示会として開催されているものだ。本稿ではその中から、関電工ブースの模様をレポートする。

▲同ブースでは、プレゼンテーションや実演など、様々なステージイベントも実施されていた。

■VRを活用した安全体感装置

「VRを活用した安全体感装置」のコーナーでは、VRを活用して実現が難しい危険な状況をリアルに体験することができた。こちらでは、脚立からの墜落や梯子からの墜落、電柱からの墜落、相間バリア取り付け時の感電など、労働災害の特徴を抽出して墜落災害4件と感電災害2件のコンテンツが体験できるようになっていた。

こうしたVR体験を通して管理者視点や被災者視点で災害の発生状況を体感することで、安全ルールが理解できるようにしている。ノートPCと専用カメラ、VRヘッドマウントディスプレイがあればどこでも体験ができるため、各本部や支店、営業所などで体感研修が行えるというのも大きな特徴となっている。

▲VRコンテンツではあるが、感電した瞬間手元に電流が流れるため、かなりリアルだ。

同コーナーには、「MR・360°可視化技術の活用」も紹介されていた。こちらは、マイクロソフトのMRデバイス『HoloLens』を使い、CAD図面を会場内に実寸大で投影するというデモや、360度で撮影された画像を使った、VR現場体験などが実際に見られるようになっていた。 

▲実際にこうした高所に行く機会はあまりないと思うが、VRなら誰でも体験することができる。

▲体験用に用意されたVRゴーグルとMRデバイスの『HoloLens』。

■ケーブル搬送自動制御システム

従来までは作業員が地下に入り作業を行っていたケーブル搬送だが、それを一括自動で制御し、ほぼ無人化を実現する「ケーブル搬送自動制御システム」が展示されていた。インバーターも接続し、地上にある制御盤でコントロールすることができる。一括制御操作者は、画面を見ながら速度制御や運転停止などが行える。これにより、これまでよりも少ない人数で作業が行えるようになるという。

ブース内では、その様子が模型でわかるようになっており、ボタンを押すことでケーブルが搬送されていく様子が見られた。 

▲模型上部には、一括制御操作者の様子も再現されていた。

■IoTを活用した故障診断解析技術

空調機械のポンプはインバーターが、回転数やパワーを制御しているが、日によってはファンをゆっくり回して省エネするなど、状態が異なる。その状態をリアルタイムに取り込んで、モニターすることができる。

ただモニターするだけではなくディープラーニングをつかった分析アルゴリズムにより、設備の異常の兆候を検出することができる。これによって、システム停止時間やO&M費用の低減、システム運用などを最適化することができる。

▲こちらは実際の施設を展示用に小型化した模型だ。バルブを調整することで、異常の再現ができる。

▲点が沢山打たれているが、青は正常で赤は異常を表している。

■測定記録支援システム

こちらは、Bluetooth通信を利用することで、測定器で計測したデータを自動で入力してくれる測定記録支援システムだ。従来までは紙に記録して、事務所に帰ってから清書するという作業が行われていた。しかし、それでは手間が掛かるだけではなくミスも起きてしまう。

そこで、ウィンドウズタブレットを使用し、AUTO CADとExcelを表示して、自動で測定値を入力できるようにしている。測定しながら帳票も完成するため、事務所に帰ってから印刷するだけで作業が終わらせるようになった。作業効率としては、概ね3割ほど低減することができたという。

また、2ndバージョンでは、両手が自由に使えるようにするために、スマートグラスと音声入力にも対応している。スマートグラスで画面も見られるため、快適性も増している。

▲スマートグラスでPCの画面を見ながら、声で入力。

▲デモでは、音声入力でデータが打ち込まれていく様子が見られた。

■停復電シミュレーションソフトウェア

CADで作られた「単線結線図」から、自動で開閉器操作と充電状態の変化確認に必要となる6種類のシンボルと、シンボル同士を接続する電力線を抽出するシミュレージョン図の作成ができるソフトウェアも展示されていた。

電気工事のときは、当たり前だが必ず停電工事も行われる。そのため、必ず手順が必要なのだが、表だけではベテランでもどこか充電しているのか、状態がわかりにくい。これまでは手動で図面に印を付けていたのだが、当然のことながら手順も増えてしまう。それらを軽減するために作られたものだ。

シミュレーション図上の開閉器シンボルを操作することで、電力線の受電状態が色で変化。それを確認しながら、停復電操作の検討が行える。また、シミュレーション図と単線結線図を重ね合わせて表示させることもできる。 

▲色が付くことで、シンプルでわかりやすくなる。

■ラチェット型電線仮支持具

実演を交えて紹介されていたのが、「ラチェット型電線仮支持具」だ。これは、間接活線作業のときの電線切断時に、切断される側の電線を人の手の代わりに仮支持するための支持具である。耐衝撃性と絶縁性能に優れた樹脂素材を採用。32sqから240sqまでの幅広い電線に対応している。

■架空延線ロボット『以心伝線』

こちらは、谷間や河川、樹木、茶畑など、電柱間の地上に引き換え用ロープの設置が出来ない環境で、無線操作で安全・効率的に引き換え用ロープなどを架設できるロボットだ。傾斜角度45度でも登ることができ、5kgfの引張力を実現している。また、電線のたるみが大きなところでも、問題なく目的の電柱まで到達することができるのが特徴だ。

ちなみに、今回の展示では実際にリモコンで操作も行えるようになっていた。

■電磁環境対策技術

アラミド構造材料

ナイロンなどと同様に、石油から作られた合成繊維「アラミド」を使用した、構造材料が展示されていた。この「アラミド」は、ナイロンと比べて強度も高く剛性もある。そのため、防弾チョッキに使われている。また、耐衝撃性に強いため、戦車の補剛材などにも採用されている。

30年ほど前に、この「アラミド」を建築用途の材料に使えないか検討し、鉄筋の代替として使い始めている。建物の基礎などにも使われているほか、電気を通さないという性質があるため、ノイズを流したくない場所や磁化や電食させたくない場所に利用されている。

ちなみに強度的にはカーボンのほうが強いのだが、「アラミド」との違いは電気を通してしまうところだ。ブース内では、「アラミド」とカーボンで電気を通す体験ができるようになっていた。

▲「アラミド」とカーボンで電気を通す体験もできた。

  • 接地線用フィルタ ノイズブロッカー

省エネの観点から、建物にインバーターが多数使われるようになってきた。そのため、重要な機器がノイズに囲まれるような状況になる。そこで同社では、接地線から入ってくるノイズをカットするために、独自のフィルタを開発している。電源のフィルタは様々なところで作られているが、稼働中の建物で電源部分をいじるのは大変だ。しかし、接地線であれば比較的対処がしやすく、そこがメリットとなっている。工場や研究施設、データセンターなどで使われている。

  • ノイズ抑制ケーブル

従来のシールドケーブルと比較して、10倍以上の遮蔽性能を持ったノイズ抑制ケーブルも展示されていた。回りがノイズだらけであるのは、ある程度仕方がない。そこで、こうしたケーブルを利用することで、ある程度ノイズの影響を低減させることができる。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。