2019
04.19

【World MR News】世界地高価な土地に生まれたグリーの最新モーションキャプチャースタジオ「REALITY Studio Roppongi Hills(仮)」が公開!――「#VRSionUp! #3」をレポート

World MR News

GREE VR Studio Labは、4月12日にVRを通したイノベーションの発掘」をテーマにしたVR研究系ワークショップ「VRSionUp! #3」を開催した。

「LavalVirtual2019公式報告会&VTuber番組技術特集」と題された今回は、グリーの六本木ヒルズ12Fに現在構築中のスタジオ「REALITY Studio Roppongi Hills(仮)」の見学会と、4月19日より放映開始されるVTuberを起用したドラマ『四月一日さん家』の誕生秘話、そして3月に開催されたVRフェスティバル「Laval Virtual 2019」の報告会などが行われた。本稿では、その中から一部を抜粋してお届けする。

■世界で最も高価な土地に生まれたリアルタイムモーションキャプチャースタジオ

【「REALITY Studio Roppongi Hills(仮)」】

GREE VR Studio Labは、VRエンターテイメントやVTuber関連事業のR&Dを行っている部署だ。六本木ヒルズ森タワー12Fに出来たばかりのスタジオが、「REALITY Studio Roppongi Hills(仮)」である。

このスタジオには、株式会社クレッセントが協力してモーションキャプチャーカメラ『Vicon Vero v1.3X』を14台設置。それに、世界で幅広く使われているエンターテインメント用モーションキャプチャーツール『SHOGUN』を組み合わせて、高度なモーションキャプチャーが行えるようになっている。

こちらが、モーションキャプチャーカメラの『Vicon Vero v1.3X』だ。

光学式のモーションキャプチャーを使用することのメリットは、ケーブルなどが不要なところだ。また、演者が跳ねるような動きをしてもカメラ位置からずれていくということもない。秒間250コマで撮っているため、速い動きをしても問題ないという。

光学式のモーションキャプチャーの弱点に、マーカーが隠れてしまったときに正確な動きが再現できないことがあった。しかし、『SHOGUN』の機能で、そうした問題も解消されている。

同社では、これらを使ってワークフローのテストやどれぐらいのことができるかなどの実験を行っていくという。

【Wright Flyer Live Entertainment ソリューション事業部のデモ】

Wright Flyer Live Entertainment ソリューション事業部は、現在のVTuberの市場を活性化させるための部署だ。自社のキャラクターを使ってみたいけどノウハウがない、あるいは、自分たちだけでは動き出すことができないといったところが多いため、そうしたところに対してVTuber専用ライブ視聴・配信アプリ『REALITY』をメインに貯めてきたノウハウと知見の提供や、スタジオや機材、スタッフなどのサポートを行っている。

こちらの設備には、『VIVE』を使って8点のポイントでモーションキャプチャーが行えるようになっている。フェイスキャプチャーにはスマートフォンを使用。また、2台のPCが用意されており、『Unreal Engine』を使って映像の合成や『REALITY』の配信も行うことができる。主に『REALITY』の番組で使われるほか、企業VTuber案件の制作なども行われる。

ディープラーニング技術を使い、顔の表情もスマートフォンで取得できるようにしている。これにより、漫画的な顔も表現することができるという。

こちらのPCで合成などの作業が行われる。

■バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』誕生秘話

新しいスタジオ見学に続き、19時よりイベント本編がスタート。今回で4回目となる今回の「VRSionUp!」だが、はじめに特別ゲストトークとして「バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。」が実施された。

本イベントの主催者であるグリー「GREE VR Studio Lab」ディレクターの白井暁彦氏。

この『四月一日(わたぬき)さん家の』は、テレビ東京で4月19日より放送開始されるVTuberたちが出演するドラマだ。本作が生まれたきっかけは、「アニメとも実写とも違うVTuber」について話していたときの雑談だったという。五箇氏は、その企画を軽い気持ちで出したところ、eスポーツやVTuberなどが注目を集めていた時期であったということもあり、すぐにやることが決まったそうだ。

企画を具体化するために、予算や現在のテクノロジーで表現可能な内容を考えたときに思いついたのが「シチュエーションコメディ」というスタイルだった。女性3人組のシチュエーションコメディといえば、『やっぱり猫が好き』を思い浮かべる人が多いかもしれないが、まさにそちらをイメージしているという。

写真左から、プロデューサーのテレビ東京 五箇公貴氏とハローの赤津慧氏。

最初の構想から放送まで10ヵ月で作られているが、それを考えると「吐きそうになる」と五箇氏がいうほど、その道のりは平坦ではなかったようだ。たとえば実写のドラマを作ってきた制作陣と、VTuberの運営を手がけてきた制作陣とではカメラの位置ひとつとっても、「その座標はどこですか?」「座標ってなに?」という感じで、言葉の壁があったという。これはまずいということで、共通言語を作るようにしている。

そのほか、細かいモーションチェックを行い撮り直すべきかなどの判断もしていかなくてはならず、作業に終わりが見えなかったそうだ。何はともあれ、出演している3人のVTuberを含めて注目してみてほしい作品である。

■「Laval Virtual 2019」報告会

続いて、ライトニングトーク枠で「Laval Virtual 2019」に参加したチームの報告会が行われた。

【立教池袋高等学校『ARCOプロジェクト』】

立教池袋高等学校の『ARCOプロジェクト』は、同校で毎月行われている避難訓練に真面目に参加している生徒が少なく、それがもったいないと思い「VRでやってみたらどうなるのか?」という発想から生まれたプロジェクトだ。

そこで、彼らが注目したのが「一酸化炭素」だった。避難訓練というと煙や混雑など目に見えるものを取り上げているものが多かった。しかし、この『ARCOプロジェクト』は目に見えない「一酸化炭素中毒」を再現している。

体験者の呼吸を計測するために、空気品質センサーを利用して「呼吸感知デバイス」を制作。それを口元に持っていくことで、全体の呼吸量を測定している。

また、これまでのVRコンテンツはコントローラーを使用するものが多かったが、現実世界でそれらを使うことはない。そこで、「TATAMI360」と呼ばれる歩行感覚提示デバイスを制作している。

これを「Laval Virtual 2019」に展示。基本的に英語で対応を行い、パブリックデーは子供や高齢者が多かったことから、現地スタッフの助けを借りて英語からフランス語への翻訳も行っている。同校は英語教育に力を入れており、こうした場での会話も問題なかったそうだ。

反省点として、『ARCOプロジェクト』の魅力が本当に伝えられなかったかもしれないと感じているという。参加者からは「視界が狭くなった」などの意見が出ていたが、これは一酸化炭素中毒の症状を再現するために、わざとそのように作られているものだ。しかし、そのことがなかなか理解されなかったという。

また、日本とフランスとでは文化が異なり、海外の人々はバンバン走ってしまうなど、予想外の行動を取ることが多かったそうだ。

【慶應義塾大学『TeLeSight』】

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)が「Laval Virtual 2019」に展示したのは、リアルとバーチャルを繋ぐアバターロボットの『TeLe Sight』というコンテンツだ。

こちらは、アバターとスクリーンに投影されたVR空間を通じて、第三者がVRプレイヤーのバーチャルな身体となり、インタラクションができるというものである。元々、学生対抗のVR作品コンペを「IVRC2018」に投稿したところからスタートしている。その後、仙台予選で決勝進出が決まり、「DCEXPO」で行われた決勝大会でLaval Virtual賞を受賞したことから、今回の招待が決まった。

慶應義塾大学 KMD 古川泰地氏。

実際の展示では、家族全員で体験出来るコンテンツということもあり子連れの家族が殺到。家族全員を一度にオペレーションするのは難しかったという。

その後、食事をしていたところ表彰式に遅刻。会場に着くとノミネート席に通され、Laval Virtual研究カテゴリ最優秀賞である「ReVolution #Research Winner」を受賞している。これにより、「SIGGRAPH 2019 Emerging Technologies」の招待を受け、今年の夏にロサンゼルスで展示される予定だ。

次回の「VRSionUp! #4」は、「VRエンタメ×Edu」をテーマに5月17日に開催される予定だ。こちらでは、「IVRC2019」の説明会と企画相談会が行われる。また、VTuberとボイチェンと教育なども扱われるとのこと。興味がある人は、connpassで募集開始後に応募しよう。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。