2019
04.10

【World MR News】話題のホログラムディスプレイの新たな活用方法が多数誕生!?「第1回 Looking Glass ハッカソン」をレポート

World MR News

特別なゴーグルなどを使用せず、裸眼で3Dの映像が楽しめるホログラムディスプレイ『Looking Glass』を活用したハッカソン「第1回 Looking Glass ハッカソン」が、3月30日と31日の2日間、東京・目黒のアカツキ本社オフィスで開催された。本稿ではその中から、2日目の様子をピックアップしてご紹介していく。

一見すると、通常の小型ディスプレイのようにしか見えないこの『Looking Glass』。首を左右に揺らしながら視点を変えることで、まるでそこに存在するかのような立体的なホログラム映像が見られるという、SFチックなデバイスとして大きな注目を集めている。また、ただ映像を表示するだけではなく、VRのようにインタラクティブなコンテンツを作って表示できるというのも特徴のひとつだ。

今回のハッカソンは、8組で各5名ずつの約40名が参加。「四季」をテーマに、『Looking Glass』らしいコンテンツを作成し、審査員の投票で各賞が選ばれるというルールで実施された。初日の3月30日にチーム編成が行われた後、開発が進められ、3月31日の16時よりチームごとの発表が行われた。

時間ギリギリまで作業が進められていた。

本イベントの主催者であるザバイオーネ氏。

Looking Glass Factoryのメンバーも会場に訪れており、参加者からの要望を募集していた。

『SHIKI Glass』チーム名:MP(チーム4)

事前に行われた抽選の結果、トップバッターとして発表したのはチーム「MP」で、タイト

ルは『SHIKI Glass』だ。これは、日本の四季を『Looking Glass』で見られるようにしたアプリである。

ボタンで季節の切り替えが行えるほか、外部デバイスを使用した切り替えにも対応している。今回は、『Xperia Touch』を使用したいと考え対応したほか、ライブラリにも登録できるように、本体でも操作が行えるようにしている。本体側では、左右ボタンで季節の切り替えを行い、丸ボタンでその季節のシーンへと入り込んだり退出したりするという動きになっている。

障子と廊下が並んだ風景が映し出せ、障子には春夏秋冬の文字が描かれている。それぞれの季節を、障子越しに見られるほか、時間帯によっても季節が変わっていく。

『Xperia Touch』での操作では、テーブルに映し出された文字をタップすることでシーンの切り替えを行うように作られている。こちらで実現したことは、四季の風景をひとつのシーンで表示し、その中にズームで入ることで風景の中に入れるようにしたことだ。『Looking Glass』であるため、中の風景も立体的に見ることができる。

苦労した点としては、初日に企画がなかなか決まらず時間をロスしてしまったところだという。また、新しいSDKがLWRPに対応しているということからチャレンジし、プロジェクトまでは動くようにしのだが、アセットを使おうとしたところ、すべてのシェーダーに対応する必要があり断念してプロジェクトを作り直したそうだ。

また、複数台の『Looking Glass』での運用も考えていたが、時間切れで対応出来なかったという。

『Look’in Baseball』チーム名:ルキベン(チーム1)

チーム「ルキベン」が開発したのは、対戦型野球ゲームの『Look’in Baseball』だ。こちらは『Looking Glass』を使用し、左右それぞれの視点からピッチャーとバッターに別れて対戦できるというものである。

テーマとなっている四季については、春はステージギミックで桜が登場。夏にはカエルが跳ねて、点が入らないように邪魔をしてくる。秋は巨大な力士が画面を横切り、冬には雪だるまが画面を横切ったり邪魔をしたりするというように、季節が進むにつれて得点が入れにくくなっていくという。ゲーム的には、全部で春夏秋冬の4イニングで得点を競っていくという内容になっている。

本作品は『Looking Glass』1台で、左右それぞれから違う視点で見えるというものだが、体の位置を変えることで見えるものが変えられるところが、従来のディスプレイでは実現できないところだ。

コントローラー部分には、M5Stackを使用しており、その加速度センサーで実際に手を振ることでボールを投げたりバットを振ったりするというアクションが行えるようになっている。また、M5Stackの代わりにゲームコントローラーも使用できるようにしているそうだ。

また、バイナリィが出来たのが発表の数分前で、本来はホームランダービーにする予定だったが、その部分は間に合わなかったそうだ。

『ガールズ in the ぼっくす』チーム名:さんばいそく(チーム2)

チーム「さんばいそく」が開発したのは、『ガールズ in the ぼっくす』というゲームだ。『Looking Glass』のハッカソンということもあり、複数台に対応したアプリを増やしたいと思い、その特徴を活かしたゲームということで作られている。また、可愛い女の子を愛でたいということで、このふたつを掛け合わせているという。

ゲームとしては、可愛い女の子におたくのおじさんが近寄らないように、『Leap Motion』を使って払いのけていくという内容の作品である。横長であるため、ゲーム画面を収めるのが難しかったそうだ。ちなみに、VRMは今後対応していく予定とのこと。

お題の四季については、人生の道を春夏秋冬に当てはめている。何年か季節が巡ると、守っていた女の子が自立するという内容になっているそうだ。今回作られたデモでは2年間だが、4年間(2分ほど)プレイすることで勝利となる。

アピールポイントとしては、「箱入り感」と「箱入り娘」をかけており、タイトルもダブルミーニングにしている。また、複数台繋げる楽しさを提案するために、FPSのハードウェアチート(良い機材を持っているほうが有利)のように、『Looking Glass』を沢山繋げる方が遠くまで見えて有利になるようにしている。

『わびさび』チーム名:わびさび(チーム5)

チームわびさびがコンセプトにしたのは、「日本の四季を感じることができる理想のはなれ」だ。『Looking Glass』のどこがすごいのかと考えたときに、そこにあるかのように感じる体験で、それを活かした作品を作りたいと考えたという。そこで、日本の四季に触れることができるアプリを制作している。

今回入力デバイスとして使用したのは、『力触覚デバイス』と呼ばれるものだ。こちらはまだ発売されていないが、触覚という感覚を広めるために現在開発中のものである。見た目は電子工作キットで作ったようなものだが、両手で挟むことでその物体の硬さやもろさなどの触覚を感じることができるのが特徴だ。

この『力触覚デバイス』と『Leap Motion』を組み合わせることで、画面の中にある物体に触ることができるようにしている。また、このハッカソンのために、専用カバー『Looking Glass WABISABIカバー』も作られている。これにより、見ているだけでも癒やされる作品に仕上がったそうだ。 

アプリの詳細については、『Looking Glass』の中に理想のはなれが映し出されており、その奥の窓からは景色が見えるようになっている。景色は春には桜が咲き、1日ごとに夏になるという感じで、季節が移り変わっていく。

この離れの中に、ひし餅や雪だるまなどのオブジェクトを表示させて、それを実際に掴めるようにしている。掴んだものは、ものによって掴んだ強さなどによって異なるインタラクションが体験できるようになっている。

今回のハッカソンは順調に進んだそうだが、課題としてもう少しインタラクティブなものが作りたかったそうだ。また、夏に風鈴を設置するほか、部屋のカスタム要素も追加したかったという。さらに専用カバーは画用紙で作られていたため、もう少し良いもので作りたいという。

『LKG シューティングゲーム』チーム名:LKG Shooting(チーム3)

ほとんどのメンバーがプログラマーだという、チーム「LKG Shooting」。彼らが作ったのは、『LKG シューティングゲーム』だ。『Looking Glass』の良いところには、奥行きや視差が感じられるところやDOFブラーやマルチディスプレイに対応しているところである。そこで、これらを活かしたゲームを作りたいというモチベーションから企画がスタートしている。

ゲームの世界観は、日本の四季が感じられる日本庭園が舞台になっている。春はうぐいす、夏はカブトムシ、秋はトンボ、冬はつるといった感じで、それぞれの四季を代表する生き物が登場し、シューティングバトルが楽しめる。

マルチディスプレイを活かすために、2プレイヤーで対戦するシューティングゲームとして作られている。ゲームセンターのように、『Looking Glass』を背中合わせに置き、それぞれのプレイヤーが自身の画面を見ながらプレイしていく。

プレイヤーは生き物を操作し、相手のプレイヤーの奥にあるゴールを目がけて弾を撃っていく。飛んできた弾は自分の弾で弾いたりしながら、相手のゴールを阻止していく。ゴールに弾を入れることができると相手のHPが削れていく。最終的に、相手のHPをゼロにするか制限時間内により多くのHPが残っている方が勝利となるというルールだ。

中でもこだわったところは、弾幕に隠れて弾を撃てるところで、『Looking Glass』ならではの仕様として体を動かすことで弾を発見できるようにしている。また、DOFブラーで奥行き感も出している。さらに、バウチャーもフル活用してステージが作られているという。

苦戦したポイントは、綺麗に見える範囲が狭く奥行き感が難しかったところだ。また、パフォーマンスも出すのが難しかったそうだ。

『花坂るっきんぐ』チーム名:なりゆき(チーム7)

チームなりゆきは、『花坂るっきんぐ』という作品を制作。テーマの四季からイメージしたのが、昔話の『花坂じいさん』だったところから、アイデアが生まれている。日本らしいストーリーに、「木に花を咲かせる」というインタラクションを組み合わせてコンテンツが作られている。

内容はシンプルで、『Leap Motion』で灰を巻き上げて、それが木に掛かることで花を裂かせることができるというもの。童話の世界ということで、あえて2次元的な表現にチャレンジしているほか、時間があったため、春だけではなく四季の移ろいや隠しコマンドも実装されている。

ちなみに、この隠しコマンドは、ボタンを押すことで桜が舞ったり花火が打ち上がったりするといった、プラスアルファの演出が表示されるというものだ。また、季節が移り変わるごとに、ウグイスの声や蝉の鳴き声なども聞こえてくるなど、演出にもこだわって作られていた。

時間があれば、花が満開になったら次の季節に移ったり、灰を投げるときの気持ちよさを演出したりするなど、『Looking Glass』だからこそできることを追求したかったという。また、複数台通信ができるため、1台に花を咲かせるとほかの端末にも花を咲かせることができるということもやりたかったそうだ。 

『Looking Chiralism』チーム名:GEISHA(チーム6)

審査員ではなく、ハッカソンの参加は2~3年ぶりだというGOROman氏を含むメンバーが集まったのが、チーム「GEISHA」だ。同チームが注目した日本の文化は、「チラリズム」である。見えそうで見えない『Looking Glass』だからこそ実現できるのがチラリズムで、そこで開発したプロダクトが『Looking Chiralism』である。

こちらは障子越しに見えるチラリズムがテーマの作品になっており、障子の隙間からちらっと見えている写真に対して、見る角度を変えることで覗くことができるというものになっている。ただそれだけではなく、ボタンを連打することで障子が開けられるようにしている。

障子の開き具合により、成功と失敗に分かれる。成功した場合は、美しい日本の四季折々の風景が見られるようになっている。ちなみに、この演出部分は、パチンコやパチスロをリスペクトして作っているそうだ。実際に音や演出も派手目に作られており、パチンコやパチスロのような高揚感が味わえるようになっている。

ちなみに桜のオブジェクトは、フォトグラメトリでスキャンしたものを使用している(花自体は桜ではないとのこと)。障子で隠れている画像の前に桜が舞い、奥行きを感じることができる。そこで桜の花びらが舞うことで、本物以上に桜の風景が現実に感じられるようにしているそうだ。

『JapaneseCapybaraHealing』チーム名:カピバラ(チーム8)

チームカピバラが制作したのは、『JapaneseCapybaraHealing』というコンテンツだ。当初は四季の移り変わりを表現しようとしていたが、様々なアイデアを出していたところ頭に浮かんだのがカピバラで、アセットを検索してみたところ8ドルという安価で売られていることがわかった。そこで、カピバラを軸に四季を作ることになったという。

せっかくのハッカソンということもあり、チーム内で話し合いしたところ、公式ライブラリへの登録は目指すことになったという。また、特殊な機器は使わずに単体でも使えるものにするほか、インテリアとしても利用出来るものにしている。

さらに、四季をシーン変換で切り替えることはやりたくなかったため、回すようにしている。それに合わせてBGMも鳴らせるようにしている。

FPSは二桁を目指していたが、ひとつのシーンにすべてまとめているということもあり、最後は苦労したそうだ。なかでも海が高価なアセットを使用していたこともあってか、処理が重くなってしまったそうだ。また、完成後、2時間ほど時間があったことからスマホでも動かせるように改良が加えられている。

『Looking Glass』には、回り込んで見られるという特徴があるが、ちょっと動かしてみるのが楽しいように作られている。実際にカピバラが動いている姿はなかなか癒やされ、部屋にオブジェクトとして置いておきたい感じだ。

審査結果発表! 各賞を受賞したのはどのチームだ!?

すべてのチームのプレゼン終了後、審査員による試遊会が開始された。また、審査が行われている間に懇親会も実施。予定より若干早めの進行ではあったが、19時25分より審査結果が発表された。各賞を受賞したのは以下の通り。

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社賞

チームGEISHA『Looking Chiralism』

PSYCHIC VR LAB賞

チーム名カピバラ『JapaneseCapybaraHealing』

PROJECTWHITE – TSUKUMO賞

チーム名MP『SHIKI Glass』

株式会社たしてん賞

チーム名ルキベン『Look’in Baseball』

チーム名なりゆき『花坂るっきんぐ』

+参加賞で全員

気になる優勝チームについては、この日は発表されず、4月3日に開催される「Fabcafe Tokyo」で発表されることになった。こちらは、すでに賞を受賞しているチームも対象になる。

最後に、Looking Glass Factoryの創業者でCEOのShawn Frayne氏が登壇。「皆さんから未来が見えました。ヤバイぐらい良かったです。チームが期待していた以上の作品を作ってくれて、本当に嬉しいです。ホログラムにかける情熱や夢は、日本が一番だと思っています。日本の皆さんがもっとLooking Glassを使ってもらえるように、Looking Glass Factory社としてサポートを充実していきます」と、今回のハッカソンの感想を述べていた。

Shawn Frayne氏。

次回は5月21日にイベントが開催される予定だ。こちらはハッカソンではなく、勉強会になるとのこと。その他の『Looking Glass』関連のイベントに関しては、Makuakeの『Looking Glass』のページに記載されているので、興味がある人はぜひそちらも参考にしてもらいたい。

■Looking Glass:日本の3Dクリエイターのためのホログラムディスプレイ | クラウドファンディング – Makuake(マクアケ)

https://www.makuake.com/project/lookingglass/

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。