03.27
【World MR News】VR/ARはこれまで大きかった情報のギャップを埋めてくれる――「Tech-on MeetUp#05」レポート①
Tech-on ~Networking for Techies~は、3月11日に東京・渋谷のTECH PLAY SHIBUYAで「Tech-on Meet Up #05」を開催した。
このTech-on ~Networking for Techies~は、「技術者同士を、人と人とのネットワーキングで繋ぐ」をコンセプトに、ナレッジを共有する場を提供することを目的に開催されているIT技術勉強会である。特定のテーマを限定することなく、トレンドの技術を広く取り扱っている。
今回は「xR meets Everything ~VR/AR/MRが変える日常と取り巻く技術たち~」と題して、XRと様々な技術を組み合わせて化学変化を起こした事例についての紹介が行われた。
VRでは情報量が大きくなる
最初に登壇したのは、ナーブの多田英起氏で、「VRの現状と未来」をテーマに事例の紹介が行われた。ナーブは、「もしもが見えれば人の暮らしはもっと豊かに」をテーマにVRを位置づけて活動している企業だ。
同社では、これまでVRを使った内見サービス『どこでもストア』などを展開している。こちらは、ショッピングセンターに無人の店舗を設置し、ユーザーの問い合わせに対して遠隔で対応するというものだ。従来までは、内見作業には結構な時間が掛かっていた。それを、「どこでもドア」のように一瞬で行けるようにVRを活用している。
ここで解決したかった議題は、「見えない痛み」を解決することだったという。この「痛み」は、回数が少ないことから発生するものだ。結婚することが決まったとしても、雑紙は買っても大学受験ほどの勉強をすることはない。これは不動産の購入なども同様だが、人生において回数が少ないため、本気で勉強する人がいないのだ。
それでありながら、高い買い物でもあるため、満足感を出したくなる。そこで、利用者と店舗で負のスパイラルが発生してしまうという。ユーザーは多くの情報を欲しがるが、店舗側では接客を効率化していく必要がある。そこで利害の不一致がおこり、店舗側を信頼できなくなることから、利用者はポータルサイトにアクセスするようになるという。
同社では、VRをシンプルに「情報」と定義している。紙媒体、初期インターネット、スマートフォン、VR/AR時代で何が違うかというと、「情報量」だ。テキストだけでは情報のギャップが激しかった。それがインターネットにより、テキストと画像になったが、それでもまだぜんぜん正確には情報は伝わらない。
それが動画UIになると、情報量が5000倍ほどになる。そして、ここからの未来は全部仮想体験に変わっていくというわけだ。
膨大なデータを処理するために最新技術を活用
すでに実物を見ない状態で、物件を契約するユーザーは4割ほどもいるという。今後は、まったく見ることなくVRで決定するという時代が普通になっていくのだ。ちなみに、新築の家でも、実物を見て購入するユーザーは存在しない。あくまでも見ているのはモデルルームであって、本物ではないのだ。
同社のデータベースは急速に伸びており、200万件以上の不動産データを所有している。そのうち、年間40万件ほど成約している。コンテンツを貯めるという段階は終わり、「リボンモデル」に向かって、チャネルとサービスの認知向上のために、マーケティングコストを使っていく予定とのこと。
インターネットでVRのデータを送るのは、想像以上に大変だ。理由はVRのデータが重いからである。しかし、見る角度やコンテンツ情報を合わせて遠隔で操縦することで、パケットをチャット並に抑えることができる。こうした技術に加えて、バーチャルスペースに家具を抑えるといった特許も同社で取得している。
同社が集めていたデータは、「人はなぜ物を買うのか」というものだ。多田氏によると、同社はこれに対する答えを唯一持っている会社だという。しかしそこで問題となるのは、データが膨大すぎて消えていってしまうということだった。
当初は「Redash」を使っていたが、その手前のデータベースが破裂してきた。本番のテーブルをコピーしたテーブルを沢山用意していたのだが、最新の情報が知りたいときは本番テーブルにアクセスすることになる。そうなると、システム障害が本番環境で発生してしまう。
顧客に全解放したい場合でも、本番データベースを触られてしまうのはリスクが高い。そこで、「Redash」の間に「Treasure Data」を挟むようにしている。これまで本番環境にアクセスしていたユーザーは、「Treasure Data」だけを参照するように変更した。そうすることで「Treasure Data」が多角分析を行い、レスポンスが8分の1以下になったという。
同社では、新しく「VRトラベルAd」というサービスも始めている。VRの広告では、ユーザーの38パーセント以上が購入しているという。そこで、VR空間で人はどこを見てどれだけ支店を移動したかなどを分析して、広告に使えるようにならないか研究を行っている。
しかし、様々な課題があり「Hivemall」を使用している。これは、機械学習を簡単に導入するために採用されたものだ。メリットとしては、広告をダイレクトに何を配信したらいいかということを、「Hivemall」側が理解してくれるようになったという。また、成約率予測など、これまでアンケートやヒアリングで聞いていたようなものについても、予測できるようになった。
さらに、人が物をなぜ買うのかというところも機械学習されていくため、オススメ物件やコンテンツなども、それなりの精度で出せるようになったそうだ。
VRは、単純に見せて、わかって、買ってもらうという購買活動において、圧倒的に素晴らしい結果が出ている。同社では旅行やウェディング、不動産業界と、横の要望に応えていく予定だ。
最後に多田氏は、「現状の30パーセント台の数字は、データ分析を行うことでさらに伸ばすこともできる。これまで納得せずに買っていたものを、納得できる形で購入できるようになると、人の暮らしは良くなっていく」と語り、本セッションを締めくくった。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。