2019
02.14

【World MR News】最先端の3D技術が集結した展示会「3D&バーチャル リアリティ展」をレポート①

World MR News

リード エグジビション ジャパンは、2月5日から7日までの期間、最新の3D技術や超高精細の映像技術が一堂に会した展示会「3D&バーチャル リアリティ展(IVR)」を東京ビッグサイトで開催した。こちらでは、その中から特に目に付いたブースをピックアップしてご紹介していく。

■「セック」ブース

 セックのブースで展示されていたのは、『大規模データリアルタイム投影ソフトウェア』だ。

同社がMRを取り扱うことになったきかっけは、現場発動だったという。社員が『HoloLens』が自前で購入したことがきっかけで、ビジネスとして起ち上げることになった。同社は宇宙先端事業を行っており、JAXAとの取引もあった。JAXAでは、次世代航空機や宇宙機の設計開発を行っており、そうしたものと親和性が高いというところから、一昨年の8月からスタートしている。今回出展されていたものは、その成果である。

実際の模型にシミュレーションした結果を重ね合わせることで、設計上の欠陥を見極めるために使用されている。

また、以前はひとりで研究していたものが、最近はチームで行われるようになった。複数人で同じものを評価するのだが、それぞれプロペラの研究やボディの研究など、見るポイントが異なってくる。モニターではそれを表現するのは限界があるのだ。

そこで、MR技術を使うことで、見る場所を変えても同じものを評価できるようになる。また、お互いの姿が見えるため、コミュニケーションも取ることができる。そうした意味合いでも、研究の場にふさわしい技術となっている。

また、建設メーカーと取り組んでいる事業では、設計デザインソフトの結果を、PC上でドラッグ&ドロップするだけで、簡単に『HoloLens』に投影してプレビューできるようにしている。その場でプレビューできることで、簡単に修正なども行えるところが特徴だ。

これらのテーマとなっているのが「手間」だ。『HoloLens』もMRも素晴らしいものである。それを活用するには、何をすればいいのかというところに、同社はアイデアを出しているのだ。

JAXAでは、スーパーコンピューターで計算した結果を出しているのだが、それをオンデマンドで『HoloLens』に出したいという計画もあるという。現在はデータを取り出して変換するなど、大幅の手間が掛かる。そうしたデータを間引かずに、『HoloLens』していくのが、『大規模データリアルタイム投影ソフトウェア』である。

■「ポケット・クエリーズ」ブース

ポケット・クエリーズのブースでは、MRソリューション『QuantuMR(クァンタムアール)』が出展されていた。こちらは、東京電力ホールディングスと共同開発しているもので、Mixed Reality技術を活用して発電所や変電所などのメンテナス業務の最適化と効率化を図ったり、ベテラン技術者の持つスキルの後継などに活用できたりするソリューションである。

マイクロソフトのMRデバイス『HoloLens』を使用することで、空間上に作業場所までの道筋や計器類の情報などが表示できるほか、進入禁止エリアに近づくとアラートも出してくれる。また、遠隔地にいる支持者とのコミュニケーションもリアルに行えるため、従来以上に効率的に作業が行えるようになるのが特徴だ。 

■「日本イーエスアイ」ブース

日本イーエスアイが出展していたのは、製造業向けVRシステムだ。元々、シミュレーションソフトを開発してきた同社。たとえば、組み付けの検証など、複数の会社が作成したCADデータが、しっかり目的の場所に収まるかといったシミュレーションを行っている。

そうしたものは、CADでやればいいという話もあるが、部品点数が多くなったり構成が複雑なってきたりすると、作業が追いつかなくなってしまうことがある。そこで勝手に設計が進み、最後に合わないということも起こりうる。そうしたことを避けるために、VRが活用されている。

ブース内では、フィンガー・フルボディトラッキングによる作業車主体のVR検証が体験できるようになっていた。

CADではなく、VRを活用するメリットはほかにもあり、作業性の高さだ。たとえば、目の前にハーネスがある場合、CADではそれが邪魔になってしまうことがある。CAD上では固い棒のようなものにしか見えなくても、実際はケーブルのようなものならば、手で避けることが可能だ。VRならば、そうしたものを簡単に見分けて作業が行えるのだ。

体験の模様は外側のモニターでも確認可能になっていた。車のCGに触れると手袋が振動し、実際にそこにモノがあるように脳が錯覚するのだという。

■「NECソリューションイノベータ」ブース

NECソリューションイノベータのブースに出展されていたのは、『NEC VR現場体感分析ソリューション』と『NEC VR現場体感訓練システム for 防災』だ。『NEC VR現場体感分析ソリューション』のほうは、VR技術とモーションセンサー技術を組み合わせて、バーチャル空間に現場を再現。そこで研修や検証を行い、危険認知や安全遵守教育、設計検証などが行えるというもの。

もうひとつの『NEC VR現場体感訓練システム for 防災』は、VR技術を活用して訓練などでは難しい、火災発生時の建物の中の煙の影響などをリアルに体験できるという訓練システムだ。3人同時に体験が行えるようになっており、ひとりが操作を行い、残りのふたりはそれの様子をVRゴーグルでモニターできるようになっていた。

実際の火災では通路などに危険な煙が漂っているが、そうした様子もVRで目視が可能となっている。煙を吸わないように低くかがんで移動していく必要があり、なかなかリアルに作られていた。

これらはいずれも実際に体験するのは難しい状況を、VRで体験できるというものだ。VRならではの特徴とも言えるが、大きなスペースなども不要のため場所を問わず体験できるというものメリットである。

■「ビーライズ」ブース

ビーライズが出展していたのは、『VR安全シミュレータ』だ。こちらは、1月31日に同社から発売されたパッケージソリューションである。

VRの教育コンテンツは、ナショナルクライアントなど企業が自社の教育用に使うことが多かった。その反面、中小企業は手が出しにくいというところもあった。中でもフォークリフトは免許が取りやすく、稼働台数も多い。そのため、事故も多いのが現実だ。そうした人たちのために、しっかり自分事と捉えてもらうために、パッケージソリューションとして発売されている。

同社ではコンテンツの開発を行い、サイバネットシステムが販売を担当している。今回発売されたのは、『VR安全シミュレータ』シリーズの「フォークリフト『接触事故編』」で、それに加えてPCやVRゴーグルなどを含めて価格は150万円からとなっている。

シリーズとして発売されているため、今後もラインアップは続々と発売されていく予定だ。また、フォークリフト以外にも、工事現場や交通事故などの事例も多くあり、そちらもコンテンツとして提供される予定である。

ソリューションには、コントローラーなども含まれている。

もうひとつ、高所作業車の落下が体験できるVRコンテンツも『安全訓練VR「Safety Training System VR of AKTIO」』も出展されていた。こちらは、同社が制作したものをアクティオに提供したものである。

ちなみにブース内には、アクティオからレンタルした本物の高所作業台が置かれており、そこでVRゴーグルを装着して体験できるようになっていた。台そのものは動かないのだが、VR体験中の人を見ていると、体がぐらついていた。こちらはVR内のコンテンツで落ちる体験をするから体が反応してしまったためだが、台そのものも元々揺れやすいためだからだという。

体験者の多くは、「実物が置いてあるから大丈夫だと思ったら、怖かった」と感想を述べていたそうだ。

■「テクノブレイブ」ブース

テクノブレイブのブースでは、XRプラットフォーム・ソリューションの『REALITY BOX』だ。開発に掛かるコストを抑えたいと考えている企業向けのもので、その土台となる部分を同社が提供し、各社がそれぞれに持つCADデータなどを使用して、3Dのモデルルームが簡単に作れるようにしている。

同社ではCADデータなどを元に、Unity上で構築を行う。VR用に制作したモデルは、AR化することもできる。また、データは、クラウドで管理されるため、場所を問わずどこからでも見られるというのも特徴のひとつだ。

不動産屋のモデルルームや、発売前の車の外装と内装の展示といった使われ方を想定しているという。

ソファーの色を変えたり、インテリアを移動したりといったことも簡単にできる。

もうひとつ『AR-View』というアプリも出展されていた。こちらは、印刷物をマーカーにして、ARでマンションの見取り図を3Dで表示できるほか、動画なども表示することができる。わかりにくいマンションなどの建物内の導線も、これならわかりやすくなるというわけだ。

■「ダッソー・システムズ 3DEXCITE」ブース

ダッソー・システムズ 3DEXCITEのブースでは、3Dエクスペリエンス・プラットホームが出展されていた。これは、CADデータを元に、最終的に店頭でユーザーに触ってもらえるスタイルのアプリにできるというものだ。

たとえば部屋のイメージを知りたいときに、部屋のスタイルを選んだり時間帯を変更したりして、どのように見た目が変化するのか簡単に変更できるようになっている。実際に生活した場合、どのような感じなのかイメージが掴みやすくなっているのである。

データベースとクラウド技術を活用することで、ウェブや店頭でこのプラットフォームをそのまま展開することができるのも特徴だ。これにより、コンテンツの配布と一元管理のふたつの課題を解決することができるのである。

また、CADデータをゲームエンジンで活用する『3DEXCITE DELTAGEN』も出店されていた。こちらは、商品開発から販売まで、ビジュアライゼーションが重視されて多様化しているCGコンテンツ制作に対応するためのプラットフォームである。

ゲームエンジンを使っていることもあり、質感もリアルなだけではなく、様々な環境による見た目の変化も再現することができる。

CADデータをゲームエンジンで活用することで、外装だけではなく内装も含めてリアルに再現することができる。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。