01.24
【World MR News】スマートグラスをなど最新のウェアラブルデバイスが集結した展示会「第5回 ウェアラブル EXPO」レポート①
2022年までに、出荷台数が2億1940万台にまで成長すると言われているウェアラブルデバイス。その最新デバイスが一同に集結した展示会「第5回 ウェアラブル EXPO」が、1月16日~18日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された。本稿ではその中から、特に目に付いたものをピックアップしてお届けする。
■オリオンブース
オリオンブースでは、次世代型ウェアラブルシステム『Atlas Direction(アトラス ディレクション)』が展示されていた。こちらはいわゆる遠隔支援システムで、海外など離れた場所からでもPC側からの指示をスマートグラスに表示できるというものである。
スマートグラスのカメラを使用して、遠隔側で映像を確認し共有することができる。また、音声でのやりとりに加えて、チャットでもコミュニケーションが可能となっており、PC側で入力した文字がスマートグラスに表示される。また、スマートグラス側ではコントローラーを使用して、定型文を選んで返信が返せるようになっている。
静止画も双方にやりとりが行えるほか、PC側でマーキングを記入するなどの編集も行える。また、スマートグラス側で見ている映像を録画モードで保存することも可能だ。担当者によると、今回の展示会が同システムのスタートということもあり、様々な企業からの引き合いに期待しているとのこと。
■カラーリンク・ジャパンブース
VRとARデバイスのレンズユニットを出展していた、カラーリンク・ジャパンのブース。一般的なVRというと、コントローラーを使用してシミュレーションなどを行ったりする用途で使われることが多いが、同社の製品はスマホに挿してドラマなどを拡大して観たり、ドローン用のFPV映像を映し出すなど、「映像を拡大する」という部分に力を入れているのが特徴だ。
自宅にテレビを置くのが邪魔に感じるときに、代わりに小さいデバイスで大きな映像を楽しみたいといったニーズに応えるものだ。具体的には、パネルに取り込んだ映像をレンズで拡大して見るという仕組みになっている。
今回はビデオグラス用VR向けのレンズ『TPF-70-DC』と、ドローンレース向けのレンズ『TPF-50-Dx』が出展されていたが、ビデオグラス向けのほうが視野角70度の16:9で映像が楽しめ、ドローンレース向けは視野角50度の4:3で歪みのない映像が楽しめる。特にドローンレース向けは、フレームレートが高く激しく移動するような映像に向いている。
同時に展示されていたAR向けのメガネ型シースルーモニター『STM-40-Dx』は、現実の世界を見ながらその場所に映像が映せるものだ。70センチメートル先に20インチのデスクトップモニターが見えるような設計になっており、薄くて高精細な映像が表示できるのが特徴である。
実際に体験してみたが、画素密度があるため映像も鮮明に見ることができた。現在発売されているのはビデオグラス向けのVRレンズのみだが、ドローン向けやメガネ型シースルーモニターは、今回の展示の反応を見てブラッシュアップしていく予定だそうだ。
■サン電子ブース
サン電子のブースで展示されていたのは、トータルソリューションの『AceReal』だ。ARスマートグラスの『AceReal One』と業務支援アプリケーションの『AceReal Apps』、ソフトウェア開発キット『AceReal SDK』の3点がセットになったものである。これらはハードだけやソフトだけを担当しているわけではなく、いずれも自社開発したものだ。
これまで3年近くサービスを提供している『AceReal』だが、現場で使用するときにハードだけでは使用することはできない。そうした意見もあり、すぐに使えるソリューションとして作られている。
今回のイベントでは、『AceReal』を利用したビデオ通話のデモを体験することができた。これは、ニーズが高まっている熟練者が現場の作業員などに向けて、遠隔支援できる用途などに使われているものだ。
他社との違いとしては、ARスマートグラスが現場で使えるように防塵防滴に対応しているほか、産業のヘルメットに装着することができるところである。これらを、インフラの整備や工場の間で使用してもらうことをターゲットにしている。
業務支援アプリは、3年間無償で使用することができる。そのため、ソリューションを購入することで、すぐに現場で使用することが可能だ。価格は55万5000円だが、その中には、ハードだけではなくソフトやSDKなどの料金も含まれている。
ちなみに業務支援アプリはクラウドサービスで提供しており、希望や要望に合わせて定期的に機能もアップデートされていくとのこと。今回展示されていたビデオ機能も、はじめは映像をやりとりする程度の機能だったが、実証実験をしていくなどでキャプチャして書き込めるようにしているほか、PDFを送るといった機能が追加されている。
現場が使いやすいと感じる機能が、今後も充実していきそうだ。
■バーインテックブース
ARゴーグル用のモジュールを展示していたのは、バーインテックのブースだ。薄型で透過した映像を、歪ませないように見せたいという目的で開発が進められている。今回出展されていたARモジュールでは、薄型は実現できており技術的な完成度を上げてきているというところだそうだ。
できるだけ部品点数を減らし、シンプルな構造を実現しており、それにより小型・軽量化、そしてコストを抑えることができるのが特徴である。今回のイベントが初出展で、これから一緒に組んでいけるパートナーを探していくという段階だ。
■デジタル総合印刷ブース
「世界中をVRでつないで働き方改革」というテーマでブース出展していたのが、デジタル総合印刷だ。『VR遠隔コミュニケーションツール』と呼ばれるこちらのシステムでは、VR空間上に3Dのデータを再現し、複数のユーザーが実物に近い製品をバーチャルに確認することができる。
3Dデータだけではなく音声使用したプレゼンテーションを行うこともでき、他社と差別化をはかりたいという要望にも応えることができそうだ。ちなみに最大同時接続は30人で、テーマにも掲げられているように教育や業務の改善などに活用することを目的にしている。
トレーニングアプリケーションで、没入型のトレーニングも行うことが可能だ。出張費なども不要で、学習スピードが高く、保持力が向上、意思決定も改善されるとのこと。具体的には未定な部分もあるが、今年中の販売を目指しているそうだ。
■YOUNG OPTICSブース
小型プロジェクターから出力された映像を、プリズムなどを通してガラスに映像を出す技術を展示していたのは、YOUNG OPTICSのブースだ。同社は光学がメインの会社だが、ガラスに特殊な材料を統合して光を屈折させる技術は、米国のDIGILENSが開発している。そして、その製造を行っているのが、YOUNG OPTICSである。他社の製品との違いは、表示できるサイズが大きくて明るいところだ。
5000nitsを実現しており、屋外のような明るい場所でも綺麗に見えるのが特徴である。通常ヘルメットのような屋外で使用するタイプのものは、サングラスのようなカバーグラスがないと見えにくいが、こちらのソリューションでは問題なく映像を見ることができる。
カメラを取り付けたメガネタイプでは、遠隔地と情報をやりとりしてサポートするという使い方もできる。中国の警察のヘルメットに似たようなものも採用されているが、そちらは単色のみしか表示できない。だが、同社のソリューションではフルカラーに対応している。現在は4枚のガラスを貼り合わせて作っているが、今後はプラスチックの成形も行っていくという。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。