2018
12.17

【World MR News】「VRを通したイノベーションの発掘」をテーマに学生を支援するワークショップVRSionUp! #0 「高校生が作ったVR作品を、世界へ!」が開催!

World MR News

GREE VR Studio Labは、12月12日に「VRを通したイノベーションの発掘」をテーマにしたVR研究系ワークショップ「VRSionUp!」を東京・六本木のグリー本社で開催した。

この「VRSionUp!(ヴァージョンアップ!)」は、「第26回 国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(以下IVRC2018)」で発表された優秀・受賞作品を中心にVRフェスティバル「Laval Virtual」への投稿を目標としたワークショップとして企画されたものだ。

記念すべき第1回目のテーマは、「高校生が作ったVR作品を、世界へ!」と題されている。そのきっかけとなったのは、今年で26回目の開催となった「IVRC2018」で、立教池袋高校 数理研究部の作品『Avoid the Risks of CO』(以下ARCO)が、ユース部門金賞と協賛企業賞のGREE賞とメルカリ賞をW受賞したことからであった。

ちなみに「VRSionUp!」の頭3文字は、本イベントを主催するグリーの白井暁彦氏がディレクターを務めている「GREE VR Studio Lab」と同じというところから名付けられたものだ。ここでやりたいことは、VRを通したイノベーションの発掘である。

本イベントを主催した、グリー株式会社 「GREE VR Studio Lab」ディレクターの白井暁彦氏。

世の中がVRに飽きてくると輪廻に入る

白井氏によると、現在のVRは「VR 3.0」なのだという。以前はVRを体験するには数千万円もする機材が必要であった。この時代を「VR 2.0」とすると、現在はそうした時代と比較しても、かなり手軽にVRの体験が出来るようになってきている。

「世の中がVRに飽きてくると、VRの輪廻に入ると考えています。VRで何でもできると言われても実際に出来ていなかったり、出来ていたとしてもあまり面白くなかったりするように、皆さんの想像を裏切らない程度にしかなっていません。そこでARやMRが流行り、気が付けばVRって何だっけ? という状態になります。これは完全に輪廻です」(白井氏)

イノベーションを起こしている学生たちには、こうしたものとは異なるものが見えており、VRを「4.0」や「5.0」に引き上げてくれる可能性がある。そうした学生たちを世界に伝えるために、このワークショップが開催されることになったのだ。

「Laval Virtual」では複数のセッションに分かれて構成されているが、その中のひとつである「ReVolution #research」では「VR 5.0」というテーマで作品が募集されている。先ほどVR輪廻の話があったが、VRが歴史の繰り返しになっており、それを革新したいという思いからこのテーマが選ばれている。

ちなみに「VR 4.0」は、今来ているフェイスブックやVTuber、ブロックチェーンなどを経て数年以内にたどり着くものだ。だが、どうせ研究するならば「VR 5.0」を狙って欲しいと白井氏はいう。

「VR 4.0」でバーチャルがフィジカルを超えるのが当たり前になり、その後、人間はどのように生きていけばいいのかということが重要となってくる。白井氏は、「VR 5.0」は人間に関する技術になると考えているそうだ。

■『Avoid the Risks of CO』立教池袋中学校・高等学校 数理研究部 

部員約60名、20人以上のチームで構成された立教池袋中学校・高等学校 数理研究部。常に革新的な技術やアイデアを追求しており、世界を変えると信じて日々活動を続けている。同部に所属する高校2年生と3年生のふたつの思いが重なって生まれたのが、『ARCO』だ。

そのひとつは、「火星での避難訓練のVR化」だ。こちらは高校3年生が提唱したものだ。もうひとつは「手持ちコントローラーの排除」である。手持ちコントローラーは現実世界では存在しないため、それが没入感の妨げになる。こちらは高校2年生が気付いたことだが、今年の「Laval Virtual」でも手持ちコントローラーがないものが主流になっていたという。

このふたつの思いをあわせて、コントローラーのない新しいVR作品が作られることとなった。そこで、題材として取り上げたのが「一酸化炭素中毒」だ。目で見ることができないものを可視化することで、新世代のVRの概念を誕生させたのである。

これらを実現するために、同チームではふたつのデバイスを開発している。ひとつは、「歩行感覚提示デバイス」である。八角形の台裏に16個の磁力センサーを設置。専用シューズの裏側に付けた磁石と反応させて、体験者の方向や走行を検知している。土台部分は滑りやすい畳を採用し、足を滑らせて歩行する感覚を再現している。

もうひとつは、「呼吸感知デバイス」だ。ヘッドマウントディスプレイに「空気品質検知センサー」を使用することで、体験者の発するCO2量から全体の呼吸量を測定。こちらで、目に見えない一酸化炭素中毒の表現に役立てている。

さらに、一酸化炭素中毒の症状をよりリアルに再現するために、「VR酔い」を利用している。通常はVR酔いをいかに低減させるかということに力を入れるものだが、それを逆手に取って利用することで、一酸化炭素中毒の症状のめまいや吐き気といった身体障害の症状を再現することに活用している。

 

現在同チームでは、「Laval Virtual」に出展するために準備を進めている。足のデバイスとコンテンツを活用したものを考えていたが、お題の「VR 5.0」では足のデバイスのほうが向いているという意見が出てきた。呼吸の方はゲームの側面を持っているため、「Laval Virtual」向けにデバイス自体の性能や新しさを表現した方がいいのではないかとメンバー間で話し合われているそうだ。

■『TeleSight』慶應技術大学大学院メディアデザイン研究科Embodied media

「IVRC2018」の「Laval Virtual Award in IVRC2018」を受賞した、慶應技術大学大学院メディアデザイン研究科Embodied mediaの『TeleSight』。こちらは「Laval Virtual」の「ReVolution #research」に展示する予定だが、そちらに向けて現在サブミッションを制作中であるという。

慶應技術大学大学院メディアデザイン研究科の古川泰地氏。同氏が所属するEmbodied mediaからは、2作品が「IVRC2018」で受賞している。

『TeleSight』は、VRのヘッドマウントディスプレイを被っている人と周りにいる人が協力してプレイ出来る作品だ。従来のVRは、ヘッドマウントディスプレイを被っている人しか体験することができない。そこで考えたのが、まわりの人と協力して遊べるようにしようというアイデアだった。

そこで、ロボットを通して身体的なインタラクションを、VRの中と外で行えるようにしているのが特徴である。

「Laval Virtual」に向けて、いくつかの改善も考えられている。「IVRC2018」の出展したものは、敵をビームで倒していき敵が目に向かって攻撃してきたときに、周りにいる人がロボットの目を隠すことで協力プレイが行えるようにしていた。

こうしたアイデア自体は素晴らしいものであったが、目を隠すという本来意地悪な行為はあまり直感的とは言えない。また、ゲームに寄りすぎて身体的インタラクションにフォーカスされていないという意見も出てきた。

そこで、ゲームではなくエクスペリエンスにするために、様々なロケーションを旅して特定のオブジェクトを探していくというものに変更している。その中で、水の中に入ったり日差しが強い砂漠といった環境の変化に合わせて、ロボットにゴーグルを被せてあげたりするなど、プレイヤー同士がコミュニケーションを取りながら困難を乗り越えていくというものにしている。

■『PINOSE』慶應技術大学大学院メディアデザイン研究科Embodied media

『TeleSight』と同様に、「IVRC2018」で「Laval Virtual Award in IVRC2018」を受賞した『PINOSE』。こちらは、嘘をつくと鼻が伸びる体験ができるというVR作品だ。

具体的には、「鼻が伸びる」「鼻が戻る」「鼻がポカポカする」「鼻が左右に揺さぶられる」「伸びた鼻の先でコーヒーの匂いがかげる」「伸びた鼻がバーチャル世界で何かにぶつかるとフィードバックがある」という体験をすることができる。これに加えて「Laval Virtual」に向けて、鼻の重さを感じたり戻ったときに軽くなったりするといった体験も含めていく予定だ。

慶應技術大学大学院メディアデザイン研究科Embodied mediaの学生でもあり、ソニーミュージックで新規事業開発室のクリエイティブディレクターも務めている代田兼一郎氏。

実際の鼻にテープを貼り付け、サーボモーターで糸を引っぱるという仕組みで「鼻が伸びる」感覚を実現している。嗅覚はデュフューザーを映像と連携し、暖かい感覚は、近赤外線で表現している。

同チームでは、この『PINOSE』を論文的な方向性にも持っていきたいと考えている。そのモチベーションはどこにあるのかというと、「単純に人の鼻はどこまで伸びるのか知りたい」ということであるという。またそこには、これまでになかった「ハプティック錯覚」を発見したいという目的も含まれている。

この「ハプティック錯覚」とは、自分の前にいる人の鼻をなでながら自分の鼻もなでると鼻が伸びたように感じたり、あるいは自分の鼻をつまみながら自分の上腕二頭筋に強い振動刺激を与えたりすることで、鼻が伸びたように感じる錯覚のことを指している。こうした「ハプティック錯覚」を新たに発見するということも、『PINOSE』では挑戦していきたいという。

今回のワークショップでは、『VRChat』との中継も行われ、VRチャット内からリリスAHリリーホワイト氏やsigns氏、アイシア=ソリッド氏によるプレゼンテーションやライトニングトークも行われた。『VRChat』内の音声がループして残念ながら会場から聞き取るのは困難ではあったが、そうした音質面での問題をクリアすればある程度は問題なくできそうな感じではあった。

次回「VRSionUp! #1 」は、2019年1月11日(金)に開催される予定だ。こちらのテーマは「高校生VRを国際会議へ/VRChatを科学の研究に/ボイスチェンジャ探求」となっている。興味がある人は、ぜひこちらのイベントに参加してほしい。

■VRSionUp! #1 高校生VRを国際会議へ/VRChatを科学の研究に/ボイスチェンジャ探求

https://gree.connpass.com/event/112901/

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。