2018
12.13

【World MR News】今年はVTuber関連の展示が目立ったCGとインタラクティブ技術の展示会「シーグラフアジア 2018」をレポート

World MR News

コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する展示会「シーグラフアジア 2018」が、12月4日から12月7日に東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された。本稿ではその中から、特に目に付いたものをピックアップしてご紹介していく。

■「スパイス」ブース

話題の「VTuber」を大々的にフィーチャーしていたスパイスのブースでは、光学式モーションキャプチャーシステムの『OptiTrack』と慣性センサー式フィンガートラッキングシステム『IGS-Cobra Glove』が出展されていた。

『OptiTrack』は、身体に取り付けられた点を取得し、動きをキャプチャーするシステムだ。顔は、カメラで撮影したものを画像ベースで表情を取得しリアルタイムにキャラクターに反映させている。デモでは『IGS-Cobra Glove』をモデルが装着していたが、こちらで指の動きを取得。これらをUnity上に送って合成し再生しているという仕組みだ。

IMU(Inertial Measurement Unit)センサーが搭載された、慣性センサー式フィンガートラッキングシステム『IGS-Cobra Glove』。指だけではなく、手の甲の動きまで再現することができるのが特徴だ。

スパイスではこうしたデバイスの日本代理店を務めているほか、20年以上前からCGの制作も行っている。そのため、制作も機材も販売も両方サポートできるのが強みである。昨年末より「VTuber」ブームの波が訪れてきたが、それに伴い案件も増えてきて隙間もない状況だという。

■「プラスプラス」ブース

プラスプラスのブースでは、2Dのバーチャルキャラクターを手軽に動かし、SNSやYouTubeで配信することが出来るツール『3tene(ミテネ)』が出展されていた。こちらは、カメラに映った人の動きを読み取り、その動きに合わせてキャラクターが動いてくれるというものだ。

キャラクターそのものを作る機能は搭載されていないが、VRMとLive2Dのフォーマットに対応しており、外部のツールで制作されたキャラクターのデータを読み込んで動かすことができる。

同社のツールは、本格的にVTuberなどで活動したい人と初心者の両方が使えるものとして作られている。最近はVTuber以外のニーズも高まっており、案内キャラクターやフィットネスのインストラクターといった利用用途も広がってきているという。

『3tene』は無料で利用ができ、法人向けでも年間5万円で利用ができる。同社では、『3tene』の3Dデータを要望に合わせて制作したり、あるいはOEMで使用したいという要望に応えたりすることでマネタイズしているとのこと。

■「Qualisys」ブース

輸入代理店を務めるアーカイブティップスが、3Dモーションキャプチャーシステムの『Qualisys』を出展。銀色の玉のようなマーカーをラケットなどに取り付け、3次元情報を会場内に取り付けたカメラで取得し、弾を撃ち返していくといったデモが体験できるようになっていた。

人の動きは、上部に取り付けられたカメラから取得し、最低2台からキャプチャーが可能とのこと。ちなみに今回の会場では、12台のカメラが設置されていた。アクション性の高い動きを取り込んでいたが、モーションキャプチャーのデータが出力されるのに10msecぐらいであるため、レイテンシーはほとんど気にならないとのこと。

これまでは大学の研究室などで利用されることが多かったが、ソフトを充実させてエンターテイメント分野での利用も考えているそうだ。

■「XSENS」ブース

慣性センサー式のモーションキャプチャー『MVN BIOMECH』を出展していた、XSENSのブース。最大の特徴は、外部カメラが不要でこのセンサーとノートPCさえあれば、屋外であろうが屋内であろうが関係なくどこでもモーションキャプチャーを行うことができる。磁場の影響を受けることもなく、クリーアップも特段不要だ。

今回同ブースでは、モデルの女性が専用のスーツを着てデモを行っていたが、こちらのスーツには、IMU(Inertial Measurement Unit)と呼ばれる慣性センサーが全身に17個取り付けられている(脱着式)。このIMUには、3軸ジャイロと3軸加速度、3軸地磁気が取り付けられている。それに加えて、高さの情報をうまく取り込むための気圧センサーも搭載されている。

この4つのセンサーからの情報は、腰に取り付けられているボディパックから、ワイヤレスで送信。同会場内ではWi-Fiが飛び交いすぎていることから有線モードになっていたが、通常はそうしたものは不要だ。

カメラで情報を捉えているわけではないため、ロストマーカーといった概念はないのも特徴のひとつだ。

■「フォーラムエイト」ブース

VRソフトの開発を行っているフォーラムエイト。同社のブースでは、3次元リアルタイム・バーチャルリアリティソフト『UC-win/Road』を使用したデモ展示が行われていた。和太鼓をVRで再現したものから、地震シミュレーターなど多様なコンテンツを展示。そのほかにも、Unityで作られた鉄道シミュレーター『鉄道運転手VR』や教習所向けの『安全運転シミュレーター』なども実際に体験できるようになっていた。

ちなみに『安全運転シミュレーター』は教習所のほか、大学や自動車メーカーなどをターゲットにしている。大学では運転手の行動をデータ化し、研究するために使われる。また、最近は自動運転なども話題になっているが、自動車メーカーがそうしたテストを実車で行うのはコストも掛かる。そうした場面でも活用できるという。

ヘッドマウントディスプレイを装着して使用する『VRモーションシート』。低価格の小型3軸モーションシートで、『UC-win/Road』のVRシミュレーションと連動して振動する。

『UC-win/Road』で作られたソフトのデモ。

子会社のゲーム会社が制作した『鉄道運転手VR』。

こうしたシミュレーターを教習所で使用してもらうには資格を取得する必要があるが、現在は最終段階まできているそうだ。

■「デジタルデザインスタジオ」ブース

デジタルデザインスタジオのブースでは、車の内装をVRで再現し、自分好みの色に変えたりメーターを変更したりしてシミュレーション行えるデモが展示されていた。社内だけではなく、車の外から見える映像も360度カメラで撮影したものが使われており、臨場感溢れる体験ができるところが特徴である。

また、ターンテーブルの上に車を載せたような方で外装の色の確認も行えるそうだ。主に自動車会社向けに展開しているとのこと。

■「チームラボ」ブース

現在お台場の方で、「チームラボボーダレス」というデジタルアートミュージアムを展開しているチームラボ。こちらは空間を全部プロジェクションマッピングで埋め尽くし、アート作品で埋め尽くしたような展示になっている。

通常のアート作品ではひとつひとつ部屋に分かれている場合が多いが、こちらは部屋には分かれているものの作品同士が移動したり混ぜ合ったりするなど、新しい作品ができるのが特徴だ。

また、ほとんどの作品がインタラクティブになっており、観覧者によって表示されるアートも変化するという。たとえば花が咲いているところで、花に触ってみると散ったり、あるいは、人がいるところに花が咲いていたりするといったインタラクションが起こる。このアート作品は60作もあるそうで、かなり楽しめる内容となっている。

ちなみに今回同社のブースで展示されていたのは、2008年に発表された作品だ。以前からモニター単体で写すアート作品を作っており、本来は屏風のように12枚並べて展示されるもので、大和絵をモチーフに3DCGで作られている。動画を止めるとフラットな絵になり、動き出すと空間が感じられるアート作品となっている。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。