2018
11.26

【World MR News】最新XR技術が集結したイベント「Inter BEE 2018×DCEXPO」レポート③

World MR News

11月14日から11月16日までの3日間、千葉の幕張メッセで先端デジタルコンテンツ技術をテーマにした国際イベント「デジタルコンテンツEXPO」と、音と映像と通信のプロフェッショナルイベント「Inter BEE 2018」が同時開催された。本稿では両イベントから、4つのブースと第26回国際学生対抗バーチャルリアリティコンテストの中から特に目に付いたものをピックアップしてご紹介していく。

第26回国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト

学生が企画・制作したインタラクティブ作品について、新規性や技術的チャレンジ体験のインパクトを競うコンテスト「第26回国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト」が、「デジタルコンテンツEXPO」に出展されていた。こちらでは、その中から、ユニークなアイデアの作品をいくつか取り上げてみた。

■「TeleSight – HMDによるVR体験者の視点を介した傍観者とのインタラクション-」 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 Embodied Media Project(チーム名: マネキンヘッズ)

VRの問題のひとつに、ヘッドマウントディスプレイを付けている人しか楽しめないという課題がある。そこで、どうしたらまわりの人が参加できるゲームが作れるのかという課題を解決するために考え出されたのが、こちらの『TeleSight』だ。

こちらはVRヘッドマウントディスプレイの動きを再現するロボット部分と、見ている映像をプロジェクターで投影する部分から構成されている。外部の人がゲームに参加するときは、ロボットの目を隠して敵の攻撃を防ぐというインタラクションをすることで、VRの中と外と協力して遊べるようになっている。

■「Be Bait! ~求めよ,さらば食べられん~」 東北大学大学院 情報科学研究科システム情報科学専攻 北村研究室(チーム名: Fishers)

こちらは、魚の餌となって魚に食いつかれてから釣り上げられるまでの一連の体験がVRでできる、ユニークな作品だ。VRヘッドマウントディスプレイを装着して、ハンモック上に横たわることで、水の中にいるかのような浮遊感を再現。体験中、上からゴムのようなものが体験者の上に落下し、魚に食べられてしまうという感覚も味わえる。

■「ARCO-Avoid the Risks of CO-」 立教池袋高校 数理研究部(チーム名: カツゾー避難する )

見えない恐怖を体験するという、ちょっと変わったVR作品。無色透明で目に見えない「一酸化炭素中毒」に着目し、それをVR空間で再現している。

体験者は、呼吸を感知するマスクと全方向に移動が可能な「方向感知デバイス」を利用し、コントローラーを持たないことでさらなる没入感が味わえるようにしている。

ちなみに「方向感知デバイス」は、滑りやすさを考慮して畳が採用されているそうだ。同じくスリッパ部分にも多数のセンサーが取り付けられており、多くの情報が得られるようになっている。

■「Suspense Creeping Bomb」 長野県松本工業高等学校 電子工業科 電子工学部(チーム名: アルカディア Ⅶ)

『Suspense Creeping Bomb』は、見た目はなかなか個性的だが、エンターテイメント性の高いVRコンテンツだ。体験者の目的は、テーマパークに仕掛けられた時限爆弾を解除すること。ダクト内に隠されたヒントをたどっていきながら匍匐前進で移動し、爆弾を解除する。

時間制限があるためスリルもあり、デバイスから風やミスト、傾斜などの演出も盛り込まれているため、普通のゲームよりも没入感が高くなっているのが特徴である。

Nextremer「AIゴーちゃん。produced by tv asahi」

テレビ朝日マスコットキャラクター「ゴーちゃん。」に、最先端の人工知能テクノロジーを搭載した「AIゴーちゃん」を展示していたのは、Nextremerのブースだ。この「AIゴーちゃん」に「こんにちわ」と話しかけると、映像や音声を認識し「ハロハロ」と返事をし、AIが自動生成したオリジナルの曲に合わせて歌を歌ってくれるというもの。

これらはリアルタイムで作詞と作曲が行われており、完全なオリジナル曲として歌ってくれるというからすごい。ちなみにコンテンツのプロデュースはテレビ朝日が担当し、Nextremerの対話エンジンが採用されているとのこと。

ソフトバンク/東芝インフラシステムズ/MoriX「IoTと暗号通貨を活用したMR購入体験」

ソフトバンクと東芝インフラシステムズ、MoriXの3社が協同で出展していたブースでは、MR空間内にある暗号通貨を使用し、リアル空間の自動販売機を操作しながら実際のドリンクを購入するという体験ができるようになっていた。

体験者は『HoloLens』を掛けて体験するのだが、こちらの技術にはリアル空間とMR空間を結ぶ本人確認として、分散秘密鍵が登録された指紋認証付きICカードでスマホアプリのQRコードを生成。それをMR側で読み取ることで実現している。また、一連の取引の記録や照明は、ブロックチェーンで管理されるようになっている。

もうひとつ同ブースに展示されていたのが、GPSゲームの『Ingress』の世界観をMRで共有できる『SoftBank MR Intel Simulator』だ。『Ingress』のAPIと連携することでポータルの位置や詳細情報などを取得。それを、MRで視覚的に確認できるというもの。ポータルの情報はリアルタイムで更新されるほか、実際には反映されないがポータル同士を繋ぐ「Link Simulation」も可能となっている。

テクノネット「次世代スポーツ情報サービス研究」

あくまでも参考出展という扱いだったが、テクノネットのブースではワントゥーテンと共同で放送コンテンツの情報を受け渡しするシステムと、MRでコンテンツを作る「次世代スポーツ情報サービス研究」が出展されていた。

こちらは実際にスタジアムなどでスポーツ観戦中に、テクノネットが持つ試合や選手情報、3Dアバターなど、スポーツ観戦に必要な情報をARデバイス越しに見られるようにしているほか、SNSと連携して「いいね」を送ることができるという。

ARデバイスは、Leap Motionの『Project North Star』を2160×1200に高解像度化。オンデマンド生産を目的として3Dプリンター用に設計を最適化し、メガネを付けた状態でも体験出来るように加工を施すなど、さらなる没入感が得られるように改良が行われている。そのためか、通常のMRデバイスよりも視野角が広く、非常に扱いやすくなっていた。

アスク「Insta360」

アスクのブースでは、5.7kの高画質・高フレームレートで1800万画素の360度アクションカメラ『Insta360 ONE X』が出展されていた。その特徴は、角度を選んでいない状態でもすべての映像を記録することができるというところだ。

アクションカメラを利用するシーンでは激しい動きを伴うことが多いが、プロ級の手ぶれ補正によりどんな動きでも画面がぶれないようになっている。また、自撮り棒を使用した撮影でも、自撮り棒が映像に映り込まない動画を撮影することができる。

Wi-Fiにも対応しており、スマホと連動してワイヤレスで撮影することができる。価格は5万2300円(税込)で販売中だ。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。