2018
10.23

【World MR News】最新のIT技術が幕張に集結した国際展示会「CEATEC JAPAN 2018」をレポート

World MR News

10月16日から19日まで、千葉県・幕張メッセでIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN 2018」が開催される。本稿ではその中から、とくに目に付いたものをピックアップして紹介していく。

「富士通」ブース

富士通ブースでは、オリジナルのロボット『ロボピン』が出展されていた。オリンピックの「オリパラ音頭」を複数のロボットが踊るようになっており、HTC Viveのコントローラーで一緒に踊ることができるようになっていた。

ちなみに、これまでこうしたロボットにアクションを付けるときはプログラミングで制御していたが、どうしても動きがぎこちなくなってしまいがちであった。しかし、この『ロボピン』では、専用の振り付けツールにより人の動きを自動的にデータ化。滑らかな動きが再現できるようになったそうだ。

このようにイベントの盛り上げに利用できるほか、企業の受付ロボットとしても活用することが可能である。

「東海光学」ブース

東海光学のブースでは、脳波を測定する装置「TOKAI ニューロテイラーメイド」が出展。同社は元々メガネレンズのメーカーであるが、例えば遠近両用メガネなどをかけたときになかなか表現しにくい感覚を、可視化することができるのが特徴だ。

ヘッドセット内部に専用の高性能アンプを搭載。ウェアラブル型の脳波計測装置としては珍しく、誘発脳波を含む様々な脳活動を高サンプリングレートで記録することができる。8つの電極とプラスの2電極で、個人差や装着誤差などの計測の影響も軽減。視覚以外の様々な感覚に関する脳波も計測できるようになっている。

「NTTグループ」ブース

NTTグループのブースでは、360°パノラマ8KのVRライブ配信・視聴システムが出展されていた。会場では、事前に収録した映像とリアルタイムでその場を見渡せるもののどちらかが選べるようになっていた。

映像は魚眼レンズを装着した5台のカメラを使用。FPGAで構成したリアルタイムスティッチング装置で、5枚の映像を貼り合わせて360°8K映像をリアルタイムに作成。それをリアルタイムH.264エンコーダーで圧縮し、リアルタイムパノラマ超エンジンエンコーダで複数方向タイルを生成。これらを通したものを、ヘッドマウントディスプレイで見られるようになっている。

同社では、「機能分散型ARディスプレイ構成技術」という個性的なデバイスも出展されていた。こちらはシースルー型のデバイスで、例えば気になるランドマークなどにかざすことで、それに関連した付加情報を透明のディスプレイ上に表示することができるというものだ。

ユニークなのは、このデバイスはシースルーというだけではなく、両面から見ることができるところである。例えば、翻訳エンジンなどを活用し、相手側には母国語を、自分の側からは日本語が見られるようにすることも可能である。

「KDDI」ブース

KDDIブースでは、AIとARを組み合わせたバーチャルキャラクターがブースを案内してくれた。受付でパッドを渡され指定の場所に行くと、そこで何が行われているか説明してくれるというもの。

日本語のほか、英語、中国語、韓国語の4ヵ国語に対応しており、最初にメニューで選ぶことができる。

■望遠鏡型VR『VR View Scope』

いわゆる観光地でよく見かける望遠鏡を、VR化したもの。2Dの映像や360°映像などをメニューの中から選択して見ることができる。

■屋外ARシューティングアトラクション

AR技術を活用した屋外ウォークスルー型のアトラクションも展示。こちらでは、ハウステンボスに導入された新アトラクション『ジュラシックアイランド』が体験できるようになっていた。

通信技術とARを組み合わせることで、最大75名以上の同時体験プレイを実現。参加した仲間同士で助け合いながら、ゲームを進めていくといった内容になっている。

■みんなで楽しめるVR

半球体スクリーンのSphere5.2を使用し、モータースポーツを体験できるVRコンテンツ『みんなで楽しめるVR』。その名の通り、大型のスクリーンを参加者以外の人も見ながらコンテンツが楽しめるようになっているのが特徴だ。

■XRグラスによる体験型スタジアム

スマートグラスを掛けて、CGのピッチャーが投げた球を打ち返していく仮想バッティング体験ができるXRコンテンツ。サーバ側で合成・配信された映像を視聴する形になっており、プレイヤーの位置のあわせて高品質の映像を瞬時に生成する技術や、高速に配信可能なネットワークを組み合わせることで実現している。

「ボストンクラブ」ブース

あらかじめ溝を付けておくことによって、様々なメーカーの片眼ヘッドマウントディスプレイを取り付けることができるメガネフレーム『neoplug』を出展していたボストンクラブのブース。遠隔支援に使用したいということで、開発用としても利用されているという。

初期モデルは3万円ほどのお値段となっているが、現在はハイカーブのモデルを制作中で価格を抑えたいと考えているそうだ。

「ポケット・クエリーズ」ブース

ポケット・クエリーズのブースでは、時空間情報を量子レベルで遠隔共有するMRソリューションの『QuantuMR』を出展。ブース内は、実際の作業場を模したような内装になっており、マイクロソフトの『HoloLens』を掛けて『QuantuMR』の体験ができるようになっていた。

ここ最近いくつかのイベントにも出展されていたが、今回は内容も若干バージョンアップされており、画像認識やレポートが出るほか、格子状のところに近づくとアラートが表示されるようになっていた。

「新エネルギー・産業技術総合開発機構」ブース

3次元の図面を投影した「3Dプラントモデル」を展示していた、新エネルギー・産業技術総合開発機構のブース。運転管理や保全管理などのデータベースと連携しており、安全管理に役立てることができるというもの。

従来の2次元の図面では、いくつか集めて計画を立てていく必要があった。そのうちのひとつでは、図面の寸法などを見るが、それを3次元化することで、それらを手元に全て集めて確認できるため、作業効率も高くなる。

また、シミュレータとも連携しており、機器や配管の不足速度を腐食シミュレータで計算し、3Dプラントモデル上に表示することができるようになっている。これまでは点でしか管理できていなかったものだが、これにより、面で管理できるようになったのが特徴だ。

「楽天技術研究所」ブース

楽天技術研究所ブースでは、継続的な働き方を実現する、新しい接客の形を提案するために「遠隔スタイリング支援システム」と呼ばれるシステムが展示されていた。カスタマーとプロのスタイリストが離れた場所にいた場合でも、遠隔で接客ができるのが特徴である。

このシステムで実現しているのは、3つの制約だ。そのひとつは、地理的な制約である。離れていた場所にいたり、スタイリストが子育て中で職場に行けなかったりするときなどの改善を行うことができる。

ふたつ目は、物理的な制約だ。実店舗がなくすべてデジタル化されている。そのため、接客に関しては大きな店舗は不要となる。最後が心理的な制約だ。ブースではウサギのキャラクターが接客していたが、キャラクターが接客することで意見もいいやすくするというのが目的である。

実際にバーチャルで試着したものは、QRコードを読み取ることで一覧が表示される。そのリストをクリックすることで、楽天市場で購入するという仕組みも導入される予定だ。

「東日本高速道路」ブース

MRデバイスの「HoloLens」を使い、橋梁に内部構造が見えるように重ね合わせる「MR橋梁体験」が展示されていた。今回展示されていたのは、実際の橋梁の20分の1サイズだったが、それでも十分にそのすごさを体験出来る感じだった。ちなみに全体で見せるようにしたのは、日本初だという。

橋梁の中だけではなく、下の方を見ると自分の下まで見ることができる。現在は教育ツールとして利用されているが、レイヤーを切り替えることができ、耐震補強などに役立たせることも可能となっている。

高速道路は老朽化が進んでおり、ひび割れなども起きている。ひび割れひとつをとっても、構造の違いなどによっては致命的なものも含まれている。その判断をするための技術者も不足してきており、こちらのシステムを活用することで補うことができるのだ。

「三菱UFJフィナンシャル・グループ」ブース

三菱UFJフィナンシャル・グループのブースでは、「Fintech×VR/AR」としてVRでトレーディングを行うコンセプトモデルが展示されていた。

実際にトレーディングをやっている人は、複数のモニターを並べていたりするが、VRゴーグルを付けることで様々な画面を手元で見られるようにしている。

普通のモニターでは物理的な配置で見られないような画面も、VRなら簡単に並べることができる。それにより、新たな気づきがあるのではないかと考えているそうだ。

今回はVR以外にも、ARもコンセプトで展示していた。こちらは株取引ではないが、ロゴなどをカメラで映し出すことでそれに紐付いた企業の株情報や動画、CMなどを表示できるというものだ。

「フォーラムエイト」ブース

3Dの仮想空間を作って、その中で様々なシミュレーションができるソフトウェアを開発しているフォーラムエイト。同社のブースでは、そうした技術を利用した展示が複数行われていた。

主に自動車業界と建設業界がメインで、自動車業界では自動運転の機能開発を行っている。展示されていたシミュレータでは、手前に車が割り込んできたときに自動で速度を落としたり、前を走っている車と間隔が開いた場合は加速したりするというものが体験できるようになっていた。

そのほか、スマホでかざすことで飛び出す絵本のように絵が表示できる「ARレター」や、小型3軸モーションを使った、ヘッドマウントディスプレイ連動のVRモーションシートの体験なども実施されていた。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。